乙女ゲームの悪役令嬢は推したちと平和に暮らしたい!

日向多樹

第1章 はじまり

第1話 転生!

皆さんおはようございます。18歳の大学生、彼氏なし歴は年齢の隥神麻里咲と申します。

 よく、名前かっこいいねとか、苗字かっこいいねとか、言われてきましたが、ずっと女子校だった私は出会いすらありませんでした。だから、男の子との交流がなかった私は、気がつくと、オタクになっていたのです。どうしてこうなったのでしょう。さて、本編へどうぞ!



 いつものように、大学の寮でスマホのアラームがなり渋々起きる。今日はそんなことはなかった。久しぶりに自然に起きたのだ。驚いて、スマホを探す。故障でもしたのかな? でも、昨日確かにアラームはつけたはず……。


 そこはよくわからないところだった。お城みたいな綺麗な凄い広い部屋の中に、私一人だけ。しかも、ベットも死ぬほど広いし天蓋付きなんて……。なんかよく分からないけど、怖い。

もしかして! 私、攫われたりしちゃったのかな?!

やばいのかもしれない……。


……ん? このベット、反発が凄いな。ちょっと楽しいかも。少しして、自分がベットの上でビヨンビヨン飛び跳ねていると気づいた。子供か! すると、飛び跳ねた時に、私の髪が視界に入った。ショートのはずの髪が長い。それに茶色のはずが白髪だった。

……え? どういうこと?マジで怖い……。


扉から、誰かが入ってきた。

「おはようございます、お嬢さ、ま……?」

入ってきた人は、メイド服を着ている。


(え……あの、お嬢様が、ベットの上で飛び跳ねてる……?!)


「メイドさんだぁ〜!可愛いですね〜!」

「っ! お嬢様!?」

私はメイドさんの服装を眺めまくる。


「ふむふむ……この服、よく出来ていますね……。

分かった! ここ、アキバのメイドカフェでしょ?! 朋美とかが私のためを思って、寝てる間にサプライズで連れてきてくれたんだ!」


私は早口で言う。

怖かったから、思考がおかしくなっている。絶対こんなことありえないって私が一番わかっている。

あ、ちなみに朋美は中学からのオタ友だ。


「おっ、お嬢様?」

お嬢様……?

「ん? 今、私のことお嬢様って言いました?」

 私は気になったので聞いてみた。

「はい。そうですよ。キャスリーンお嬢様」

「……は?」


 ん、まてよ、キャスリーンとか言うどこかで聞いたことのある名前は置いておいて、とりあえず鏡を見てみよう。それで万事解決するはずだ……。

 私はおそるおそる、広い部屋の隅に置いてある化粧台の鏡を覗き込んだ。


「っ!」


 なんと、そこには、とても綺麗で長く、下だけウェーブがかかっている白髪に薄紅色の宝石のような眼。肌は透き通るように白く綺麗な、美少女がいた。10歳ぐらいだろうか。


「……え、待って、これが私……?」

手を顔に当てる。

鏡に映る美少女も手を顔に当てた。

「いやぁぁぁぁあ!」


 この外見には見覚えがあった。

白髪に薄紅色。

*(ピンクと紅の中間ぐらいの色だよ!)

それにさっき、メイドさんが、キャスリーンって……。


 この子は……私が最近ハマっていた、乙女ゲームの主人公の姉ではないだろうか……。

それもただの姉ではない。

妹であるこの乙女ゲームの主人公に、虐めの日々を送り続ける、あだ名は『リーン』。

 まさか、そんな人になってしまうなんて夢にも思っていなかった。


「……嘘でしょ…………」


 ちょっと、もう一回確認しよう。


 キャスリーンもとい、リーンと主人公のアリアナは公爵家の娘だ。なので当然苗字もある。確か、『ガルシア』だったと思う。メイドさんに聞いてみよう。


「メイドさん、ウチの苗字ってなんだっけ?」

だめだ!こんな軽い感じで聞くのは絶対にリーンじゃない! もっと、、お嬢様みたいな感じで行かないと!


「えっと……あの、メイドさんではなく、

 アリサとお呼びください、キャスリーンお嬢様」

「あっ、ごめん、アリサ」

「はい、苗字ですね、苗字は……」

やめて!ガルシアはやめて!

 私は心の中で叫ぶ。


「ガルシアですよ、忘れてしまわれたのですか?」

アリサは微笑む。


なっ……

「あぁぁぁぁぁぁあ!」

私は叫ぶ。

「きゃっ! お嬢様!?」

アリサはとても驚いたようだ。__________________________________________________________


どうしよう……やっぱりここは、ゲームの世界らしいのだ。

少し内容を整理しよう。冷静になれ、私……。

この乙女ゲームのストーリーの前置きは……


 主人公のアリアナは幼少期を姉(つまり私)とともに過ごし、虐められていた。

段々、それがエスカレートして、森でアリアナが一人で遊んでいた時に偶然見つかり、殺されかけた。(それが、アリアナが10歳の時)


 瀕死のアリアナを森の妖精が気に入り、助けられてある力を授かる。


 その力はヒールする力。この世界において、アリアナしか持っていない魔法の力だった。が、その力のせいで、14歳になった時、アリアナは王宮に仕えることになる。(確か負傷兵を癒したりするためだった気がする。)

 そこで、攻略対象たちに出会う。



確かこうだったはず、

私は自分の推しである、主人公のアリアナを酷い目に合わせたリーンがあまり好きではなかった。まあ、顔はすごい可愛いなとは思ってたんですけどね。多分、アルビノなのかな?


え? 主人公が推しなのはおかしいって? だってさ、アリアナはまず、薄い茶色の綺麗なロングに青い綺麗な瞳。これだけでも美少女すぎるけどさ、性格も優しくて、神なんだよ! 部屋にアリアナのポスターとフィギュアが何個かあるね。っていう、それほど推していたのですっ!


 ……あれ? そうえば、アリアナを瀕死にさせた後の行動を、リーンは何も言及されてない。おかしい、だって、リーンはアリアナのことを嫌っていたから、瀕死にさせた後も、何かしらするはずじゃない……?


 けど、たしかに、リーンは過去回想以外でゲームの中にも出てこなかった。とくにリーンに興味があったわけじゃないし、ゲームでも深くは出てこなかったから、何も疑問に思わなかったけれど、現実で考えるならこれはおかしい。リーンはどうなってしまうのだろう。


 朋美が、

『全部の謎は、隠しルートで明かされるんだよ〜、まだ麻里咲、そこまで行ってないでしょ? 楽しみにしててね!』

って言ってたような、

 隠しルートって誰を攻略するんだろう……。

聞いておけばよかったなぁ……。


これだけゲームを早く進めておけばよかったと思うのは初めてだ。


 たしか、交通事故かなんかで、母親がアリアナを庇って死んでしまったのよね、だから、リーンがアリアナを虐めるようになったとか。それが、リーンが9歳の誕生日なのよね。


あれ? 今が、リーンの9歳の誕生日より後ならば、もう、アリアナをリーンが虐めている可能性があるということじゃない……?!

まずい、どうしよう。


「アリサ! いる?」

「はい、」

アリサが部屋に入ってきた。

「今日って何日かしら?」

私は少し、令嬢っぽい言葉遣いをしてみる。

「まあ、ご冗談を、お誕生日、おめでとうございます」


!これは……。


「アリサ、クイズを出すわね!私は今、何歳になったでしょう?」

「9歳です! もちろん、分かっておりますとも!」


やっぱりだ。

「なら、アリサ! お母様とアリアナはもう出かけたの!?」

「はい。先程、誕生日の買い出しに行ってくると、私どもが行くと伝えましたが、『姉のために、私たちが行きたいのです』と、アリアナ様がおっしゃっていましたよ!」

アリサはニコニコしている。


今日じゃん。今日、アリアナを庇って、二人のお母さんは死ぬんだ。


「じゃあ、もう、間に合わないじゃない……」

「お嬢様?」


すると、玄関の方からアリアナの声がした。

「お母様が! お母様が!」

どうやらもう、事は起きた後らしい。


「どうされたのですか!? アリアナ様!?」

使用人たちが駆け寄る音がする。

「……もう少し早く、気づけていたら……」


 私は拳を握りしめた。

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