小夜と

藤林 光太郎

第1話

「プシュ」と炭酸飲料水の飲み口を開けると

それと同時に、中身が飛び出してしまった。

舌打ちをし面倒臭く床に零れた炭酸を適当なものがなかったので

リビングの床転がっていたシャツで拭いた。

「全くついてない・・・」

小言のようにつぶやく

ふっとカレンダーに目をやると

もう、三月も終わりに差しかかっている

そう言っても予定の一つもない

彼女と花見をする予定も今じゃなくなった。

つい最近、別れたからだ

原因は、僕が冷めてしまったからだ

僕は、何でも熱しやすく冷めやすい性格で

趣味も毎年のように増えては減って、増えては減っての繰り返し

その時は、情熱を持ってやるのだが大体、短くて一週間、長くて一か月

恋人と付き合う期間もそう長くは続かなかった

そんな、自分に心底情けなくて

そのたび、鬱気味になった。

マンションのベランダに出て遠くを眺める

一つ一つ夜に照らされた窓の明かりや車のエンジン音、誰かが喧嘩してる罵声、虫の音

胸ポケットに入っていた煙草を吹かし

全て、雑音と一括りにし視界を下に目をやった

まるで、闇のように真っ黒だった。

「落ちよう・・・」

全ての音を雑音にしている僕にしてみれば

闇に溶け込んだ方が楽になれるんじゃないかと頭を過った

ここは、5階だ死ぬかもしれないし生きるかもしれない

足を手すりにかけ体を持ち上げた瞬間

体がが宙に放り投げられ

真っ逆さまに頭から落ち

「ドンッ!」と衝撃音がマンション中に響き渡った。

「死んだ、、、、」ってあれ、死んだんなら何で自分の声が聞こえてるんだろう

傷だらけだが、大した怪我はして無かった。

恐らく奇跡的に茂みがクッションになって助かったようだ

死んでなかった、良かった。

ほっと、安堵したと同時にこんな事してしまった自分に

罪悪感を感じてしまった。

本当は、死にたくなかったでも

落ちようとしていた時は、本気だった、そう考えると

またしても、鬱気味になった。

ちらほら衝撃音に住人達が気付き窓の明かりがつき始めた

住人に見つかると面倒なので

傷だらけの体を引きずりエレベーターホールに向かおうとしたとき

「ねぇ、おにいさん、死のうとしてたの?」っと耳元で囁いた

心臓が飛び出しそうになるくらいビビった

暫く、動けずにいると手が肩に乗っかってきて

僕の肩をその声の方に向けてきた。

視界には、夜であまり分からなかったが長髪で黒髪の少女そしてどこの学校か分からない制服

さっきの声の持ち主だ

何だ、子供か驚かすなよ

それと同時に疑問が頭を過る

・なぜ、こんな時間にしかも人気のない場所に子供

・どこから見てたんだ確かに下には何も人影はなかったはず

少女をそう考えていくと恐ろしくなった。

「考えてないで、何か言ってよ?」

心臓の鼓動が激しく打ち付ける

破裂するかもしれない

本当に死ぬかもしれない

「ははは、足を滑らせて落ちたんだ死のうとしてたわけじゃなよ。。。」

震える声を殺して言った。

「ウソ・・・でしょ」

少し、微笑しながら返事してきた

怖すぎる、そして自分が推測した次項を足すとさらに恐怖は加速する

「余り、大人をおちょくる何て悪い子だな、、、」

何を言ってんだ僕は、乾いた返答しか出来ない

「私、見てたのすぐ側で」

ヒラリと黒いスカートを靡かせ又しても微笑して言う

すぐ側?どうゆう事だ

確かに足を掛けて落ちたが

いたなら落ちる事も考えなかった

さっき考えた事と似たようなものが繰り返し浮かぶ

今は、考えても埒があかない

ともかく、この場から離れよう

「それじゃ、おにいさんは帰るよじゃあね、君も家に帰りな」

恐怖の匂いが鼻をつつく

少女と居たら警察に通報されるかもしれない

きっと、落下の衝撃で幻覚でもみてるんだ

そう、言い聞かせ

その場を後にする。

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