グリーンスクール - 主人公

辻澤 あきら

第1話 主人公-1


          主人公


 某月某日―――晴。


 「あたし、何か、クラブでもしてみようかな」

しのぶは、ぽつりとこぼした。

「ん。何するの?」

朝夢見あゆみは、とりたてて驚くでもなく、あっさりと答えた。

 穏やかな陽射しの下の下校途中。近くの小学校の児童たちが、二人の傍らを駆け抜けていった。

 「ほら、アルバイトも決まったし。週三回。あとの日、なんとなく、退屈だし…」

「ん。いいんじゃない?」

「そう…」

「やれば」

「ん。やりたいんだけど、ほら、ね、二年のこんな時期に入るのって、ちょっと抵抗あるじゃない」

「まぁね」

「だから、さ」

「何やりたいの?」

「ん、別に、特にやりたいものってないの。何でもいいんだけけど、さ」

「じゃあ、全部のクラブ、見て回ったら?」

「ん…。それでも、いいんだけど…。入れてくれるかな」

「大丈夫じゃない?」

「ね、あゆみさんって、クラブやらないの?」

「あたしは、アルバイトやってるから」

「でも、週の半分くらいでしょ。やろうと思えばできるのに、どうしてやらないの?」

「それより、どうして、しのぶちゃんは、クラブやりたいって思ったの?」

「あたし?あたし…、あのね、聞いてくれる?」

「うん」

「あたし、この学校に来たばっかりのとき、由起子先生待ってて、校内を見てたの、ね。その時、何となく見てた校庭の雰囲気が、すっごく、かっこよかったの。なんて言うのかな…、…青春、なんて言いたくないけど、うん、あたしも、そんなふうに、頑張れるといいな、って、漠然と思ってたの。だから」

「ふーん。いいんじゃない。それで」

「え?」

「理由なんて、それでいいんじゃない。要は、やりたいんでしょ」

「うん」

「じゃあ、やれば?」

「ん、でも…」

「なに?」

「入りにくいじゃない。さっきも言ったけど、二年でこんな時期に、ね」

「何でもいいの?」

「え?」

「何でもいいなら、いいクラブがあるわよ。クラブじゃないけど」

「何、それ?」

「愛球会」


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