乾いた大地に潤いを

赦那

第1話 始まりの朝

「さて、と。こんなもんだな。」


 今日から日々を過ごすアパートの部屋で一通り荷物の整理を終えて、オレ—谷崎乾露—は珈琲を啜る。

 あとは畳んだ段ボールをまとめてベランダにでも置けば十分だろ。

 あっ、そういえばまだご近所さんに挨拶回りもしてなかったっけか。


「行かなきゃいけねえよなァ……。」


 オレは重い腰を上げて、出かける準備をする。

 黒いスウェットと白いTシャツの上から青のコートを羽織り、男にしてはそれなりに長い髪を緩く纏めて左肩から流した。

 ……前髪邪魔だからピンか何かで留めるか。

 探したら丁度いいアメピンがあったので、前髪は右半分を耳にかけてピン二本で十字に留めた。

 オシャレとかに興味はないから適当にはなったけど、こんなものでいいだろう。

 戸締りも確認して、挨拶用の引っ越しそばも持った。

 

「行ってきまァす。」


 玄関に置いた姿見に映った、「顔だけは」妹にそっくりなオレに挨拶をして出発した。

 まずは武装探偵社か。

 どんな所なのか、少し楽しみだ。

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