第22話 ちょっとした喜び
かみ:そ、そそそそそうだったな!う、うむ!さすがだぞ人の子よ!神のことをよく理解しているではないか!褒めてつかわす!
キョドってる。手打ちのメッセージでも露骨にわかるくらい神(自称)がえらくキョドってらっしゃる。
とーま:はぁ、そりゃどうもありがとうございます
かみ:で、では早速本題に入るぞ!メールを見たならもうわかっていると思うが、今日は少し遅く帰るがいい!神にも準備がいるのだ!
メールの本文を確認しようとしたタイミングで神(自称)に邪魔されたんですが…まぁいいか。
どうやら神(自称)は俺に早く帰って欲しくないようだ。
その理由は察しがつくが、とりあえずここは頷いておくとしますかね。
ツッコミいれるのも疲れたし。
とーま:わかりました
かみ:うむ!素直でよろしい!…普段からそれくらいならいいのにー
おい、だから素を見せるのが早すぎるぞ。
もうちょっと忍耐力を身につけて欲しいところだが、それに関してはすぐにどうこうできるもんでもないか。
最後に画像を貼り付け、神とのチャットルームから退出すると、一度大きくため息をついた。
「まったくアイツは本当に…」
「えっと、三雲。お前大丈夫か?」
そうして呆れている俺に、少し戸惑いがちに、久瀬が話しかけてきた。
「ん?ああ、大丈夫だけど…」
「そ、そうか。それならいいんだが…あのさ、クラスの何人かでテスト明けついでにカラオケ行かないかって話してたんだが、三雲もどうだ?」
そう言って久瀬が親指で指さした先には、数名の男子達がいた。
中には俺や久瀬がよく話す、クラスメイトの友人も含まれているようだ。
「もちろん断ってもいいんだが…」
「マジで?いくいく。絶対いくわ」
俺は久瀬の誘いにいちもにもなく飛びついた。
何人かは若干引いたような顔をしているのが少々気がかりではあったが、その誘いは今の俺には願ったり叶ったりだ。
時間を潰せるのはもちろんのこと、この溜まりきったストレスをとにかく発散したかった。
「ほら、行こう。すぐ行こうさぁ行こう!」
「お、おう。元気だなお前…」
久瀬の肩に手をかけながら、押し出すように急かして進む。
戸惑いを見せる久瀬には悪いが、その善意に有り難く相乗りさせてもらうとしよう。
「今はとにかく歌いたいんだ。熱唱したいんだよ。わかってくれ」
「…詳しく聞くのはやめとくよ。てか三雲、なんでお前ちょっと嬉しそうなんだよ」
久瀬の指摘で、俺は自分の頬が緩んでいたことに初めて気付く。
「そうか?」
「お前も結構わかりやすいタイプだよな。顔に出てるぜ」
普段は別にそんなことはないんだがな。今は少し気が緩んでいるのかもしれない。
「うん。そうかもな。今は確かに、ちょっと嬉しいわ」
昨日からアイツの奇天烈な行動に振り回されてばかりだったが、ようやく俺の知ってる花梨が帰ってきたようで、僅かに胸が弾んでいるのは否定しない。
そういう意味では俺も存外、単純な性格をしているのかもしれないな。
これからは花梨のことをどうこう言えないかもしれん。
「……神代さんが怒ってるの見て喜ぶとか、お前、ひょっとしてドSなのか?」
逆に久瀬はそんな俺を見て引いていたが、それに関しては全力で否定させてもらおうか。
俺はいたってノーマルな男なのだから。
「うっせ。ほら、早く行こうぜ」
俺は背を押すようにして、クラスメイト達とともに街へと繰り出していくのだった。
「…………私、ぼっち…ふふふ……」
なお、柊坂は最後まで教室に残っていたらしいが、それは俺には関係ない話であった。
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