けものみち・野藤狂

理柚

けものみち

わたしのすんでいるところには、どうぶつがたくさんいます。それはねこやいぬのようなものではなく、栗鼠や狸のような、にんげんからえさをもらわないどうぶつです。このあいだは白鼻心をみたわよ、とむかいにすむ森田さんがいっていました。


かれ草をかさこそとふむおとがしたら、それはかれらです。竹がゆれてうめきごえがきこえたら、それもかれらです。だれかにみられているようなかんじがしたら、それもかれらです。どうぶつ、はわたしにあうと、かならずわたしをみます。わたしのことを「なんやこいつ」というめでみます。


このみちをまっすぐいったつきあたり、くさりかけた木のわきに、けものみちがあって、そこをどんどんのぼっていくと、そのうちみちがひらけて海がみえるのよ、と森田さんがいっていました。森田さんのかみのけは、ところどころむらさきいろです。森田さんは、わたしによくおかしをくれます。


わたしのすんでいるところは、ときどき、ひとがいなくなります。森田さんは、そのひとが、どんなりゆうでどこへいったのかをくわしくせつめいしてくれます。そのときの森田さんのかおは、ちょっとゆがんでいますが、こえはあかるいです。


わたしのすんでいるところは、ひるまでもすこしくらいです。森田さんが、きょうもわたしにおかしをくれました。ここにはどうぶつがたくさんいます。海をみたいようなきもしますが、みなくてもいきていけます。

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