第19話 エメラルドドラゴンとの闘い下
(な、なんでだ! なんでだよ! ……)
さっきまで効いていた炎属性の魔法剣がまるで効かなくなった事にソルは激しい動揺を覚えた。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
しかし、ソルの都合など意にも介さず、エメラルドドラゴンは襲い掛かってくる。
ソルはその攻撃を何とか避けつつも思考し続けていた。
(何かあるのか……理由が)
ソルは考えた。目に見えた変化はひとつだけだ。エメラルドドラゴンの皮膚の色が変わった。
思えばその皮膚となる鉱石自体は無色透明だったのかもしれない。エメラルドドラゴンが緑色に発光していたのだ。そしてその光が緑色から青に変わった。
その事が何の意味をする? その思考の中でソルは一つの見解にたどり着く。
(もしかして、弱点が変わったのか?)
ありうる話だ。弱点は基本的に決まった属性ではあるが、稀に弱点が変わるモンスターというのも存在する。
エメラルドドラゴンがその稀なモンスターである可能性は十二分にありえた。
「『解析』」
ソルは再度、『解析』を使用した。
モンスター名『エメラルドドラゴン』LV60 HP985
弱点属性、雷。
無効化属性、火。
(やっぱり……思った通りだ)
再度『解析』を使用した事で腑に落ちた。
弱点属性が変わっている。そして、今まで弱点だった火属性が無効化されてしまっているのだ。
つまり、火属性の魔法剣は今のエメラルドドラゴンの役には立たない。
「だったら!」
ソルは火属性の付与(エンチャント)を解消(キャンセル)する。
「雷魔法(ライトニング)」
そして、雷属性を剣に付与(エンチャント)する。ソルの持っている剣に電流が迸る。
「くらえっ!」
ソルは斬りかかる。
エメラルドドラゴンは先ほどのような悲鳴を上げて、よろめいた。間違いない、効いている様子だ。
ソルは斬り続ける。エメラルドドラゴンの動き自体は単調で鈍重であった。
今のソルにとっては避ける事はさほど難しくはない。
エメラルドドラゴンは属性を変えるが、ソルもその度に魔法剣の属性を切り替え、柔軟に叩き続けた。
そしてついにはエメラルドドラゴンのHPが100を切ったのである。
最初の時と同じように、エメラルドドラゴンは緑色に発光していた。そしてソルの剣も再び、火属性の魔法剣へと戻っていた。
ソルは天高く飛んだ。技スキルの中には両立しうるものがある。魔法剣は一応は技スキルに分類されてはいるが、補助スキルに近いスキルだ。
剣技と魔法剣は両立しうるスキルである。
ソルはその状態のまま、『一刀両断』のスキルを発動させる。
ソルは天高く舞い、そしてその勢いのまま剣を振り下ろす。
硬質なはずのエメラルドドラゴンがまるでバターをナイフで切るかのように、容易く両断された。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
エメラルドドラゴンは断末魔のような悲鳴を上げる。第十階層全体に響く程、大きな悲鳴を上げていた。
「ふう……何とかなったか」
ソルは胸を撫で下ろす。ソルはある事を思いついた。この階層には何もないようにもみえるが、そうではない。エメラルドドラゴンの残骸だけは存在していた。
そしてこれは報酬になりえるかもしれない。
ソルはエメラルドドラゴンの残骸を『鑑定』スキルで鑑定する。
『エメラルドドラゴンの素材』
貴重な鉱物。その硬度はアダマンタイトを凌ぐとすらされている。
「……やっぱり、こいつの残骸は良い武器になりそうだ」
ソルは『錬成』スキルで武器を作り出す。
緑色に輝く剣。『エメラルドソード』をソルは手に入れた。
ソルはその剣を装備する。
かくしてソルは第十一階層へと、さらに奥深くまで進んでいく。
さらに激しくなっていく闘い。しかしソルはそれを上回る速度で、さらに強くなっていくのであった。
◇
『エメラルドソード』
攻撃力+200。
※無属性。特殊効果なし。
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