集合 スピカ 上富良野

八月十二日になった。


 集合時間は十三時と遅めなのに、早く起きちゃった。出来るだけ減らした荷物が入ったリュックを何度か確認して、ゆっくり朝食を取った。ちなみにシュラフは、登山サークルの子に借りた。一週間前からチェックしていた天気予報を朝のニュースで確認。うん。いい感じ。ビバ! あっまのっがわ〜★


 集合時間丁度に、札幌駅に着いた。今日も当然ながら暑かった。どうやら私が最後だったらしく、遅刻したわけじゃないけど心なしか小走りになった。千尋が長い髪を、頭のてっぺんでお団子にして、手を振っている。右手にコーヒーのプラスチックカップを持っていた。あ、飲みたいなあ。


 みんなに簡単な挨拶をした。全員が似たようなラフな格好だった。

 今回は、車組と電車組で別れて上富良野に行くんだよね。


 沢崎教授と園山先生、私達のリーダーであるケンキチさんと、工学部の学生一人は、車組。望遠鏡を積んでいく必要があったし、現地での打合わせもあるそうで。教授って結構大変ね。


 そーいうわけで、スーパーホワイトアロー15号に乗って上富良野に向かうんだけど、先生と話したり出来ないから、私は到着までの三時間ずっと寝ていた。

 むしろ、先生がいないからっていうよりも、夜通し起きたまま天体観測をするんだから、車内で起きてる時間を睡眠に費やした。


 いつも賑やかな千尋やニッシーもそれは同じで、席に座るやいなや帽子を被るなり、カーテンを引くなりして、全員寝た。同じ車両に乗った人は、どんな集団と思ったんだろう。私は短い夢を見た。


 上富良野に着くアナウンスが聞こえた所で目を覚ました。隣の千尋は僅かに口を開けて、まだ寝ている。体を左右に捻りながら周りの様子を確認すると、通路を挟んだ席に居た広瀬くんと目が合った。彼は小さく微笑んで、視線を持っていた本に戻した。


 ホームを降りると、千尋が

「うわー! 北海道だああ! なんもなあああい!!」と、言いながら駆けて行った。道民のくせに、そう思うのも無理ないわ。私のアタマの中でも、『北の国から』のテーマがエンドレス。背の高い建物がぜんぜんないのよ。空も高いし。


 私たち電車組は、宿泊場所のスピカに直行した。多分、誰もここでは寝ないだろうな、って思った。国道沿いで、かなり近かった。空気もいいせいか、頭はすっかりクリアになっていた。


 スピカに到着すると、窓から見ていたのかケンキチさんがやってきた。あとについて、教授二人も出てきたから、思わず手を振った。もちろん、ケンキチさんでもなく、沢崎教授でもない。園山先生に決まってるじゃないの。

「移動おつかれさん」

「先生も」

「さあ、みんな、荷物を置いて。さっそくバーベキューの準備をするよ」

 園山先生がそう言って私に満面の笑みを見せた。あ、至福。


 車組は、やっぱり多少疲れてたみたいだけど、電車組は、みんな元気だった。ニッシーなんて、バーベキュー会場走り回ってたし。いいねえ、若いって。同い年ですが何か?


 私が軍手を嵌めながら、野菜類がぎっしり入った段ボールを抱えていると、広瀬くんが代わってくれた。心なしか、そっちのほうが折れそうなイメージがあったけど、それは特に広瀬くんが貧弱ってわけじゃない。いちお。


 芝生にシートを敷いていたら、虫よけスプレーも貸してくれた。



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