まだ、幼馴染み!
ペペロンチーノ
プロローグ
有栖川優希の場合 ①
「嘘...でしょ.....?」
少し冷たい風が吹く高校2年生の11月。昼休みの中庭の隅の方で小さな人溜りができていた。優希はいつものクラスの仲のいいメンバーと購買に行き、教室に戻ろうとしていた時、その現場に遭遇した。
そこでは、ある女子生徒が、ある男子生徒に告白をしていた。
よくある光景。学生生活では誰かが誰かに告白するなど、優希にとってはあまり驚くことではなかった。
だがそれは、その相手によって一変することもある。
例えば、昔からずっと好きだった男子だった場合ー。
「あー、あれ告られてんの櫻木じゃない?」
「へぇー、まぁ顔は普通より上だしありえないことじゃないよねぇ。」
「・・・・」
友人たちが告白されている男子、櫻木紘について話していたが、優希には全く聞こえておらず、ただ風の音だけが、彼女の耳に届いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「にしても、あの告ってた子のほうの子ってだれ?」
「あーあの子は、C組の子。去年同じクラスだったから知ってる。」
「ふーん。そうなんだ。それじゃ、櫻木と同じクラスだった子ってこと?」
「そうそう。一時期席隣同士でまぁまぁいい雰囲気だったしねぇ。ありゃ時間の問題だろって思ってたけど。」
「はっはーん。そゆこと。まぁまた新たなカップルが出来上がったことかぁ。いいよねぇー、好きな人ができて。」
「ウチらには全く縁のない話ってコトよ。ところで優希。さっきからパンも食べずにずっとボーッとしてるけど、どしたん?」
「....あ。いや別に。なんでもない。」
「うん?あやしーな。なんかあったん?」
「まさか、あんた、櫻木のこと狙ってたとか?」
「......」
「ありゃ?こりゃガチめかな?」
「うっそ....?なんで?あんたら接点とかあったけ?」
「いつ?どこで、なんで惚れたのよっ!?」
二人が同時に質問を畳み掛けてくると、声量もともに、増大していき、周囲のクラスメイトにも若干聞こえる程度にまで上がり、優希は二人に向かってあたふたしながら人差し指を口元に置き、もう片方の手で二人を払った。
「バッ....バカ!声がデカいって!」
「えーなになに!?勿体ぶらず教えてよー!」
「はやくはやくー!」
「もう!やめてってば!」
すると、教室のドアが開く音が聞こえ、そちらに三人の意識が移った。扉から入ってきたのは、三人の話題の中心人物である櫻木だった。
その櫻木を冷やかしながら取り囲む男子生徒と一緒に櫻木は少々困った表情で、小さくなりながら自分の席へと戻っている。
中心人物が入ってきた瞬間には幾度となく質問ばかりしていた二人も口を真一文字にして黙りこくった。
席に着いてからも周りからの野次は止まらず、引きつった笑顔で対応し続けていた。
それを窓側の席に座っていた優希はバレないように横目で聞き耳を立てていた。
すると、偶然だろうか。一瞬だけ、櫻木と目があってしまった。その瞬間、驚いてすぐに視線を二人の方に向けた。
「あんたねぇ。思わず笑っちゃうよ。」
「ふふっ。ってもう笑っちゃってんだけどね。」
「ーー顔。真っ赤っかじゃん。」
全身から汗が吹き出し、今にも茹で蛸になってしまいそうなほど、体は熱くなってしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昼休みが終わり、午後の授業が始まってからも優希の頭の中では、ずっと彼のことだけを考えながら過ごしていた。優希の心は放課後までずっと、形を保てずにゆらゆらと揺らめいて地に足をつけることができなかった。
放課後になり、優希は櫻木の足取りを観察していた。
これからどこに向かうのか。これから誰と会うのか。
考えれば考えるほどマイナスなイメージばかりしてしまい余計に不安になってしまっていた。
「優希さぁ、これでいいわけ?」
二人のうちの一人、佐城美紀は優希に問いかける。
「美紀の言う通りじゃん。優希がなんで、櫻木のこと好きなんかはよくわかんないけど、このまま盗られてはい終わりでいいの?」
「そりゃぁ、いや..だけどさ..」
「じゃあさ、やること決まってんじゃん。」
「やることって、まさか..?」
二人はお互いに目を合わせ、こちらに向き直り、綺麗に口を揃えて言った。
「「告白でしょ!!」」
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