メカフレームバトラーズ
projectPOTETO
第1話
「よし……よし、よしっ!!」
学校の教室の席、僕、
端末の画面には『ご注文の商品がご自宅に届きました』というメッセージが映し出されており、その下にはその現物であろう商品の画像が添付されていた。
画像には巨大なロボットと銃を構えた人物が立っており、その上には『メカフレーム・バトラーズ』と書かれていた。
ジャンルはゲーム。要するにその画像はゲームのパッケージイラストだ。
「これで僕もついに……」
顔をニヤつかせながらじっと端末を覗いていると、後ろから頭を叩かれる。
「いってっ!!」
「なに気持ち悪い顔をしてんだよ大親友」
そこにいたのは僕の幼馴染で親友である
「ついに届くんだよ!これ!」
頭を叩かれたことは気にせず、僕は端末の画面をキイロに見せつけた。
キイロはその画面を見ると「おー」という声を上げる。
「やっとか、これで一緒に遊べるな」
「うん!うん!」
僕は幼い子供のようにはしゃいで喜ぶ。
この『メカフレーム・バトラーズ』は体感型ロボットゲーム。
最近流行りのフルダイブバーチャルゲームだ。
いくつものスーパーコンピュータをサーバーとして、一つの惑星を舞台としたオープンワールド。
数多くの武器や町、お店など。現在発売されているフルダイブバーチャルゲームの中では最大規模だそうだ。
そしてなんといってもこのゲームではロボットが登場する。
人型、獣型、飛行機など。数多くのロボットが存在し、搭乗して操縦できるのだ。
ロボットは自分好みにカスタマイズできて、オンリーワンの機体や、チームを組んで量産機風に仕上げることもできる。
ロボットが大好きな僕はこのゲームをやりたくて待ち遠しかった。
「お前発売日に買えなくて悔しがってたもんな」
「うん、その時はテスト近くてお母さんに止められてたからね……」
しかしそれは乗り越えた。
お母さんに文句を言わせないためにテストで高得点を取り、学年の順位で一桁というこれまでの人生最大の結果を叩きつけたのだ。
やればできる子だったのだ僕は。
しかし、近くの電気屋さんではソフトが売り切れだったので通販で頼んだのだ。
「帰ったらやるんだろ?」
「もちろん!キイロは?」
キイロは僕より先にこのゲームを始めている。
発売日が一か月前だから、僕より一か月このゲームの先輩ということになる。
「やるやる。
あっちでいろいろ教えてやんよ」
「お願いしまーす!」
「あっ、でもお前今日アレじゃん?」
キイロは何かを思い出したようにいう。
「アレ?」
「ほらお前、委員会」
「……あぁ!そうだ忘れてた!」
今、僕の高校生活の中でもっとも忘れてはいけないことの一つ。
それが委員会活動。
これに行かないとあの人に会うことができないのだ。
■ ■ ■
放課後。
図書室では静かな時間が流れている。
ネットや端末が進化している現代では本を読みに来る人は少数であまりここに一桁以上の人が入っているのを見ない。
僕は受付に座りながら図書室に置いてある本を読む。
しかし僕は本よりも隣にいる人に意識を向けていた。
僕の隣には赤い眼鏡をかけた女性が座っている。
紅花ユウ先輩。
僕が絶賛片思いをしている女性だ。
僕の一つ上、つまり二年生の先輩で、本を読む姿はとても綺麗だ。
「んっ?どうかしたのかい相沢君」
「えっ、いや特に何も」
いきなり話しかけられたことに僕はびっくりして少し挙動不審になってしまう。
「でも今日はどことなくそわそわしている感じがするよ」
「そう、ですか?」
きっと先輩がいるから……というわけではないと思う。
ここ最近では僕と先輩は一緒に当番になっているのできっと違う。
もちろん一緒にいてドキドキはするけれど。
「あっ、もしかしたらほしかったゲームソフトが今日届くからかもしれませんね」
「ゲームソフト?」
「はい。
『メカフレームバトラーズ』っていうんですけれど」
僕が携帯端末で『メカフレームバトラーズ』の公式ホームページを開いて先輩に見せた。
ページを開くとともにテレビに流れているコマーシャルが映し出される。
そこでは大きな人型ロボットが激しい銃撃戦や接近戦でバチバチと火花を散らしていた。
これが実際にできるとなるとかなり興奮する。
ロボットが好きな僕にとって夢のようなゲームだ。
「……」
「先輩?」
「えっ?あぁ、うん。
げ、ゲームもいいけれど学生は勉強が本業だからほどほどにするんだよ。
これで成績が落ちた。なんてことになったら目も当てられないからね」
「はい。
そうします」
「でもそれじゃあ早く帰らなくてもいいの?
見た感じかなり楽しみにしてそうだけど」
「えっ?」
「顔がすごく緩んでいる」
先輩は微笑みながら言う。
僕は跳ねるようにして右手で自分の口を押えた。
うわ、これはとても恥ずかしい。それと先輩の笑う姿がとてもいい!
その両方で僕は顔が真っ赤に染まっていく。
「あはは!リンゴみたい!」
「笑わないでくださいよー!」
僕はそう言うけれど、先輩の笑う姿がとても好きなのでもっと笑ってほしいと思う。
「別に帰ればできるわけですし、早く帰らなくても大丈夫ですよ」
「そうなの」
「そうなんです」
それに僕は少しでも貴女と一緒言いたいんです。
言葉には出せない恥ずかしいセリフだけれど、これが本音だ。
僕の言葉に先輩は「そっか」と言って頷いた。
そのあとはいつものように静かな時間が過ぎていった。
■ ■ ■
「ただいまー」
委員会の仕事を終えて帰宅した僕は玄関で靴を脱いですたこらさっさと中に入る。
リビングのドアを開けると一つの大きめの封筒と一枚の紙が置いてあった。
僕は紙のほうを先に見る。
「えっと、『お母さんはこれから会議だから帰りが遅くなるね。ごはんは冷蔵庫の中にあるもので食べて』か」
母はこの近くにある商店街の組合で働いている。
近年、シャッター街になりつつある商店街はあれこれイベントを開いて呼び込みをしているので、店こそは増えはしないもののイベントのある日にはいろいろな地方から人が来ることもある。
そんな母は毎日のように忙しそうだ。
この紙を見るに、一度帰って夕飯の準備をしていってくれたということなのだろう。
母には頭が上がらない。
「端末連絡くれればいいのに」
紙をごみ箱に捨てて、次は封筒のほうを見る。
素早く封筒を開けて中身を取り出す。
そこには待ちに待ったものが入っていた。
「おぉ、ついに手に入れた」
感嘆の声を上げながら僕はパッケージを掲げる。
そして携帯端末を取り出してキイロにメッセージを送った。
『ただいま帰宅。
例の物を手に入れた』
『了解。
では何時ごろに入るよ』
『今から着替えてご飯食ってシャワー浴びてだから』
そこで数秒考えて。
『21時くらいかな』
『わかった。
そのころには俺も入ってるよ。
名前はyellow bee』
『ごめん読めない』
『おい高校生。
イエロー・ビーな。
お前の名前はどうするん?』
あー……。
全く考えてなかった。
特にこういう名前にしたいとかないし。
正直自分のネーミングセンスがあるわけではないが、ここは安直に自分の名前をもじってつけてみるかな。
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