インタールード・3

 あの優しい彼を初めて怒らせてしまった。


 彼が怒るのも無理もない。今回のことは一方的に私に落ち度がある。

 本当のことを打ち明ける勇気はとうとう最後まで持てなかった。と言って、過去をないことにして彼に身を任せるほど大胆にもなれなかった。すべてに中途半端な私、自分で自分がいやになる。このまま放置すれば、きっと私はフラれてしまうだろう。


 あの時の高校時代の友達とも、まだ親密に付き合っているようだ。あの二人との会話をきっかけに、彼が私の秘密に気が付いてしまったらもうお終いだ。

 でも、やっぱり、どうしても彼を諦めたくない。そのために、私は今何をなすべきか。頭が痛くなるくらい何度も何度も考えた。でも妙案などあるはずもない。

 もう一刻の猶予もないと感じた私は、一か八かの勝負に出ることを決意した。

 

 正攻法で行く。彼にすべてを告白する。

 でも告白してどうする。伏して許しを請うのか。彼なら許してくれるかもしれない。でも、それでは彼の心の中にわだかまりが残り、私の望むような未来にはならないだろう。


 真実を知ってもなお、彼が自らの意思で、彼の方から私を許してくれる。そうなってくれるシチュエーションを、私は作りださねければならない。私は、知恵と勇気とこのカラダ、持てるもの全てを使って全力を尽くそう。


 人事を尽くして天命を待つ。

 後は野となれ山となれ、だ。


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