第28話 Take the devil 13


目の前に現れた門の大きさたるは優に100mを超えた。


「おいおい、デュランダル! お前、何を召喚するつもりだよ!!って!

 お前、神の一族だな! こんなでかいゲート初めて見たぞ!

 これほどの力を持っている者は神族以外考えられないからな!

 普通、神は自分で作った世界だと力が弱体化されはずだが?

 弱体化してないと言うことは、他の世界の神だな?

 それとも、自分で世界を作ることが出来ない徳の低い無能な『野良神』か?」


神は自分が作った世界には干渉できないように制限が掛けられていた。

無数に無限に存在する『世界』は自らの魔力を注いで生成される。

自ら作った世界では、自分の魔力に溢れているため神自身の力が拡散してしまう。

それ故、何かしらの危機が訪れたとき、神自ら作った世界に降臨しても力は発揮できないのであった。


自分の世界に何かしらの危機が迫ったとき、どうすれば良いのか?

それは異なる世界から異世界人を召喚し事にあたらせる。

他の神の力を借りるしかなかった。


「失礼ですね。

 神に向かって『野良神』なんて」


「自分で『世界』を作ることが出来ないダメ神だろ!

 野良犬と一緒じゃないか! 根無し草だからこの世界を乗っ取るつもりでいるのか?

 と言うことは、この『世界』を管理している神はいないと言うことか?」


「そうですね。この『世界』を管理していた神は亡くなったか、飽きて放棄したのでしょうね。

 最初は私が貰おうと思っていたのですがね」 


とデュランダルが言い終わると巨大なゲートに手を向け呪文を唱えた。


「召喚!! ゴッドジーラス!!」


!!!!! 男はその名前に驚いた。


ゴッドジーラス。男が知る限り最悪生物の一匹だった。

体長100mを超える二足歩行を尻尾が生えた巨大生物で凶暴な性格をし破壊の限りを尽くす。

同種どうしでも平気で共食いをする死の象徴のような生物だった。

肌の色が濁った赤であったり、濃い緑や黒であったり個体差があった。

肌の色で特徴が異なり赤い固体は炎を吐き、青い固体は氷のブレスを吐く。

特に問題なのはマダラ色の固体。

こいつはウイルス性の毒を吐く。その毒を浴びるとほとんどの生物は死滅する。

ウイルス性の猛毒は辺り一面を焼き尽くさない限り増殖していく。

神が敵対する神の『世界』を滅ぼすために作った生物兵器と言う噂であった。


「バカヤロー! あんな化け物召喚してどうする気だ!! 

 この世界が滅びるぞ!!」


「何か面倒になったので、この『世界』を潰す事にしました」


「この世界を支配するんじゃないのかよ!!」


「面倒なのでもう止めました!」


「その飽きっぽい性格、俺と同じで気が合いそうだな!!」


ゴッドジーラスが体を屈ませゲートを潜り顔を出す。


「グゴーーーーーー!!」


ライザはその巨大な姿を見た瞬間、腰が抜け崩れるように座り込んだ。


「ライザ!! 全力でここから飛んで逃げろ!! 早く! 早く行け!!」


「シロ! あんなでかいヤツどうするの!」


「殺す! 早く逃げろ! ウイルスで汚染される」


「ウイルス?」


「何でもいいから俺の言うことを聞け!! 早くここから逃げろ!!」


「分かった! 気をつけてね!」


とライザは言うと飛空魔法で飛び去った。


「ライザを逃がしましたか・・・・・まぁ、もう良いでしょう。

 この世界を滅ぼすのですから今さらライザも魔王の座も必要ありませんからね。

 それであの最強生物であるゴッドジーラスを殺すとおっしゃっていましたがどうされるのですか?」


「こうするんだよ! デスクリムゾン!!」


左手を前に突き出し男が唯一使える攻撃魔法を唱えた。


「グゴー ゴッ! ゴッ! ゴッ!」


バッターーーン!



とゴッドジーラスが再度、雄たけびを上げようとした瞬間、声を詰まらせ倒れた。

砂埃が舞う。それと同時に体に付着しているウイルスも撒き散らされた。


「私のゴッドジーラスが! なぜだ!!」


「即死魔法だ! デュランダル! 安心しろお前も葬ってやるよ! デスクリムゾン!!」


「うぐ!」


と言葉を発した後、倒れたデュランダルが動くことは無かった。




^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^



ライザは飛空魔法で飛び去りながら後を振り向いた。

そのとき、デュランダルが召喚したゴッドジーラスが倒れるのを目撃した。


「えっ? どうなっているの?・・・・・

 竜騎士を倒した即死魔法? デスクリムゾン?

 あんな巨大な生物さえ一瞬で倒すことが出来るの? 凄い!!」


ヘルザイムが「パパと同じくらい強い」って言っていたけど・・・・・確かに強い。

ライザはゴッドジーラスが倒れたことを確認するとUターンし男の下へ戻っていった。


「シローーー!!」


男は彼方にいるライザの呼ぶ声に反応し、振り向いた。

左袖の下から大型の拡声器を取り出しライザに向かって話す。


「こっちへ来るな!! まだ終わっていない! この辺り一帯を焼却する! 戻れ!!

 早く戻れ!! 俺が良いって言うまで退避していろ!!」


その声に驚きスピードを緩め再度Uターンした。




男は即死したデュランダルの右足を掴み引きずりゴッドジーラスの隣まで持って行き投げつけた。


「このバカ! いったい何がしたかったんだよ! 出来の悪い神のやることはどうも理解出来ない!」


左袖の中から透き通った大剣を取り出し、一度天にかざした。


「タナ! 俺に力を貸せ!! Blue frame!」


透き通った大剣は青い炎を纏った。


透き通った大剣はタナの剣と言われ、男のペットだった犬がとある世界に召喚され神となり、その世界の魔神を倒すときに用いられた剣であった。

正当な持ち主以外は重すぎて持ち上げることが出来ない神話の剣。

男も過去に要塞を攻略するときに、その特性を利用したことがあった。

要塞に向け投げつけるだけで並みの大砲の数百倍の破壊力を発揮した。

そして男が呼べば必ず手元に戻ってくる忠剣であった。


生活魔法レベルしか使えない男でも剣に魔力を流せば億千倍に強化してくれる優れものであった。

普通ならファイヤーの魔法を流せば赤くなるのだが強化の度合いが常識を超えているために青く変化するほどの熱量を発した。


男はその青く燃える大剣をゴッドジーラスに突き刺す。


ジュバーーーン!!


と言う音とともに肉が焼ける臭いがする。

残念ながらマダラ色のゴッドジーラスが焼ける臭いは食欲をそそる物ではなかった。

数万度を超える青い炎がゴッドジーラスとデュランダルを包む。

デュランダルは一瞬にして灰になり跡形も無く消えた。


「あちいな~ 本当に面倒なことをしてくれたよな! 今回は大赤字だ!

 楽な依頼ばかり続いたからバチが当たったのかもしれないな!」


程なくしてゴッドジーラスの体も燃え尽き灰になった。

「この体もダメだな。汚染されていそうだ」


と言うと男は自らの体に大剣を突き刺し自らも青い炎となり灰になった。

その場には透き通った紺色の大剣だけが残された。



^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^


「シローーーーー!!」


退避していいたライザは千里眼のスキルを使い動向を見守っていた。


「あの人は何してるの! 自ら剣を刺して!!」


口元を両手で覆うと涙が溢れてきた。


「シロ・・・何で・・・・シロ!」


「何泣いてるんだよ! ライザ!!」


ライザの後から声が聞こえ振り向くとシロが立っていた。


「シローーー!!」


と言って飛びついた。


「バカ! バカ! 心配したんだから!!」


「俺は死なないから大丈夫だよ」


「もう、大丈夫なの?」


「いや、まだ後始末が終わっていない。今度はライザを綺麗にしないとな!

 剣よ!!」


男が言うと透き通った大剣が男の右手に現れた。


「え!! なに! それさっきの剣でしょ!!」


ライザは目を丸くして驚いた。


「スゲーーだろ!! タナの剣って言って忠剣なんだよ。呼べば俺の下に現れるのさ!!」


「なにそれ! そんな剣が存在するんだ!」


「剣だけではない、このローブだってロゼのローブと言って飛空魔法が使えない者でも空を飛べたり強力な魔法障壁を張ったりできるのさ。それにこういうことも可能だ」


というとローブを脱ぎライザの頭から被せた。


「え!!なにするの!?」


「大人しくしていろ! Holly!!」


赤い縁取りがされている白いローブが光の粒子に覆われる。

そして男がローブを取った。


「これで大丈夫だ。 あのまま放っておくとライザもウイルスにやられる可能性があったんだよ。

 あの魔獣は色々と厄介なやつでね」


「ウイルス?」


ライザはウイルスと言うもの自体知らなかった。


「簡単に言うと目に見えないほど小さい虫で、生物に寄生して内部から腐食させるのさ!

 まぁ~魔族は大丈夫なのかもしれないが用心に越したことは無い!

 ライザを無事に魔属領へ届けるのがヘルザイムとの約束だからな」


「ありがとう。シロ」


「おっと、まだ終わっていないんだよ」


とライザから取ったローブを着ると


「ちょっとここで待っていろ。最後の仕上げをしてくる」


と男は飛びあがりゴッドジーラスが灰になった場所へ戻った。

左手をまた突き出し呪文をマジックバッグから呪文を放った。


「Implosion!!」


辺りを覆いつくす黒い靄が飛び出る。そして、一気に収縮を初め、ものの数秒で小さな点になったかと思うと消え去った。

男はライザの元へ戻った。


「これで大丈夫だ。ウイルスが広がることは無いだろう」


「今のも魔法なの?」


「そうだ。Implosionと言って知り合いの女神が作った超強力な爆縮魔法だ。Explosionは外へ向け爆発するのに対しImplosionは内側へと収縮するんだよ。

 狙った箇所に的を絞って消滅させることが出来る便利な魔法なのさ」


「凄い!! 私にも使える?」


「さぁ~どうだろうな? 俺も使えるわけじゃないから原理が何一つ分からない」


「今、使っていたじゃない!!」


「俺のマジックバッグに仕舞い込んでいるだけだ」


「そんなこと出来るの? マジックバッグに魔法なんて仕舞えるの?」


「ナナのバッグと言って、このマジックバッグは可能なんだ」


ローブの左袖を捲って見せた。

そこには左手首に隠れるくらいの小さなバッグがベルトで装着されていた。


「弱い俺がここまでやってこれたのは死ぬことのない体質よりこの装備類の性能のおかげさ」


「いいな~~私も欲しい!! 頂戴よ!」


「アホか! やるわけ無いだろ!! それにこの装備は俺以外の者には使えないようになっている。

 まぁ~ロゼのローブは俺が頼めば使えなくは無いが、色々制限が掛かる。

 それにライザには、このローブをあげただろ! このローブも充分なチートアイテムだぞ!!」

ライザが着ている剣が付いているローブに肩を置いて言った。


「そうよね・・・・ありがとう」


「今回は赤字も赤字。大赤字だぜ!!」


男は天を仰ぐと嘆いた。


「とっととペンザを救い出して魔属領へ向かうぞ! いいな!!」


男の声にライザは満面の笑顔で頷いた。


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