サイドストーリー:聖勇女達の記憶

第三章/第四話:キュリアの願い

「カズトは無事、ルッテ達と旅立ったそうだ」

「そう。ありがとう、マーガレス」


 横になったロミナに、マーガレスが掛けた言葉を聞いて、私、ほっとした。

 カズト、すぐ逃げそうだったし。


 最初に見たカズト、あんまり、頼りにならなそうだった。

 ミコラやフィリーネの気持ち、よく分かった。


 でも。

 ラフィーと一緒に頑張った、カズトの呪術破壊カースブレイク

 あれ、凄かった。


 私、あんな力は出せない。

 ううん。無茶をすれば、いけるかも。

 でも、そんな勇気なんてない。

 死ぬのは、怖いから。


 だから、カズトが命懸けで術を唱えてるの見て、もっと怖くなった。

 死んだお母様が、重なったから。


 だから私、止めた。

 カズトが死ぬの、嫌だったから。

 別に、知り合いでもないのに。

 何で、不安になったんだろ。


 あの時のカズト、凄く悔しそうで。私も少し、悔しくなった。


 でも、翌朝気づいたの。

 ロミナの闇の文様が、少しだけ小さくなったのに。


 カズト、凄いって思った。

 カズトに、知らせなきゃって思った。

 ……何でだろう。そう思ったの。


 皆は別室で話してた。けど、ロミナが少しだけ、目を覚ましたから、その話、したの。

 そうしたら、伝言を頼まれて、ロミナはまた、眠っちゃった。

 だから、召霊晶にラーフを宿して、呪術抵抗カースレジストを維持して、外に出た。


 シルフ達に聞いたの。カズトの事。

 そうしたら、知ってる子がいたから、宿に入って待ってたのに。


 カズト、逃げたの。

 ちょっと、ムッとした。


 しかも、いきなり馴れ馴れしく話すの。

 でも、それは嫌じゃなかった。

 何でだろう。


 私が闇の文様の話をしたら、急にカズト、笑った。

 急に笑うの、キモい。

 だけど、カズトの嬉しそうな顔見て、私も嬉しくなった。


 何処かで見た笑顔。そう思ったの、何でだろう。

 だけど、その笑顔は、好き。


 そんなカズトを見てたら、急に不安になった。

 だから、釘を刺したの。

 カズトがまた、無茶しそうな気がしたから。


 ロミナを心配してくれたから、私もすぐに帰ったけど。

 もう少し、話してみたかったし。

 もう少し、笑顔を見たかったかも。

 また、話せるといいな。


 でも、何でだろう。

 カズトを見ると、お母様を思い出すの。


 優しかった、お母様。

 世界樹を助けて、死んじゃったけど。

 私も、凄い悲しんで。でも、あんな風になりたいって思った。

 でも何でなのか、思い出せないの。

 もしかして、カズトが、そう言ってくれた?


 ……ううん。ありえない。

 だって。カズトに会ったの、ルッテが連れてきた時だもん。

 でも、何故かそんな気持ちになるの。

 何でだろう。 


 王宮に戻ったら、ロミナが起きてて、皆が集まってた。

 何処に行ってたんだって、聞かれたから、話したの。


 闇の文様の事。

 カズトにそれを、伝えに行った事。


 その話をしたらね。皆が喜んだの。

 ロミナが少しだけ、長生きできるって。

 うん。私も嬉しい。


 そうしたら、ロミナが皆に言ったの。

 カズトに、力を貸して欲しいって。


 きっと、あの日の夜の事がなかったら、ミコラとフィリーネ、嫌な顔をしたかも。

 だけど、その時は皆、ちゃんと頷いてくれた。

 私も、カズトが死ぬのは嫌。だから、頷いた。

 一緒には、行けなかったけど。きっと、精霊の心、役に立つ。

 だから、ルッテに託したの。カズトに渡してって。


 カズト。精霊の心、ちゃんと返しに来て。

 その時は、また笑ってね。


 ロミナが元気になったら、もう少し話したいな。

 何でか分からないけど。

 一緒に行けない分、一緒にいたいから。


 だから。

 カズト。皆と一緒に、無事に戻って来て。

 ロミナと。マーガレスと。待ってるから。

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