第15話 ネタばらし
店内中の拍手が収まるのを待って、俺は尋ねる。てか、みんな騒ぎすぎじゃない? 俺公開告白をさせられたの? 無茶苦茶恥ずかしいんだけど。
「それで……これは何なんだ? 結局婚約者って言うのは嘘なの?」
「はっはっはー、もちろん嘘に決まっていじゃないか、全ては『
そう言って彼女は自分の髪を思いっきりつかむんで投げると中からショートカットの黒髪が現れる。どうやらウィッグだったらしい。てか、この子見たことある。姫奈と一緒に写真に写っていた演劇部のエースの子じゃん。
「ちなみに『
そう言って元気よく声を上げたのは甘いのものが苦手な姫奈推しの文芸部の女の子だ。むっちゃノリノリである。彼女は百合ではなく、カップル厨だったようだ。
「そして私が、運転手役の七海です。普段はお嬢様と一夜君の二人の送迎をしております。幼馴染カップルは最高ですな。ちなみに旦那様と奥様も幼馴染なんですぞ」
「あなたの事は知ってますよ!! っていうか別にあなたの性癖とか王牙おじさんの恋愛とか知りたくなかったです!!」
俺は二人に便乗してテンション高めに自己紹介をする七海さんにツッコミを入れる。でも、大体わかってきた。全部が姫奈たちの計画だったのか……っ婚約者なんていなかったんだな。俺は自分が思う以上にほっとしたことに驚きつつも、ああ、俺は彼女が本当に好きなんだなと改めて思うのであった。
「その……怒ってるわよね? あなたを騙したんだもの。だけど……私、あんたが屋敷を出るって言ってどうすればいいかわからなくて……それで……」
「ああ、やりすぎだって思うところもあったけど、その……ちゃんと話さなかった俺も悪かったしね……」
俺はつい昔のようにしょんぼりとしている彼女の頭を撫でると嬉しそうにとろけた顔をする。そして、姫奈を助けるように友人たちが口を開く。
「僕たちが彼女を煽ったんだ。許して欲しいな。授業中も先生にあてられてもボーっとしているし、話しかけてもろくに返事をしないくらいへこんでたんだよ」
「そうなんです、一夜君が屋敷をやめてから姫奈様は生きた屍みたいで大変だったんですよ。お弁当だって食べませんし、部活の時も心あらずですし……パソコンでひたすら『一夜一夜一夜』って打っていた時はさすがの私も引きましたね」
「ちょっと、それは言わないでって言ったでしょう。あー、悪かったわね!! だって、一夜のいない人生なんて考えられなかったのよ!! 悪い!?」
二人の言葉に姫奈は顔を真っ赤にしてあたふたながら頭を抱え、俺を涙目になって睨みつけて逆ギレをする。その様子に俺が彼女のなかでどれだけ大事な存在だったのかを理解する。そして……それがとても嬉しかった。
「ああ、その……姫奈と俺が迷惑をかけたね。それでこの計画はいつからはじまたんだ」
「それはね……」
俺が苦笑しながらも友人たちに謝って、姫奈に問うと、気まずそうにしている彼女の口から今回の計画が語られる。
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