第36話 Double Vision 2


「なにが、二重かっこ・ラスボス・二重かっこ閉じだよ! お前がラスボスだったら世界征服なんて楽勝だな!!」


「ムーーーーー!!」

女神・グリースが膨れっ面をする。


「あーさいでっか! さいでっか!! その愛と美とラスボスの駄女神さまがdesperadならずものごときに何の用ですか!」


「駄女神とはなによ~~! ブーブー!」


と言うと両手を拳にしながら下へ向け、抗議すると膨れっ面をしたと思ったら


「お願いがあるの~~~」


とグリースはさっきまでの態度とは異なり体をクネクネさせながら甘えた声を出した。


「『欠片』はあるんだろうな~!!」


「そんなモノ無いわよ!」

とピシャッと言い放つ。


「じゃ~ダメだ!!」


「えーーーケチ!ケチーーー!!」


「ケチじゃねーーよ! 俺はオババの元へ早く帰りたいんだから!」


「私とあなたの仲じゃない~~ また今度も『欠片』無しで依頼を受けてよ~~」


「どんな仲だよ!!」


「それは私の初めてを無理やり奪った仲でしょ!! 一緒に旅に出たとき嫌がる私を無理やり押し倒して強引に!! 

 女神を押し倒すなんてどれほど悪人なのよ!!」


「お前! 何言っているんだ!! お前から股を開いてきたんじゃねーかよ!!」


「ハッ! 股なんて・・・・」


と一瞬、グリースは息を呑み両手で拳を作り口元の当てた。

そして指を広げ顔全体を押さえ


「ひ、酷い! 女神に対して、そんな事を言うの!! 酷いわ!酷いわ!! エ~~ン!エ~~~ン」


「止めろ!! 今さらそんな嘘泣きしても騙されねーーよ!!」


「ダメか! 今回は依頼を受けておいたほうが顔も広がるからお得よ」

と男が言うとグリースは何事も無かったようにケロッとした顔で言った。


「う、うん!! 痴話げんかは私のいないときにお願いできる?」


男と女神が言い合いをしていたとき後方で咳払いが聞こえた。

後ろを振り向くと


円形のテーブルに座った白いドレスを着た青く長い髪が印象的な女が座っていた。


「ゲゲッ! カメリア!! なぜ、お前がいる!!」


「『ゲゲッ!』とは失礼ね~ そんなに私がお嫌いかしら?」


「いや~まぁ~何と言うか・・・・・なぁ~」


と男はグリースに助けを求めた。


女神・カメリア。

今、『閉ざされた世界』を作る神の中で最も勢力を誇っている若い女神。

その数は50を越え、他の神々とも友好関係を築いている。

グリースに負けないほど美しく若い世代の女神だった。

と言っても最古の女神グリースも同じくらい若く見える。

何ならグリースの方が若く見える。

神たちの容姿は自分で変えようと思わない限り変わること無く老いることも無い。

が、神と言えども寿命はいつかは尽きる。


男はカメリアとは良い関係ではなかった。

それはグリースも同じでRAGNAROCKラグナロックと言われる神々同士の戦いで敵味方に分かれ戦った。

グリースの同盟軍とカメリアの連合軍と壮絶な戦いになり多くの犠牲を出した。

序盤こそグリース側同盟軍が優勢だったが自力に勝るカメリアたち連合軍がジリジリと押し返すと、一人、二人と同盟から離脱していった。

最後はグリース一人となってしまったとき男を呼び出し、貞操の件で男を脅迫して対抗した。


戦いを終わらせるには、連合軍の首魁たるカメリアを殺すのが一番早いのだがカメリアが居を構えている場所に行った事がなかった。

男は好きな場所へ転移出来るが一度も行ったことのない所への転移は不可能だった。

行きたい場所を正確にイメージしないと転移は出来なかった。

仕方なくカメリアが統治している世界へ奇襲を掛け滅ぼした。

その数5個。魔素を奪い人質とした世界5個。

なぜ5個滅ぼしたかと言うとグリースも5個滅ぼされていた。

敵討ちではないが同数を滅ぼしても文句は言われないだろうし、滅ぼさないと示威行動にはならないからだ。


RAGNAROCKラグナロックが終結したとき男はグリースに原因を尋ねたが『個人的な理由』と言って話すことは無かった。


「安心して! RAGNAROCKラグナロックのことを攻めるつもりは無いわ。

 今ではグリースとも良い関係を築いているわ」


男がグリースを見ると後で両手を組み体を少し曲げニコッと笑った。


「あなたと敵対すると碌な事にならないと言うのがよく分かったから。

 グリースと和解出来たから、あなたとも友好を築いていおきたいわね!

 ちょっと困ったことがあってグリースに相談したら『私からの頼みなら何でも聞いてくれる』って言っていたからお願いしようかと思って来たのよ」


グリースに近寄り耳元で


「お前! 俺を売ったな!! 見返りはカメリアとの友好関係かよ!

 今一番勢力のあるカメリアに恩を売っておいた方がいいもんな!!」


「何のことかな~ グリースたん、わかんな~~~い」


と再度、可愛く拳を作り口元に付けアザトらしいぶりっ子をした。


ガシッ!!っと男はグリースにアイアンクローを噛ました。


「痛い! 痛い! シロだってカメリアと顔見知りになったおいて方がいいでしょ!

 今一番ノリにノッテいる女神なんだから」


「チッ!」


と一度、舌打ちをすると手を離し


「今回もただ働きかよ!! お前と絡むと必ず赤字になるな!!」


「お客さん! お客さん! そうおっしゃらないでくださいよ!」


グリースは悪徳商人のように揉み手をしながら近寄ってきた


「そう、おっしゃるかと思いまして『コピー』のスキルを作っっておきましたよ!!

 大概のものはほぼ同じように製作することが可能ですよ~~ どうですか?お客さん!!」


「マジか!! やっぱスゲーなグリース!! さすが魔法構築の大家! 

 伊達に年はくってないな!!」


「バカーー それ誉めてないよね! 誉めていないよね!!」


というとグリースは男の脛を蹴った。


今ではポンコツ扱いされているグリースであったが、魔素を利用し魔法を発明した最初の女神であった。

落ちぶれ扱いされているが『閉ざされた世界』の発展に最も寄与した女神であり、他の神々からも尊敬を集めている。

敵対したカメリアさえも尊敬していた。

魔法が発展した事により世界に誕生した生命たちは自分の身を守り、生活が発展し文明、さらには文化を享受できるようになった。



男がどこの世界へ行っても意思の相通が出来るのもグリースが作ったスキル『言語理解』のおかげであった。

そして『開かれた世界』出身であったため、体に魔素を溜めることが出来きず魔法が一切使えなかった。

それを解消したのもグリースだった。

グリースが自分の持つ魔素の70%を与え魔素を溜めることができる体に修正したのだった。

それだけを費やしても男は魔法の才能が無く強力な魔法を撃つことはできず最低限の生活魔法がやっとだった。

が、男のマジックバッグは魔法さえも収納することができ、透き通った紺色の大剣は僅かな魔法でも億千倍に強化することができたため不自由することはなかった。


男の体を修正した後、グリースが新しく『世界』を作ることは無かった。


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