第14話 告白の告白
(といっても、こんなことしてもなんにもならないか…)
嘆いたところでなにも始まらないことはわかってる。
さっさと切り替えるべきだと思い直した。
これもまた、花梨との付き合いによる経験値によるものだが、やっぱなんも嬉しくねぇ。
やはり付き合いを考え直すべきかとも思うが、それはそれとして今の柊沢を放置するわけにもいかないか。
ぶっちゃけ置いてきぼりにして帰りたさはすげーあったが、置いて戻ったら戻ったであらぬ誤解をうけそうだし、それは勘弁願いたい。
とりあえずなにか言っちまおう。
こっちは話をさっさと進めたいのだ。
「ぼっちが嫌なら自分から話しかければいいだけでは…」
「それができたら苦労しないわ!コミュ障舐めないで頂戴!」
いや、そんなキリッとした目で言われてもね?
こっちは内心の憤りを隠して、なるべく優しい言葉をかけたつもりなのに、返ってきた言葉がクッソ情けないものだったときの話し相手の気持ち、考えたことある?
……うん、ごめん。
それができてたらコミュ障名乗らないよね。そうだよね…
なんだか逆に申し訳なくなってしまった。
この世は理不尽で満ちてるな…
「柊坂さぁ、中学の時もそれでずっと花梨にべったりだったろ?さすがにそろそろなんとかしたほうがいいぞ?」
「……わかってるわよ、それくらい」
俺の言葉にプイッと目をそらす柊坂。
こういうところも変わっていないらしい。中学の時そのままだ。
花梨は誰にでも積極的に話しかけるやつだったが、柊坂に対しては特に親身になって接していたように思う。
直接聞いたわけではないのだが、花梨はどうやら自分と同じく、人とは違う髪色を持った柊坂に、一種のシンパシーを覚えていたようである。
アイツは自分の銀髪に関しては昔から一切思うところもなさそうだったが、ちょっとは気にしてたのかもしれない。
そのことに関しては、俺も触れるつもりはなかった。
花梨が柊沢と仲良くなっていく過程で、自然と近くにいる俺とも話すようになっていたのだが、柊坂は親しくなった相手には隙を見せるというか、こういった素の一面を覗かせるタイプのようだった。
その仕草を不覚にも可愛いと思ってしまうあたり、人間心理ってやつは都合よくできているらしい。
「とりあえず落ち着いたか?とりあえず立てよ。ほら、手を貸すからさ」
さっきまで見せられていた醜態も、ちょっとは許せる気分になってしまうのだから。
「……ありがと」
俺が差し伸べた手を、柊坂は掴んだ。
その手は小さいうえに柔らかくて、いかにも女の子らしいものだった。
「別に、ひとりでも立てたのに…あまり優しくされると、困るんだけど…」
ゆっくりと立ち上がる柊坂。しかし、今更恥ずかしくなったのか、柊坂はここにきて顔を赤らめた。
マジで今更だなぁと、ふと思う。
「大丈夫か?」
僅かに頷きを見せた後、ひとつ大きく咳払いする。
忘れろ、ということなのかもしれない。言われなくても、誰にも言いふらすつもりなんてもとよりないんだが。
「コホン、悪かったわね、三雲くん。情けない姿を見せたわね。忘れて頂戴」
うん、本当にね?
マジで君、めちゃくちゃ情けなかったからね?
「わかったわかった。んじゃ戻ろうぜ。さすがに花梨だって授業中はないがしろにはしないだ…」
「待ちなさい。話はまだ終わっていないわ」
とはいえ別に異存もなく、反転して教室へと戻ろうとしたのだが、そこで今度は後ろから肩をガッシリと掴まれる。
その相手は言うまでもなく柊坂だ。まだなにかあるんだろうか。俺は彼女へと振り返った。
「おい、なんだよ一体。昼休み終わっちまうぞ」
「つい自爆しちゃったけど、質問に答えてもらってないわよ。あの子、なんで今日は三雲くんのこと見てるのよ。いつもならトウマちゃんトウマちゃんって、犬みたいに話しかけてるじゃないの。今日に限ってそれがないのはおかしいでしょ?」
「あー…それはだな…」
ついで自爆は普通しないと思うが、言われてみれば確かにそっちが本題だったか。
未だ肩に置かれた手には強い力が篭っており、答えるまで逃がさないと語っている。
「答えて」
「痛っ!おい、待て!力を篭めるのはやめろぉぉっっ!」
つーか痛い。マジ痛い。なんかミシミシいってるし。
この子力強いんですけど!えらく握力あるなおい!
「わかった。答える、答えるから離してくれよ」
「最初からそう言えばいいのよ。そうしたら私だって、三雲くんに情けない姿見せずにすんだのに…」
柊坂がなにか呟くも、こっちは肩の痛みのほうが問題だ。
すぐに引いてくれたから良かったが、痣になってたりしないよなぁ…少しばかり心配になる。
「じゃあ話すけど、このことは誰にも言わないでくれよ」
「言わないわよ、話す相手いないんだから…」
あ、やべ。地雷踏んだ。
「なんかごめん…」
「謝らなくていいから早く話して。泣きたくなるから…」
なんだこの空気。すごく重い。色んな意味でつらすぎる。
互いに居た堪らない気持ちになりつつ、俺はゆっくりと口を開いた。
「俺さ、昨日花梨に告白されたんだ」
「へ………?」
そう告げると、柊坂はポカンとした表情を浮かべていた。
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