第3話 結婚式は唐突に行われた
カーン、コーン、カーン、コーン
「ここはどこだ?」
大きな鐘の音と、神々しいほどの光が俺を包み込む。
「シンロウ、アナタはスコヤカナルときも、ヤメタトキも、ユタカナトキも、マジイトキも、ラブをチカッチャイマスカ?」
「は?」
状況がわからん。
てか、どこからツッコメばいいのかが分からん。
分からんが、まず言いたいことが一つある。
何だこのハゲ牧師。
ふざけた顔で、ふざけた読み方しやがって!
てか、上から降っている光が牧師の頭に反射しているせいで眩しすぎるんだよ。
なんで、結婚式でおめえが一番目立ってるんだよ!
周りの来賓者達を見て見ろ。
皆サングラスつけてるんだぜ、てかなんで俺の正面に立っている花嫁ですらサングラスつけてるんだよ!
牧師が俺の方をジーっと見つめる。
「チカッチャイマスカ?」
「誓うわけねえーーだろ」
マジこの牧師ムカつくんだけど。
二ヤリとしながら「チカッチャイマスカ?」とか言うんじゃねー。
そのムカつく顔面を一発殴ろうか??
「ッチ、早く言えよ」
舌打ちしやがったよこの野郎。
てか、日本語流ちょうに喋れるなら初めから喋れよ!
俺の中で抑えられない怒りが湧き上がってくる。
一度大きく深呼吸し、気持ちを落ち着かせ怒りを抑える。
俺も30超えた立派な大人だ、怒りの抑え方ぐらいは心得ているさ。
「めんどくさいから、もう次読むわ」
怒りを抑えろ俺。
「シンプ、えーーーーーと、・・・・同じことチカイマスカ?」
略すな!
ホント適当だなこの牧師。
こんなふざけた読み方したら、さすがのサングラス新婦も
「誓います」
誓っちゃうのかーーーい。
まあこの流れ的に薄々気づいてたんだけどね。
気づいてたんだけどさあ~
「新郎、新婦のブーケとサングラス取ってください」
結婚式で花嫁のサングラスを取れは初めて聞いたな。
俺はそんな事を考えながら、素直にブーケとサングラスを取る。
もうここまで来ると、俺もこの場の空気に慣れてしまっていた。
ブーケとサングラスを取り気づく、俺の花嫁は従妹の雅だった。
「お兄ちゃん」
綺麗なウエディングドレスに包まれた美少女。
普通ならこのシーン、花嫁姿の美少女にドキドキする場面なのだろうが・・・・
牧師の頭が眩しすぎて、花嫁が全く見えん。
なんとか薄目で頑張ってみるが、やっぱり見えん。
てか今更だけど、何で俺と雅が結婚式あげてるんだ?
「では誓いのキスを」
「え、キスするの?」
「はい」
まあ、やれって言うならやらなくもないんだけどね!
別にやりたいわけじゃないから!
牧師に言われたから、しょうがなくだから!
俺は震える手で、雅の肩を掴む。
そして、顔を近づけ・・・・・・
「おにいちゃーーーーーーーーーーーーん」
「あれ?キスは??」
「なんの夢見てたのお兄ちゃん??」
夢だったのか。
雅の発言で俺は初めてさっきまで、夢を見てたのだと気づく。
てか、なんで雅が怒ってるんだ?
まさか、夢の内容を口に出してたとか?
夢とはいえここにいる雅に、許可なくキスしようしたのがアウトだったのか?
まあとりあえず、謝るか。
「ごめん雅」
「やけに素直じゃん」
俺はこの短期間で学んだからな。
雅が怒っていたらすぐに謝れと、じゃないと後々めんどくさいし。
「で、どんな夢見てたの?」
「雅と結婚する夢」
俺は見た内容を素直に答える。
「バカ―――――」
手に持っていたお玉で、思いっきり殴られた。
女の子って難しいね。
ヒリヒリするほっぺを摩りながら雅の方を向くと、彼女は少し悲しそうな顔をしていた。
「夢の中で先に、私のウエディング姿見ないでよ。バカ・・・」
どうやら、現実より先にウエディング姿を見られてのが嫌だったらしい。
でも、どうしようもなくない?夢なんだし。
これ言ったらまた雅に怒られると思ったので、慎重に言葉を選ぶ。
「実は雅のウエディング姿、見れてないんだ」
「え?」
「変な牧師が居たんだけど、そいつの頭が眩しすぎて、結局雅のウエディング姿見れなかった」
「なにそれ」
雅はクスリと笑う。
本人が機嫌を直してくれたならよかった。
でも、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、マジで1ミリだけ、キスを期待してたから少し残念だ。
「お兄ちゃんなんか残念そうな顔してる」
「え、あー、その、結婚式だったからキスする場面があったんだけど、結局できなかったんだよ」
俺は殴られる覚悟で雅に伝える。
ちゅっ♡
ほっぺに柔らかい感触を感じた。
「今はこれで我慢して・・・・・」
俺はこの日、人生で初めてキスの感触を味わった。
ほっぺにだけど。
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