第17話 主人公-17


           *


 更衣室から出てきた林を見つけた山本と木村が、話し掛けた。

「どうだい、おねえさまのご指導は」山本

「ん…。まぁまぁ」林

「そろそろ、試合に出れないの?」木村

「まだ、ダメだって」林

「一体どんな練習してるんだよ」山本

「筋トレと柔軟と、最近になって、守備とバント練習」林

「なんかちんけなの」山本

「ホントに、鍛えるつもりなのかな」木村

「わからないよ、そんなこと」林

「自分で変わったと思う?」木村

「よくわからない…」林

「結局、おもちゃにされてるだけなんじゃないの?」山本

「そんなことはないよ。ちゃんと、一緒にトレーニングしてくれてるし」林

「まぁ、いいじゃない。ほら、おねえさまがお待ちだよ」山本

グラウンドに入ると朝夢見がアップをしていた。林を見つけると、手招きをした。林は山本に冷やかされながらも、呼ばれるままに朝夢見に近づいた。

「何ですか?」林

「あのね」あゆみ夢見は楽しそうだった。

「今度の試合に出てみない?」あゆみ

「え、僕がですか?」林

「そう、そろそろ筋肉痛も取れてきた頃だし。それに、元々、レギュラーでしょ。特訓の成果を見せるときがきたのよ」あゆみ

「え…、でも」林

「さっきキャプテンと話したの。それで、二番で先発」あゆみ

「二番?そんなの、僕に無理です」林

「大丈夫。バント練習もしたし、あたしとの一二番コンビなら、何の問題もないわ」あゆみ

「でも…」あゆみ

「練習はね、試合のためにあるのよ。元気出して、頑張りましょう」あゆみ

にこにこと微笑む朝夢見に林はもう何も言えなかった。


 試合の相手は宮磯中だった。以前も対戦したことのあるチームだった。宮磯公園のグラウンドに到着した緑ヶ丘のメンバーは、リラックスした雰囲気で和気あいあいとしていた。ただ、林だけは、緊張していた。


 オーダー表の交換が行われた。

―――――――――――――――――――――

  1 2 3 4 5 6 7 8 9  

―――――――――――――――――――――

        サ            

  清 林 明 ン 小 山 池 高 大  

  水   日 デ 林 本 田 松 木  

        ィ           

―――――――――――――――――――――

  7 6 8 1 5 9 2 3 4  

―――――――――――――――――――――


 オーダー表に自分の名前があって、しかも、それが、二番であることに林は緊張してしまった。そんな林を気づかってか、朝夢見は軽く肩を叩きながら、言った。

「さぁ、始まりよ。あなたのプレイヤーとしての、試合が」あゆみ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る