星屑

 掌に落ちた星屑を、彼女はぺろりと、私の目の前で平らげました。

「線香花火の味がする」

 笑んだ彼女の唇から、光の花が零れています。私は微笑み返し、右手に持っていた紙飛行機を思い切り、夜の海へと投げました。

 紙飛行機はふわふわ飛んで、昏い波間に呑まれて、消えて。


 海は空と繋がっています。


 私の手紙はきっと、空の誰かに届くでしょう。


 たまに落ちてくる星屑は、空の誰かがこちらへ投げた贈り物だと、昔学校で教わりました。頬張ると、空の誰かが伝えたい想いや景色が、頭に流れ込んできます。

 星屑がまた落ちてきました。

 私はそれを受け止めて、そぅっと口へ。

 青、朱、紫苑、金………たくさんの色が溶けた夕空―――下校のチャイム―――――、

 知らず閉じていた瞼を開けました。

 灰色の砂浜と濃紺の海が、寂しく辺りに広がっています。

 彼女の姿はもうどこにも見当たらず、その時になってようやっと、彼女もまた星屑が見せた幻だったのだと気がついたのです。

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