アンチ

でなむね

第1話

「anti」とは、「反対の」という意味の形容詞や、「~に反対で」という意味を加える前置詞としても使うことができる語句のことだ。英語では。


今日も気に入らない芸能人にアンチコメントをしよう。

昨日とは別の人物に書き込むことにする。

知名度は問わない。炎上しているなら無名でも、ネットでは知名度が上がるからだ。重要なのは書き込まれているコメントだ。アンチコメントが少なすぎると自分も目立ってしまう。木を隠すなら森の中ということだ。

ネットで炎上している芸能人を検索する。暇な誰かが今炎上している芸能人を理由とともにまとめている。

それをわざわざ調べる自分も同類に暇なやつだな。

今日からはこいつにしよう。

17歳の読者モデルか何かの女。炎上の理由は国民的男性アイドルとの夜遊びの写真が週刊誌に撮られたことだ。理由なんてどうでもいいが、コメントするためのネタとして目を通す。

未成年のくせしてタバコも吸っていたらしい。

中学生の頃の写真が出回っている。今では清楚系だが、写真の中の彼女はプリン頭で下品な笑顔。指に挟まれたタバコの火は、彼女のこれまでの活動を灰にしていた。

しかし交友関係に恵まれなかったのだな。彼女以外にはモザイクがかけられているし、何よりこの写真は友人しか持っていないだろう。炎上してる最中に、さらに油を注ぐ友人がいただなんて思いもしなかっただろう。頭の悪いやつは友人選びすらもできないのか。


パソコンを開いて複数あるSNSアカウントの1つにログインする。

さて、あいつの最新の投稿を見てみよう。

かなりの炎上具合であり、ファンの擁護する書き込みも埋もれてしまうような誹謗中傷のコメントが集まっている。キーボードを指に乗せる。


「こんなブスでもモデルになれてアイドルと近づくことできるのかよwwwwww」


最近wのキーの文字が消えかけてきたな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る