第27話 第50階層天使ルシファー
第36階層以下もソルは苦戦を繰り広げながらも幾多もの死線を潜り抜けてきた。
そしてついに、大台となる階層に到達する。ついにこの裏ダンジョン『ゲヘナ』の第50階層にまで到達したのである。
ソルは偵察スキルを試す、だがどうやらダメなようだ。
ソルの偵察スキルはキャンセルされるようになった。防護結界でも張られていると推測する事ができた。
その上、恐らくは上の階層に逃走する事などできないと思われる。
だが、それと同時にこのダンジョンの終局(クリア)も近づいているのではないか、そう希望を持てる見通しも持てた。
だが当然、そこに出現する敵もそれ相応に強力であると察する事はできた。だから決して油断ならない。
間違いなく相当な強敵が出てくる。
ソルは気を引き締め、できるだけの準備をして第50階層の攻略へと挑むのである。
ソルのステータスは攻略前にかなりの上昇を見せていた。
【名 前】 ソル・ユグドラシル
【年 齢】 15歳
【固有スキル】 レベル0
※レベル0で固定される。経験値取得が意味をなさない。
【レベル】 0
【HP】 5123
【MP】 5212
【攻撃力】 5200
【防御力】 5189
【俊敏性】 5189
【魔力】 5040
【魔力防御力】 4980
【運気】 4890
【スキル】
技スキル
『回し斬り』『一刀両断』『魔法剣』
補助スキル
『ステータス変換』『鑑定』『錬成』『解析』『偵察』『錬金』『強化』
魔法スキル
『炎魔法(フレイム)』『氷結魔法(コールド)』『雷魔法(ライトニング)』『風魔法(エアロ)』『大地魔法(クエイク)』『聖魔法(ホーリー)』『闇魔法(ダークネス)』『回復魔法(ヒーリング)』異常解除魔法(クリアー)』
ステータスが5000前後まで上昇していた。ソルのレベルは固有スキル『レベル0』の効果により一切の上昇を見せないが、それでもこのステータスは並みの人間で言うならばレベル90前後である。
かつて世界を救ったとされる英雄――ソルにとっては自分達の先祖であった。
俗に勇者と呼ばれる称号を得た伝説的な人物――ロイ・ユグドラシルのレベルが100だったとされている。
大昔の事なので定かではないが。大体、昔話というものは誇張されて伝えられるのである。
ソルはそういった伝説的な人物に近づきつつあるのだが、本人はその事を理解していなかった。
ソルは一人きりでこの裏ダンジョンを攻略しているのだ。当然のようにその事を教えてくれる人は一人としていない。
自分のやっている事を凄い事だという認識すら持ち合わせていなかった。ただ必死なのだ。必死にダンジョンを攻略している。それだけの事だった。
「よし……行くか」
躊躇っていても仕方がない。いずれは行かなければならない試練だ。
臆していては前に進めない。意を決してソルは第50階層へと降り立つ。
◇
第50階層はダンジョンとは思えない、光り輝く空間だった。まるで天空にいるかのような錯覚すら抱くほどに。
そこにいたのは煌びやかで美しい少年であった。銀髪をした青年。白く美しい肌をしている。女性的な風貌は男装の麗人だと言われても信じられる程であった。
ただ普通の人間ではないのは明らかであった。背中から美しい、白い翼を生やしているからだ。
天使と呼ばれる種族がいる。恐らくは目の前にいるのは天使だ。
「ようこそ……このダンジョン『ゲヘナ』の第50階層へ」
人間の言葉を彼は話していた。高い知能を持っているようだった。初めてみる、対話の出来る相手だった。だが、だからといって平和的な解決などできはしないだろう。
だが、ある程度このダンジョンに関する情報を聞き出す事はできるかもしれない。
一人でこのダンジョンを50階層まで攻略してきたのだ。それくらいの褒美はあるかもしれない。
「驚いたな……君はまさか一人きりでこのダンジョンを攻略してきたのかい? それもとも、途中で仲間は死んでいって、それで残ったのが君だったとか?」
少年は驚いていた。
「仲間はいない……俺は一人でこのダンジョンを攻略してきた」
「そうか……それは凄いな。そういえば申し遅れたな。僕の名は『ルシファー』見ての通り天使だ」
ソルは解析スキルを使用する。解析スキルはキャンセルされなかったようだ。
モンスター名『ルシファー』LV90 HP6235
最高位の天使。全てにおいて高い能力を持つ。強力な光属性の魔法を放ち、強力なスキルも持ち合わせている。
※属性光。弱点属性闇。
天使――ルシファー。名乗った情報に一切の嘘はないようだ。相手は間違いなく天使だ。
「俺の名はソルだ。ソル・ユグドラシル」
「そうか。ソル君っていうのか」
「このダンジョンの事を聞いていいか?」
「なんだい? 僕の知っている限りの事なら教えてあげるよ」
ルシファーは敵とは思えない、柔和な笑みを浮かべた。思わず絆されてしまうような、天使の笑みだ。
「このダンジョンは全部で何階層まである?」
「第100階層までだよ」
第100階層――後、50階層もあるのか。まだ道の半ばなのか。50階層でクリアだと思っていたソルは思わず心を折られそうになる。
「ダンジョンを第100階層までクリアすれば外に出られるのか?」
「うん。出られるよ」
「クリアする以外に外に出る方法は? 抜け道はないのか?」
「ないね……順当にクリアしていくしかない」
「第100階層まで、どんな敵が出るんだ?」
「それは教えられないなぁ……」
「そうか……」
「他に聞きたい事はないかい?」
「ない……」
「僕が嘘を言ったとは思わないのかい? もしかしたらクリアする以外の脱出方法があるかもしれないよ」
「いや、それはないだろ」
「どうしてそう思うんだい?」
「そんな抜け道がある程、このダンジョンは容易くできていないと思えたからだ」
「へー……能天気な楽観主義者ではないんだね。流石はここまで来ただけの事はある」
ルシファーは笑う。
「でも、抜け道はないけど近道ならあるよ」
「近道?」
「このダンジョンは第100階層まであると言ったけど、この第50階層から近道(ショートカット)ですぐに行けるんだよ」
「近道? どこにそんな近道があるんだ?」
「この第50階層は選択式なんだよ。僕に勝ったら第100階層まで転移魔法(テレポート)で送り届ける事ができる。だけど、僕と闘わずに素通りする事もできるんだよ。その場合は通常通り、残りの50階層を攻略しなければならない」
ルシファーは告げた。
「どうするんだい? ソル君。君が選ぶんだよ」
ソルは考えた。残りの50階層を今までと同じように攻略するのは骨が折れた。敵もより強大になっていくだろう。
それを考えれば目の前の一人。ルシファーは間違いなく強敵だ。だが、一人に過ぎない。
一回の戦闘で事が終わる方が楽ではないか。ソルはそう天秤にかけ、答えを出した。
「闘うよ。君とルシファー」
ソルはルシファーと闘う事を選んだ。
「へー……それでいいのかい? ソル君。わかった、君の選択通り、僕が闘おう。そして僕に勝利した暁には第100階層まで君を送り届けよう」
ルシファーは天高く待った。羽ばたいたのだ。ここは異空間のようだった。天井という概念がない。周囲が青空に包まれていた。まるで天空にいるようだった。天空の闘技場だ。
「君の選択が愚かな選択だったという事を僕自らの手で証明してあげるよ」
ルシファーは微笑を浮かべた。
来る。ソルは剣を構える。
「いくよ」
こうして天使ルシファーとの闘いが始まった。
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