第25話 神(自称)、調子にのる

「フフフフ。驚いてるねトウマちゃん」




 神(自称)の発言の意味がわからず、なにも言えないでいる俺に、紙袋は笑みを向けてきた。


…いや、実際は表情はわからないんだが、向こう側が透けて見えるというか。


察することができてしまうのは、ひょっとしたらまずいんじゃないだろうか。




「でもそれも仕方ないことなんだよ。私だってこの作戦を思いついたとき、自分で自分が恐ろしくなったからね。まさに天才の発想ってやつだね」




 思い悩む俺をよそに、チッチッチッと指を振りながら、なにやら得意げに神(自称)は語る。


 いや、俺が驚いているのはそっちじゃないんだが。


 半ば呆れながら、とりあえず疑問に思ったことを聞いてみることにした。




「押してダメなら引いてみろ、ですか」




「そう!昨日泡を吹いてるお母さんの介護をしながら、じっくり考えてみたんだ。そしたら気付いちゃったの!」




 なにに気付いたのか知らんが、神(自称)のことだからどうせロクな考えではないなこれは。




「はぁ…」




「トウマちゃんって、素直になれない天邪鬼な性格じゃん?だから超美少女である私の告白にきっと照れちゃって、自分の本当の気持ちに気付くことができないんじゃないかってね。そうでしょ?」




 いや、でしょって言われても…




「別にそんなことは全くないと思うんだが…」




「またまた!照れちゃって!今日ずっと幼馴染のことを意識していたのはわかってるんだから!チラチラ私の方を見てきたのはわかってるんだからね!」




 ビシリと指先をつきつけてくる神(自称)。


 いやちょっと待て。その言い分には異議しかないぞ。




「おい待て。逆だ逆!意識もなにも、それは花梨が見てきたからだろーが!」




 朝からずっと見てきたうえにストーキングまでしてきたのはコイツのほうだ。


 なんで俺のほうが花梨を気にしていたことになる。


 事実を勝手に上書きされたら、こちらとしてはたまったもんじゃないんだが。


 俺が慌てて否定すると、神(自称)は何故か鼻で笑った。




「フッ、ほんとにトウマちゃんは素直じゃないなぁ。ツンデレなんだから。このこのー」




 そういうと神(自称)は俺の脇腹を肘でグリグリとえぐってくる。


 地味に痛いしウザったいしで、ここにきて俺の怒りのボルテージは、一気に高まりつつあった。




「…………」




「まぁそういうわけだから、これで全部解決だね!さぁ、自分の気持ちに気付いた三雲冬真よ!今すぐ幼馴染に告白し、付き合い始めるがいい!」




「…………おい」




「さぁ、ハリーハリーハリー!」




 …………ブチリ。


 俺の中で、なにかが切れた。




「こっくはく!こっくは…あれ、トウマちゃん。なんでそんなに顔しかめて…ていうか顔怖…え、もしかしておこ、いだだだだだだ!!!」




 調子に乗り始めた神(自称)の紙袋の下から俺は手をつっこむと、紙(自称)の頬があるらしい部分を思い切り引き伸ばしていた。




「調・子・に・の・る・な!」




「痛い痛い!ごめんなさいトウマちゃーん!」




 夜の我が家に、またもや神の叫びが轟いたのであった。

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