ハイスペック恋愛クソザコお嬢様である黒乃姫奈に手を出したら俺の〇〇〇が飛ぶ~好きすぎて我慢できないから距離を置こうと思ってんのにウチに住むってマジで言ってんの??
第9話 好きな人と一緒に寝るって緊張する
第9話 好きな人と一緒に寝るって緊張する
落ちつけ、落ち着け、俺よ……彼女に手を出したら俺の愛馬が飛ぶだろう。王牙おじさんも家出した姫奈を匿ったことは許してくれても手を出した許してくれはしないだろう。ていうかさ、姫奈はわかっているのだろうか? 俺だって男なんだぜ。彼女の中ではいつまでも、幼馴染なのかもしれない。
冷静になるために少しトイレに行くと言って部屋を出たものの興奮が全然収まらないのだ。好きな子と同じ家に二人って言うのでもやばいのに、一緒の部屋で隣の布団で寝ているんだ。仕方ないだろう。
「これを使うしかないな……」
俺はリビングにある父の棚から薬を一錠拝借する。あれは父が「社運をかけたプロジェクトだから緊張して眠れないんで薬をもらってきたぞー」とやばい目をしながら自慢げにいっていたやつだ。しかし、社運をかけたプロジェクトって今年で5回目なんだが……まあ、それはともかく、俺だって強制的に寝てしまえばまちがいも起きないだろう。俺は水と共に錠剤をのみこんで部屋に戻ってそのまま布団に横になる。
「悪い、遅くなったね」
「ううん、私こそワガママいってごめんなさい、でも、私が困った時は絶対一緒にいて助けてくれるわね」
俺の言葉に彼女は笑顔で答える。いや、そりゃあ、大事な人なんだがら助けてと言えば助けるさと思いながら電気を消してから思う。ああ、違うな。これは今の事を言っているんじゃない。これまでの事も含めて言っているのだろう。
もしかしたら、彼女が家を出たのは俺が屋敷を出たことも関係しているのだろうか、彼女は本来そこまでメンタルが強いわけではない。なんだかんだ俺という存在が彼女のメンタルの緩衝材になっていたのだろうか。こうして彼女に頼ってもらえるのは確かにうれしいものだ。
「なんかこうしていると昔みたいね、一緒に遊んだで疲れて二人で寝ちゃったりしたわよね」
「ああ、屋敷でホラー映画を観た時の事だよね、トイレに一人で行けないって言って無理やりおこされたっけ。あの時風かなんかの変な音がして二人で怖くて適当な部屋に入ったよね」
「もう、そんなことは忘れないさいよ。でも、あの時一緒にいてくれて心強かったわ。私が不安になったり困ったりしたときはずっとそばにいてくれて嬉しかった。だから、私は頑張れたのよ」
そういう彼女はどんな顔をしているのだろう、暗くて見えなかったけどどこか俺にすがるような目をしているのではないだろうか? 俺が何と声をかけようと悩んでいるうちに彼女が言った。
「ねえ、一夜……明日暇だったらデートをしてくれないかしら? 私高校に入ってから部活くらいで家と学校の往復ばかりだったじゃない。だからデートっていうのをしてみたいのよ」
「別に構わないが、俺でいいのか?」
「当たり前でしょう、こんなことあんたじゃなきゃ頼まないんだからね」
彼女の意外な提案に俺はもちろん頷く、ああ睡眠薬の効果が出てきたようだ。だからだろう、意識が遠のいていく。だからだろう、彼女がぼそりといった「こんなこともう最後かもしれないんだもの」という言葉が夢だったかわからない。
朝起きた俺が目を覚ますと部屋には誰もいなかった。もしかして昨日のは夢だったのだろうか? そりゃあそうだよな。姫奈がうちに来るなんてありえないのだ。エッチな漫画の読みすぎだろう。
俺が自分の部屋から出て朝ご飯を食べようとすると、キッチンからいい匂いがする。一体何だろうと思うって覗くとエプロン姿の姫奈が料理をしていた。お鍋から中身をお玉ですくって味見をしている姿はなんというか新妻の様である。
「姫奈……なんでここに……夢じゃなかったのか……」
「おはよう、なに寝ぼけてるのよ、それよりあんたすぐ寝ちゃったけど、昨日の約束は忘れてないでしょうね?」
「約束?」
「あれよ……そのデートをしようってやつよ。寝ぼけてて覚えていないって言ったら許さないんだから」
俺の言葉に彼女が不安そうな目をしながらこちらを睨んで言った。ああ、あれは夢じゃなかったのか。よかった……
「もちろん、覚えているよ。楽しみにしている」
「そう、ならいいのよ、お味噌汁を作ったの。まずいとかいったら怒るからね」
そういうと彼女は鼻歌を歌いながらよそいはじめた。その様子は本当に幸せそうで……寝る寸前のあの悲しそうな顔は気のせいだったと思わせるくらいだった。
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