第5話『店主が化け物な件について!!』
「兄さま兄さま、こちらが雑貨屋です」
「うん」
僕とウェンディスは村の外れから、村の中にある雑貨屋にまで移動していた。
途中には村人の家が数軒あるだけで、特に気になるような物は無かった。
そう……気になる物は……ね……。
「? 兄さま? 遠い目をしてどうかなさったんですか?」
「いや……僕の中での村人イメージが大変な事になっていて……ね」
ここに来るまでに何人かの村人とすれ違った。
そのステータスを全部見てきたんだけど……。
「全員村人A《レデック》並みか、それ以上の強さってどういう事だよ……」
そうなのだ。
会う人会う人全員が村人とは思えないくらいに強いのだ。
今のところ、ウェンディス以外4桁越えのステータスを持つ者には会っていないが、全員が今日戦ったドラゴンを上回るステータスを持っていた。
「ドラゴンが弱い……っていう認識でいいのかなぁ……いやぁ、それもおかしい気がするけど」
「さっきから何ぶつぶつ言ってるんですか兄さま?」
おっといけない。ちょっと現実逃避入ってたよ。
「いや、なんでもないよ。それじゃあ行こうか」
「はい」
そうしていざ雑貨屋へ。
僕はその木製の扉を開け、
「ふぅん、来たな! お客様」
そこには上半身裸の筋肉マッチョなおっさんが居た。
バタンっ
僕は黙って開けた扉を閉める。
「? どうしたんですか? お兄様」
「いや……なんかちょっと疲れてるみたいだ」
なんか今筋肉マッチョなおっさんに出迎えられたような……。
「ここって……雑貨屋だよね?」
「はい、そうですよ。こちらにも書いてます」
そう言ってウェンディスが雑貨屋の看板を指し示す。
そこには確かに”KY雑貨店”という文字があった。
「ああ、うん。書いてあるね」
KYについては気にしない事にしよう……。
「ほらほら、行きますよ兄さま。すいませ~ん」
そう言ってウェンディスは店の扉を開ける。
「会って早々閉めるとは何事だお客様ぁ!!」
……なんか怒られた……。
そこに居るのはやはり筋肉マッチョなおっさんだ。
身長は2メートルはあるだろうか……かなり高い。
ついでにその目にはサングラスがかけられており、その表情は
全身が筋肉の塊みたいなおっさんだ……。いったい何をしたらあんな体になるのやら……。
黒色の髪は短く切りそろえられており、そこだけは普通かもしれない。まぁそんなの気にならないくらい存在感がでかいんだけど……
「申し訳ありません。キングさん。兄さまに代わり謝罪しますわ」
そう言ってウェンディスは雑貨屋の店主? に向かって頭を下げる。
まぁ僕のせいで怒られてるんだし僕も謝っておくか。
「すいませんでした!」
それとは別に、そのステータスも見てみる。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
キング・ユーイチ 38歳 男 レベル:?
クラス:雑貨屋店主
筋力:8738
すばやさ:1
体力:39
かしこさ:386
運の良さ:138
魔力:0
防御:8797
魔防:0
技能:怪力・交渉・一撃必殺
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「あばよぉ! とっつぁん!!」
「あらあら、兄さま。どこに行くんですか? ”フライ”」
僕の体はウェンディスの魔法のせいなのか、空中に浮いた。
「離してウェンディス!! ここはすごく危険なんだ!! 僕は化け物と商売する気は無い!!」
雑貨屋店主だとぉ!? ウソをつけぇ!! 完全に狂戦士じゃないか!!
僕が今まで見てきた中で一番筋力が強かったのはレンディアの筋力:586だ。その力でドラゴンを倒して見せた。
それなのにこの化け物は筋力:8738だってぇ!? インチキ筋肉も大概にしろぉぉ!!
もう技能の一撃必殺とかいらないよね!! 撫でられただけであの世に旅立っちゃいそうだよ!!
「この俺を化け物だと? ふぅん、貴様ら
ほらぁ! 絶対に雑貨屋の店主の言葉じゃないよ!? ラスボスとかが言いそうなセリフだよ!?
「落ち着いてください兄さま。キングさんは優しい方です!」
「今までのアレを見てどう納得しろと!!??」
あれが優しいならこの世に居る人間は大抵天使だろう。
「ふぅん。ウェンディスよ。貴様の兄、何か様子がおかしくないか?」
「今日の兄さまは少し変なんです。気にしないでくれると幸いです」
「
「お気遣い、感謝します」
え? 何これ? 会話成立してるの?
「それで今日は何用だお客様?」
「今日は地図を買いに来ました。ですよね? 兄さま?」
いや、もう地図とかどうでもいいんで逃がしてください……。
「ほう、地図だと? あんなもの村人である貴様が手に入れてどうする? この村から外に出るわけでもあるまいに」
「そこも気にしないでくれるとありがたいですわ」
「ふむ、言えない理由と言う訳か……。まぁよかろう。地図は100G《ゴールド》だ」
100Gって日本円でいくらくらいだろうか?
「これでよろしいですか?」
ウェンディスが懐に手を入れ、数枚のお札を
「ふぅん。確かに受け取ったぞ。それで? 他に何か買われるか? お客様?」
さっきから客に対する態度じゃないよねソレ? 現代日本だったら1秒でクビだよ?
「それではコンドームを100個ほど」
「すまんが99個しかないな。990Gだ」
「少しお待ちくださいね」
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
僕はウェンディスの魔法を解除し、懐へ手を入れるウェンディスの手を掴む。
どうやって解除したかって!? 自分でもわかるかぁ!! 男にはやらなければいけない時が色々あるんだ!!
「? どうなさいました兄さま?」
「どうなさいました? じゃあないよね!? そんなもの要らないよね!? 自分の体は大切にしなさい!!」
どう考えても13歳の女の子が買う物じゃない!!
「ハッ!? 申し訳ありませんでした兄さま」
「ホッ。分かってくれたか」
「はい! ゴムなど不要という事ですね!? つまりは命中しても構わないという確固たる意志! さすが兄さまです! そこに気づかず申し訳ありませんでした!」
「
「誤解だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そもそも妹とそんなことはしないと思うんだ。
「とにかく!! そんな物にお金を使うのは兄として許しません!!」
「兄さま……ふふふ。夜が楽しみです」
「
おかしい……僕は何も間違っていないはずなのになんでクズを見るかのような目で見られないといけないんだ……。
「それでクズ。ほかに何か買うか?」
「もうお客様ですら無くなってる!?」
違うんだ! 僕は妹とイケナイ遊びをしようなんて思っていないんだ! 誤解なんだ! 信じてくれぇぇぇぇぇ!!
「他には無いようだな。では帰れ」
「待って!! お願いだから待って! 言い訳させて!!」
「男が言い訳など見苦しい!! 恥を知れ!!」
「言い訳しないとクズのレッテルを張られるんだよぉぉぉ!!!」
それから僕は数時間かけて、
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