第3章17話『レベルアップだよ! やったね!』
「そ、そ、そうだ! それならウェンディスは大丈夫なのかな!?」
強引だけど話を変える。だけど、実際気になるところではあった。レンディアほどの力の持ち主ならばウェンディスの作り出したと思われる炎の巨人も倒せそうに思えた。
「おらああああぁぁぁぁぁぁ!! これならどうだこんにゃろう!!」
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「へっ! やるなぁ化け物! ここまで手こずったのは久しぶりだぜ! うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「「………………」」
そこではレンディアとウェンディスが作り出したと思われる炎の巨人が死闘を繰り広げていた。
お互いほぼノーガード。レンディアはまともに炎の巨人の拳やら頭突きやらをくらいながら自らの斧を巨人へと突き立てていた。しかし、相手は炎で構成されている巨人。当然斬れるわけもない。炎の巨人は何事もなかったようにただ攻撃にのみ専念する。
「……あれ、インチキじゃない?」
「……そう、だな。あの村人があのレベルの炎を浄化できるような戦士には見えぬし、武器もそこまで特殊なものではないようだ。攻撃手段が物理攻撃だけなのであれば勝てる道理などないな……」
デスヨネー。というかなんでレンディアは逃げたりしないの? 勝てるわけないじゃんあんなの。馬鹿なの? あぁ、馬鹿だったね!
そして当のウェンディスといえば、
「うーん、暇ですねぇ。ここはひとつ兄さまを想って自分を慰めでもしときますかねぇ」
とんでもない事を呟いて今まさに彼女が着ているぶかぶかの男物の作業着へと手をかけようとしていた。
「ヤメロォォォォォォォォォォォォォッ!」
いろいろな意味でやめて!? うまくは言えないけどこんな誰が見てるかわからないこんな荒野でそんな行為を許したらこの世界が終わってしまうような気がするんだ!
「あら、兄さま、カヤさんとのじゃれ合いは終わったんですか?」
「さっきのあれがじゃれ合いに見えたの!?」
少なくとも僕は必死だったんだけど!? 遊んでるつもりなんてこれっぽっちもなかったんだけど!?
「ごめんなさい兄さま。私も戦いに専念していて兄さまの雄姿しか見ることができていなかったんです。相手のカヤさんがどうなったかまで見る余裕はとてもとても……」
「とてもそうは聞こえないし、そうは見えなかったんだけど!? 僕の雄姿を見てたってそれすごい余裕だよね!? しかもウェンディス! さっき君は戦いの最中だっていうのに何をしようとしていたぁ!?」
「自慰ですが何か?」
「即答!? しかも全然悪びれてない!?」
「この娘……前々から感じていたが只者ではないな……」
もうヤダ。この変態妹。
「さて、それじゃあ続きを(ヌギッ)」
「お願いだからちょっと待とうか? ウェンディス(ガシィッ)」
これだけ待ったをしても自慰へと走ろうとするウェンディスの手をガッシリと押さえる。これ以上の危険行為は見過ごせない。
「兄さま……」
「異論は認めないよ? 放っておいたらウェンディスは何をするか分からないからね」
そのままウェンディスの背後を取り、彼女の腕を背中へと持って行って極める。これで
「痛たたた……わかりました。私も女です。覚悟はできています。しかし、兄さま。ひとつだけいいですか?」
「なに?」
ウェンディスは真剣な表情で僕のほうへと振り向きながら――言った。
「初めてなので……激しくお願いします」
「アタァッ!(ボキッ)」
「あんっ!」
ハッ、しまった。つい勢いで極めていたウェンディスの腕を折ってしまった!
っていうか何を考えているんだよウェンディスはぁ!? この状況から一体何を妄想したっていうの!? しかも初めてだから激しくお願いっておかしいでしょぉ!? 普通そこは優しくお願いしますでしょ!? 激しくを要求してどうするんだよ!
「に、兄さまはこういうプレイがお好きなのですね。べ、勉強になります」
「主様、すまん。童は別にマゾという訳ではないので童とするときはもっと普通にしてもらってもよいか?」
「何を変な目で見てるの二人とも!? っていうか勝手に僕の性癖をアブノーマル認定しないでくれるかなぁ!? 僕はノーマルだぁ!!」
「「とてもそうは思えませんよ(思えぬぞ)?」」
「もうヤダこの二人ぃ!」
チクショォ! 僕が一体何をしたっていうんだ! 僕は最善を尽くしているというのに!
とそのとき、
タラタラッタッタッター
「へ?」
何か今すごく聞き覚えのある音が聞こえたような……。
「今何か聞こえなかった?」
すぐ近くにいるウェンディスとカヤに聞いてみるが、
「ええ、聞こえます。兄さまの鼓動が聞こえます!」
うん、無視しよう。
「何も聞こえなかったと思うが……とりあえず主様よ。色々やっているうちに終わったようだぞ?」
そうしてカヤが指さしたのはレンディアとウェンディスの作り出した炎の巨人が戦っていた場所だ。
そこには既にレンディアの姿は無かった。ウェンディスの作り出した炎の巨人がなにもせず立っており、その傍らには人が一人はいれそうなくらいの大きさの棺桶があった。
「ああ……終わったね」
ごめんよレンディア。結局剣を交えてなかったね。っていうか実質戦ってたのってウェンディスだけだよね? 正しくはウェンディスが召喚した炎の巨人しか戦ってないよね? 戦いを通してお互いの事を理解しあうっていう最初の宣言はいったいどこへ行ったのだろうか?
★ ★ ★
フレイム レベル:50
クラス:使い魔 マスター:ジークリット・ウェンディス
筋力:88
すばやさ:15
体力;107
かしこさ:10
運の良さ:10
魔力:68
防御:67
魔防:58
技能:物理攻撃無効・炎属性付与LV3
★ ★ ★
「ん?」
久しぶりに見たステータス画面だ。内容を見るとウェンディスが召喚した炎の巨人の物らしい。
しかし、おかしい。僕はウェンディスが召喚した炎の巨人を少し前にも見たが、その時にはステータス画面は出てこなかった。なのになんで今更出てくるのだろう? さっきと今で何か変わったところでもあっただろうか?
「どうしたのだ主様? まだ何か聞こえるのか? 少なくとも童には何も聞こえぬのだが……」
そうだ。さっき僕はすごく聞き覚えがある音を聞いた。あれはどこで聞いたんだったっけ? 思い出せ……思い出すんだ!
タラタラッタッタッター。どっかでこの効果音を聞いたことがあったような……。
タラタラッタッタッター。レベルが上がりました。
「あ」
思い出した。そうだ。あれはゲームでキャラクターのレベルが上がった時とかに聞こえる音だ。ということは僕がレベルアップしたってこと? そしてレベルが上がった事によって僕の鑑定の技能レベルが上がってウェンディスが召喚した炎の巨人のステータスも見れるようになったのかもしれない。
早速持っている手に持っていたフロッティを
すると、狙った通り僕の新たなステータスが見えた。
★ ★ ★
クラス:村人殺しの村人 前科持ちの勇者
筋力:1076
すばやさ:1093
体力;1089
かしこさ:25
運の良さ:-12800
魔力:1007
防御:1078
魔防:1067
技能:鑑定LVMAX・耕作・言語理解
★ ★ ★
「…………………………」
「む? どうしたのだ主様? 虚空を見つめていったい何を考えているのだ? 気のせいか今まで見てきた中で一番目が死んでいるような気がするのだが……」
「…………………………」
「どうしたんですか兄さま? ハッ!? もしかしてレンディアさんを倒してしまったことによって3Pができなくなってしまった事を後悔しているのですか!? そこまで考えがいたらず申し訳ありません。その分私が全力で頑張りますので許していただけないでしょうか?」
「…………………………」
「おろ? 主様よ、ここはいつものように娘に対して色々怒るところではないのか? 黙ったままなど主様らしくないぞ?」
「…………………………」
「「重症ですね(だな)」」
「………………――ってなんだよ」
「はい?」「うぬ?」
ホントに……本当にさぁ……
ようやくステータスに『勇者』っていう望んだ文字が現れたのはいいけどさぁ……
「前科持ちの勇者ってなんだよ! それ勇者でもなんでもないだろうが!! そして運が下がりまくってマイナスっていうのはどういうことだああああ! ふっざけんなあああああああ! 神がいるなら出てこいやあああ! ぶん殴ってやるうううううううううううう!!」
なーにがレベルアップだ! ふっざけんなぁ!! むしろ重要な項目が大変な事になってるじゃないか! そもそも村人殺しの村人ってなんだよあ゛ぁ゛!? 僕がレンディアに何をしたぁ! 剣を交えてすらいないんだぞコンチクショウがぁ!!
「ちょっ主様! 落ち着くのだ! 何を言っているのかよくわからんがとにかく落ち着くのだ!」
「そうですよ兄さま! 暴れるのならば私の中でだけにしてください!」
「ウェンディス!? 貴様は何を言っているのだ!? おぬしら兄弟はあれなのか? どこかで頭でもぶつけたのか!?」
「カヤさん……ちょっとカヤさん如きにに名前を呼ばれるのはちょっと……」
「反応するのはそこなのか!? そして童を誰だと心得ている!? 魔王だぞ!? 多くの者が恐怖する魔王だぞ? その魔王に対してさすがに無礼が過ぎるとは思わぬのか?」
「思いませんが何か?」
「即答!? ええい!? 主様! 早く正気に戻ってくれぇ! こんなカオスな状況を童に収拾できんのだ! だから頼む! はやく正気にもどれぇ!」
「そうです! 早く正気に戻って私と契りを結びましょう!」
この後、僕とウェンディスはめちゃくちゃセックスしなかった。
「……俺、どうすりゃいいんだ?」
棺桶状態でその場から動けず、ただ居るだけのレンディアの呟きが三人に届いたのは数時間が経過してからだった。
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