第二話 〜違和感の先〜

中に入ると目の前には、急な上り坂になった一本の山道が山頂へと続いていた

取り敢えずは道が分からなかったので、太陽そらはしばらくその道に沿ってゆっくり歩く事にした




太陽そらは特に何かを気にする事もなく、しばらくゆっくりと歩いていたが、ふと気がつくと両側が崖になっていて、こころなしか道幅も狭く開けているように感じた


「狭いな、それに落ちたら怪我するような崖しかないし

これは確かに立ち入り禁止になるわけだ」


そう呟きながら崖を見て少し違和感を感じた

その原因はすぐにわかった

〝山〟に入って〝一本道〟をずっと歩いていたのに、途中から〝両側が崖〟になって周りが〝開けて〟いたからだ


しかしこの乱狂山らんきょうざんは名前の通り〝山〟なのだ

いくら乱狂山らんきょうざんが崖だらけといっても、それはあくまで〝山の中にある崖〟程度の規模なのである


だから外から見ても、もちろん上空から見ても、森のように木々が生い茂っている様にしか見えないのだ

あっても岩肌が少し見えるくらいだろう


つまり決して開けた道が出てくることは、山である限りありえないのである

だからこれはどう考えてもおかしかったのだ


「一体どう、なってるんだ…」


そう口から溢しながらも息を飲んで、慎重に足を前に進める




あれからどれだけ経ったのだろう

少し疲れ気味の体を動かしながらも前に足を運ぶ

相変わらず両側には崖がある

ただ違うのは少しずつ奥の方に緑が見え始めている事だ


それが見え始めてから歩くこと一時間

ようやく緑の見えていた所に辿り着いた

緑の正体は当たり前だが木であった


そこの場所は山の中に切り開かれた、大小の岩が転がっている所で、すぐそばに底の見えない崖が見える

ただこの光景もやはり、山の中では違和感を感じる空間に思える


「さっきからなんだか知らないが

どこなんだここ、、、本当に乱狂山らんきょうざん、、、なのか」


そんな疑問をこぼしながら

ふと、さっき登ってきた横道に目を向ける

そこで太陽そらはその横道に向けた先に目を疑った


さっきまで両側が崖で開けていたはずのあの道が、今は木々が生い茂りまるで〝けもの道〟のようになっていたからだ

いや〝けもの道〟と言えるほどの道でもない

もはや目を凝らしてやっと〝道と言える物が有るようで無いような道〟が見える程度の物になっていた


「もう何が何だか、分からなくなってきたよ」


そう呟くように吐き捨てた言葉とともに、ここまで歩いてきた疲労もあって、後ろに倒れ込むようにその場に座り込んだ




しばらくして太陽そらは、荷物を近くの岩山に置いて辺りを探索し始めた

結果的にはやはり〝山の中に開けた所〟という印象と〝底の見えない崖がある〟というぐらいしか分からなかった


しかし太陽そらは来るまでの〝異様な一本道〟の光景と、目の前にある〝崖〟

そして〝開けた場所〟から、ある程度この場所が〝あの崖〟であると想像が出来た


来る前に調べたネットにも

〝その崖は山の中にあり

開けた土地に岩山が並ぶ

辺りには道と呼べるものはなく

そこへの道に関しては

本当に死を望む者のみ見る事ができる…


されど稀に死を望まない人が迷い込み

その道なき道を進みて崖に訪れる

結果その命を崖に食われて落ちてしまう〟

と書いてあった


その噂通り日々の生活に疲れ、何処かで死ぬ事を望んでいた太陽そらは、導かれるようにあの〝異様な一本道〟を歩いて〝この崖〟についたのだった


太陽そらは一応そこまでの状況を頭の中で整理した

そのあとは辺りをもう少し調べ終えてから一つ〝ふぅ〟とため息をこぼし、ひとまずその場を後に一度山を降りて家に帰ることにした

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