空と陸に愛されて

真理亜

第1話 転校して来た双子

「あっ! 痛っ!」


 廊下を歩いていたら足を引っ掛けられた...


「あ~ら、ごめんなさ~い♪ 足が長過ぎて引っ掛かっちゃったわぁ~♪ まぁでも~、あなたみたいな貧乏貴族は地べたを這ってるのがお似合いよねぇ~♪ キャハハハッ♪」


「ねぇ聞いたぁ~? あの人ったらま~た婚約断られたみたいよぉ~♪ これで何人目よぉ~? キャハハハッ♪」


「あんな貧乏貴族となんか誰も結婚したがらないってぇ~♪ お金タカられるの目に見えてんじゃん♪ キャハハハッ♪」


「いっそ娼館にでも行けばいいのよぉ~♪ 顔はまぁまぁ見れる方なんだから、変態オヤジに人気出るんじゃな~い? キャハハハッ♪」


 私は逃げるようにその場から離れて教室に駆け込んだ...



◇◇◇



「アイラさん、また虐められたんすか? 高位貴族だからっていい気になってホント嫌なヤツらっすね。あ、今日の放課後の当番よろしくっす!」


「えっ!? またなの!?」


「言ったじゃないっすか! アタシんちは貧乏な平民なんすよ! 子爵家のお嬢様とは違うんす! 放課後はバイトしないとお小遣い無いんすよ! てな訳でお願いするっすね!」


「......」


「ちょっとアイラ様! 今日の日直はアイラ様ですよね!? 黒板キレイにして下さいよ! 先生に怒られますよ!? あと花瓶の水もちゃんと取り替えといて下さいね!」


「えっ!? 今日の日直は私じゃ...」


「なんですか!? 子爵家のお嬢様はそんな雑用なんかしたくないって言いたいんですか!? 私らみたいな男爵家や騎士爵家に押し付けると!?」


「い、いえ、そうじゃなくてその...」


「だったらさっさとやって下さいよ!」


「......」


 これが私の日常である...



◇◇◇



 私の名はアイラ・バートリー。実家は子爵家なので一応は貴族令嬢である。そう一応は...


 さっき廊下で絡まれた、伯爵以上の所謂高位貴族の連中が言っていたように、ウチは貴族とは名ばかりの貧乏子爵家で、猫の額ほどの小さな領地しかない上に両親は上昇志向ゼロ。


 積極的に領地運営をするでも商売に精を出すでもなく、基本的には現状維持で満足している。だからとにかくお金が無い。長女の私はこうやって学校に通えているが、まだ幼い下の弟妹達の分は恐らく出せないだろう。


 だから私だってさっき隣の席の平民の子が言っていたように、放課後はバイトしている。せめて自分の学費だけでも稼ぎたいのと、両親がアテにならないので、出来れば弟妹達の分も稼いでおきたい。暇じゃないのだ。


 そして私のクラス内での立ち位置はさっき見た通り、下の爵位や平民の子からも貧乏だからというだけで軽く見られている。ヘタな男爵家の方がよっぽど金持ちだから仕方ない。そう諦めていた。このまま高位貴族からは蔑まれ、下位貴族からはバカにされる日々がずっと続くのだと...


「今日からこのクラスに転校して来ました。リク・ベリンガムと」


「クウ・ベリンガムです」


「「 よろしくお願いします! 」」


 この双子の兄妹が転校してくるまでは...

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