14-6 CONFESSION:ギンナ
えーと。
…………。
ギッ。
あ。
ギンナです。あっ。『銀の魔女』やってます。ギンナ・フォルトゥナです。
……駄目だ。緊張しちゃう。あれ、おかしいな。いつもは普通にモノローグできるのに。
改めて。
ギンナという名前は、皆が付けてくれました。……敬語、別に要らないな。いつもは無いよね。
こほん。
真名はね。『銀条杏菜』。これを略してくれたんだけど。なんだか海外っぽくない略し方だよね。『
この『真名を知られるとヤバい』説なんだけど、あんまり実感ないよね。結構色んな人にバレてる気がするんだよね私。危機管理ユルユルというか。でも今の所は何も起きてない。
それについてユインとも話したんだけど、私達は『4人』居ることによって、『ひとりをどうにかしても他の3人に報復される』という状況を作れているんだよね。だから、下手な真似されないって。
あとは私の『人柄』? だって。ちょっとよく分からないけど、何にも起きないならまあ、良いかなって。
使える魔法、ね。えっと。
①『テレキネシスの魔法』。
②『テレパシーの魔法』。
以上。
少ないなあ。他の3人はもう4つもできるのにね。私、魔女に成るの一番遅かったから、こうなんだろうなあ。テレパシーの魔法についてはユインが居なきゃできなかったし、実質ひとつだよね。まあ、そればっかり練習してたし、魔力も多いからこれに関しては一番練度高いと思ってるけどさ。
でもね。魔法が使えるってだけで、嬉しいよね。私も昔憧れたもん。変身ヒロイン。魔法少女。……もうそんな年齢じゃなくなってきてるけど。
実際の魔法は、呪文とか無いし、コンパクトも使わない。派手な演出も無いし、無駄に光ったりもしない。淡々と、プログラムが実行されるみたいな感じ。地味なんだなあ。
まあ一応、使い方次第でどんな魔法も化けるんだよね。ただのテレキネシスでも私が全力を出せば、あのバハムートを倒せるくらいの威力は出せるって分かったし。怖いからもうしないけど。
✡✡✡
……フランとは、もう本当に。姉妹で、ニコイチだった。ずっと、いつも一緒に居た。私の半分というか。半身って感じ。何をするにも一緒だった。そんなイメージ。なんだろうね。別に本当にいつも一緒って訳じゃなかったのに。
いつも、隣に居てくれた気がする。表情豊かで、コロコロと変わって。空を飛ぶのが大好きで。普段ツンツンしてるのも可愛くて。ほっぺたなんかお餅みたいに柔らかくて。
大好き。
でも。
それは『依存』で。なんというか。ただ『仲良し』の関係だから、さ。
これからは、ちゃんと、『ビジネスパートナー』とか。『家族』とか。ちゃんとした関係で居たい。今までが駄目って訳じゃないけど。この『解散』の話が出てからは。
自立しなきゃって思ったんだ。そうしたらもっと。次、会う時はもっと。
仲良くなれる気がする。
自覚してるよ。4人の関係性で、私達が『中心』だって。だからもっと、ちゃんとしなきゃね。
✡✡✡
ユインとはね。ニコイチ。あはは。なんだろう。一番信頼してるかも。フランが妹なら、ユインは双子って感じかな。何でも相談できる。何でも言える。全部聞いてくれる。一緒に考えてくれる。答えを教えてくれる。あの子がネガティブになってたら、私が引っ張ってあげる。
なんだろう。同じアジア人だからかな。何でも話しやすい。表情の機微も、頷きの仕草も。安心する。あのジト目がキュートだよね。たまにはっちゃけたりもするんだよ。ローテンションのまま。可愛い。
大好き。
私も頼りないけど、あの子も脆くて。お互い補完してたような気がする。なんというか、苦楽を共にしたよね。ベネチアに行った時も。オークションも。
ずっと、これからも一緒に居るんだろうなって思う。誰がどうなっても、ユインとだけは。『解散』後も、魔女園で一緒だしね。
頼りにしてるもん。
✡✡✡
シルクはね。お姉さん。いつも見守ってくれてる感じ。優しい。大好き。
いつも要所要所で、私にアドバイスをくれる。なんというか、視野が広いんだよね。色んなことを見ながら考えているというか。
と思いきや、結構大雑把な所もあって。『とにかく焼けば解決でしょう?』みたいな。あはは。
ウチの料理係だよね。いつも美味しいご飯を作ってくれる。最初は全部焼くか炒めるかだったけど、段々レパートリーも増えてきて。陰で努力してたのは分かる。
なんでもそつなくこなすし、どんな依頼も断らないし、頼れるお姉ちゃん。
けど、実はその心内に闇を抱えていて。フランを吸う? ことで発散してたんだよね。ずっと、未練があって。あんなに激しく罵倒しながら、相手を焼き尽くすほどに。
魔女は、何かひとつ乗り越える度に成長する。今回の私みたいに。だから。
大人のお姉さんのシルクは、私達よりずっと先に行ってる気がするんだ。
✡✡✡
彼女達とは本当に仲良くて、色んなことを話せて、気を遣わなくて良い関係だけど。
ひとつだけ、踏み込めないことがある。
それは、私だけ『幸せ』だったこと。それ自体は悪くないんだろうけど。たまに、表情に影が差す時があって。なんて声をかけたら良いか分からない時がある。きっと、なんて言っても駄目なんだと感じる。
私は、レイプされたことは無いし、人の死に立ち合ったことも無いから。想像はできるし悲しいだろうと予想はできるけど。真にその気持ちを理解してあげられない。本当に心からそばに寄り添うことができない。フランもユインも、そんな時がふとある。
大抵は向こうが私に気付いて、無理に笑って冗談めかしてくれる。彼女達も、私に気遣ってるんだ。私がそのことで悩んでることも多分伝わってる。
それでも、今から彼女達が受けたような苦しみを味わうことはできないし、もしそうしようとしたら止められる。だから私は、本当の意味で彼女達の心の傷を癒やしてあげられることはできないのかもしれない。それが悲しい。
だからせめて。向こうから来てくれた時は。精一杯、応えてあげようと思う。いつまでも抱き締めるし、何度でも好きって言う。辛いなら一緒に泣いてあげる。どんなお願いをされても良いよって、大丈夫だよって、言ってあげたい。
いつも私を癒やしてくれる、大好きな3人だから。
✡✡✡
フォルトゥナという名前を名乗ろうと思ったのは、プラータと同じことをしたい、って訳じゃなくて。『残したい』と思ったんだよね。この名前を。
ヴィヴィさんも、ジョナサンの『イリバーシブル』を名乗り続けてたように。
それと、単純に、気に入ったんだ。
人生は幸運だった。3人に会えた幸運があった。今、幸せだもん。これが運命なら、大歓迎。
正に、私という存在を象徴してる……とまでは言えないけど。そんな傲慢じゃないけどさ。
エトワールさんが、『
『ギンナ・
皆に幸運を、とか。幸運の魔女、とかっていうのは流石に恥ずかしすぎるけど。
ちょっとだけ、そんな雰囲気で。私の魔法が、誰かの為になれば良いなって思うよ。
プラータはどうしてこんな偽名にしたんだろう。多分、適当だ。名前なんてそもそも気にしてないと思う。ルーナって呼ばれても、一度も訂正しなかったしね。
でも、3人にも名乗って欲しいなんてことは思ってないよ。私が単に名乗りたいだけ。プラータのことは……好きじゃないけど、嫌いじゃないし。私が代表で『銀の魔女』を承継したことだしさ。6代目として。胸張っていけるように。
皆で、幸せになれたら良いな。
✡✡✡
あと、クロウだね。今、実は彼の魔力も私が預かってて、彼の魔法も多分使えたりする。
本当に、私のことだけを考えてくれてた。それは、本当に嬉しくて。私も、何かしてあげたいなって、本気で思って。
私の為に、消えるつもりだったから。そんなの嫌だって言って。
全部、これからなんだよね。彼との関係も。これから。私の気持ちも。これから。
子供の姿は可愛いし、大人の姿は格好良いんだよ。ずるいよね。
いっぱいお話したい。私も話して、彼にも話してもらって。関係を築きたい。私と彼だけの関係を。
✡✡✡
解散については、タイミングもあったと思うけど、正直申し訳ない気持ちがあるよ。私の我儘で、クロウを救ったからだし。
けど、皆はそんなこと気にもしていない様子で。同時に、切り出した。一度魔女の家から離れて、それぞれ活動して、また戻って来ようって。
思えば少しずつ、その準備をしてたように思う。最初は皆、魔法ひとつだったけど、ひとりで依頼をこなせるように、成長して。
そしたらもう、4人で集まる必要もなくなったんだよね。仕事をする上では。4人がそれぞれ仕事した方が稼ぎは倍にも3倍にもなるから。
でも、私は。
そんなに稼がなくても良いから、一緒に居たいって思う。今は、借金があるから稼がなきゃいけないけど。その後はさ。
ゆっくり過ごしたい。朝、寝坊しちゃって。朝ご飯食べて、フランとなんか遊んで。ユインとお話して。シルクの作ったお昼で皆一緒に。森の中に出てピクニックとかも良いよね。ラナも勿論一緒に。街でお買い物しても良い。ヴィヴィさんの所にも寄って行こう。フランなんか、商品目移りしちゃって。ユインが、やれやれって溜め息。シルクはにこにこ笑ってて。
たまにはベネチアへ行って、ミッシェルやルーシーに挨拶して。カンナちゃんと会って。凄いねって話をして。
いつか。きっと。
それを考えてると、ポカポカしてくるんだ。やる気が湧いてくる。だから、頑張ろうって。
私は、応援することしかできないけど。何かあれば箒で飛んでいけるし。いつでもテレパシー飛ばしてくれて良いし。
中学卒業の時を思い出すなあ。皆それぞれ別の高校へ行くんだけど、メールはするよ、みたいな。
✡✡✡
そんな所かな。皆みたいに立派なこと言えてない気がするけど。なんか、
もう魔女見習いじゃ、なくなっちゃったけど。これからも続くよ。見守ってくれると嬉しいな。
私達の物語。
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