2002年のバスケットボール

増田友人帳

2002年のバスケットボール

仕事の帰りに電車で寝てしまって、気が付いたら2002年に到着していた。


僕はそこで降りた。駅から出るとそこは、なんとか米穀店という名前の駄菓子屋の横の道だった。看板の文字が消えているので、ここが「なに米穀店」なのかは僕にもわからない。


僕の横にイッケイが居た。

僕はイッケイと歩いていた。

二人とも白いウインドブレーカーを着ている。バスケ部の部費で買ったやつだ。

部活はだいたい17時までやるから、今は17時15分くらいだと思う。

僕の家とイッケイの家は同じ方向にある。だから一緒に歩いてるんだ。


イッケイは、「社会人リーグの選手になろうと思う」と僕に言った。

やっぱりここは2002年だ。僕はこの年にイッケイとこの話をしたのをはっきりと覚えている。

しかしまだこの頃には、Bリーグは存在していない。

「社会人バスケの選手になって、

 それで続けようと思う。

 めっちゃいいと思わない?」


イッケイは校内のだれよりもバスケがうまかった。

1年のうち300日くらいはイッケイと公園でバスケをした僕がそう言うのだから間違いない。

なんせ公園じゅうに雪が積もった日にも1on1をやったのだから。

もちろんイッケイより足の速いやつも、背の高いやつもいる。でもイッケイがいちばんうまい。


僕は

「いいね。

 イッケイはバスケうまいから、

 普通にプロになれると思うよ」

と言ってしまった。


僕はイッケイの未来を知っている。イッケイはプロのバスケ選手にはなれない。2018年時点でのイッケイは、業務用のエアコンを企業とかに入れる仕事の社長をやっていた。

今なにをしてるのかは知らない。


「俺の試合、観に来てね」

と言うイッケイに、僕は

「うん」

と言った。

 

空がオレンジと灰色の間くらいの色をしている。

もう少し歩いたらカラオケ屋があって、その先にボタン式の信号機があるはずだ。

僕たちはそこで別れる。

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2002年のバスケットボール 増田友人帳 @masuda_desuyo

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