2022/03/27 『旅をする』完結しました
旅をする──ドラゴンの少女と巡る異世界
https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451
先日、無事に完結しました。
こんなに時間がかかったのは、ペースがゆっくりだったからだったり、合間合間に一ヶ月休んだりしてたからだったり、ひっくるめて言えば書くのが遅かったから……。
でも、書き終わってみれば、こんなペースもこのお話らしかったのかもな、と思っています。て書くと言い訳っぽいですけど。
ゆっくりと時間をかけて世界を旅してまわるお話なので、きっとこれだけの時間が必要だったのかな、とも思います。
地図のあるお話が書きたいとか、民話や神話を持った人たちだとか、その土地の生活感、言葉の違いに表れる考え方の違い、知識の有無で違う解像度で見える面白さ、物語の中に登場する謎料理への憧れ、人のしたたかさやその愛嬌、それから美少女に振り回される男子とか、身体的な距離感がバグっているのになかなか恋愛にはならない関係も含めて、自分の好きなものをこれでもかと詰め込んだお話でした。
中でも強度のある世界が書きたかった気はします。懐が深くて、広くて、変わらずに続いてゆく世界が書けていると嬉しいです。
完結した辺りで、PVが10Kを超えて星の数も100を超えました。自分の好きなものをただただぶち込んだ、決して短いとは言えないこのお話を読んでいただけて、こうして評価していただけて、とても嬉しいです。
読み途中の方も、とても嬉しいです。時折読んでいる気配を感じると、あの辺りかとその土地のことを思い出して懐かしい気持ちになっています。のんびりとした旅ですので、ゆっくりとご覧いただければ嬉しいです。
書き始めの頃は、一話五分程度で読めるようにと考えていました。一章が六話とガイドという構成なので、月曜から土曜まで毎日五分番組を見るような感じで一話ずつ、日曜日はガイドでちょっとお休み、というイメージです。後半、一話の文字数が長くなっていって、ちょっと五分で読める量を超えがちになってしまったんですけど。
ですので、そのくらいの、ぼんやり異国の景色を眺めるくらいの気分でどうぞ。その中で、ここで暮らしている人たちは一体どんな人たちなんだろうと思ったら、ガイドや番外編もあります。それぞれの土地のことは、本編で書ききれなかった部分も多いので、また何か書きたいなと思ったりしています。
改めてになりますが、本当にありがとうございます。最後まで書けて良かったなと思います。
ここから先、ちょっとネタバレを含みます。
ぐだぐだと自作語りをするので、興醒めなものになっているかも……余計なことは知らなくて良いとかあれば、以降は読まずにおいてください。
物語の終わり、特に長い物語の終わりは最初と対になっているのがもうどうしようもなく好みなので、このお話もそれです。
進んでいったものが折り返してぱたんと閉じるとか。あるいは、螺旋状にぐるりと輪になって、最初の場所に戻ってくるけど一段高くなっているとか。
このお話の最初のシーン、ユーヤとドラゴンの姿のシルと出会うシーンを書いたときから、ラストシーンはこの繰り返しになると思っていました。いや、もう、ほんとこれはわたしの好みなんですけど。
幻覚レビューで書いた気がするんですけど、「最初と同じことをしているのに成長したせいで意味合いが重くなっている」繰り返しのシーンが好きなんですよ。ほんともう、そういうのがどうしようもなく好きです。
そのラストシーンのためには、何もわからない状態で出会って成り行きで旅をした二人が、最後にもう一度出会い直す必要がある。そのためには、何もわからずにユーヤに連れて行かれる、ユーヤについてゆくだけだったシルが成長して自立する必要があると思っていました。シルはユーヤと対等になって、ユーヤがいなくても自分で生きていくことができるようになって、その状態になってもユーヤを選べるのか、というのがシルの課題でした。
ユーヤの課題は自分で選ぶことでした。ずっとシルのために動いてきた彼ですが、裏を返せばそれは自分で選ばずに全部シルに選ばせていたということです。シルの好きなもの、シルのやりたいこと、シルに心配をさせないように。それは一見シルのためを思ってやってきたことですが、ユーヤは自分の自信のなさを「シルを縛っちゃいけない」という気持ちでごまかしていた部分もあります。
自立したシルを前に、言葉も通じなくて自分にできることは何もないかもしれないという状態になって、それでも「一緒にいたい」ってシルに伝えることが、彼の成長だったと思います。
なので、二人の言葉が通じなくなることも、割と最初の頃からイメージとしてありました。本当にその状態にするのかどうか、どのタイミングでそうなるのかは、書きながらかなり揺らいでいましたが。
シルがシルにとって未知の言葉を学んで少しだけでも話せるようになったのは、この時のためでもありました。そういう意味でも、シルの成長は必要なことでした。
そして、「自分はうまく踊れないから」と踊らないでいたユーヤがシルと一緒に踊って、踊りと歌をシルとの共通言語にすることも、意味合いは同じです。
二人がここまで成長してなければ、言葉が通じなくなった二人は誰か仲介がいなければ意思疎通ができない状態のままだっただろうと思います。
逆に、最初の予定とかなり違ってしまったのはレキさんです。
彼は最初の想定では、過去の事情をはっきりと知っている人でした。それで、ユーヤとシルに全部を種明かしするための存在でした。
でもなんだかあれこれ考えているうちに、なんだか説明のためだけにひっそりとレキウレシュラで二人を待つレキさんが可哀想な気がしてきてしまって。それに、ユーヤがこの世界に来てシルを助けることができたのはどうしてかとか、そもそもドラゴンがどうして閉じ込められなければいけなかったのかとか、説明をしても「種明かし」以上の面白さがないなあ、と思ってしまったのですよね。
なんというか、作者の事情を登場人物に説明させているだけだな、というか。
そうやって考えているうちに、一人でずっと誰かを待っていたレキさんが、ただ優しくその誰かを受け入れることができるだろうか、みたいなことをふと思ってしまったのでした。
このお話を書くときに、人の悪意で転がすお話はやめようと思って書き始めました。あと、旅先でトラブルに出会ってそれを解決するとか、そういうのもやめようと思ってました。
ユーヤが出会って解決できるトラブルは、多分旅先でなくても起こり得るし、行き先に関係なく発生する可能性があるものだろうな、と思うのです。例えばわかりやすいのは「財布を落とした、盗まれた」みたいなやつですね。わたしが書きたいのはその世界、土地なので、せっかく書くならその土地ならではのことを書きたい。
一方で、その土地ならではのトラブルは、きっと余所者が解決できるものじゃないような気がします。その土地に暮らす人たちの価値観、宗教観、長年そこで暮らしているからこそのしがらみ。そういったことを何も知らない突然現れた旅人が解決するのって、わたしが書きたいものじゃないなあ、と。
そんな理由で、ユーヤから見る世界はとても優しいです。それに、ユーヤはその土地の誰の事情も深く知らないし、何もわからないまま通り過ぎていきます。それはリアルではないかもしれないし、物語のパターンからは外れているかもしれないけど、わたしが書きたいのは旅番組だからそれで良いんだって気持ちで書いていました。
ただ、もしかしたら、ユーヤの視線から省かれたそういう優しくない部分をレキさんが背負ってしまうことになったのかも、とは思いました。
レキさんはレキさんで知識が偏ったまま閉じ込められてしまっていたので、これから世界を知っていく中で、いろいろと変わっていくと思います。
そのきっかけはきっと、シルが話した「旅で見付けた素敵なもの」と、ユーヤが見せた地図なんじゃないかな、という気がしています。本人たちは自覚していないのですけれども。
そういえば、ユーヤとシルは能動的に人の事情に首を突っ込んだり解決したりはしませんが、結果的に土地の人たちに何かしらの影響を与えていると思います。
いつまで書いても物足りない気がしてしまうのは、自分の中でまだ落ち着かない寂しい気持ちがあるからな気がします。
なんだかまとまらないままですが、とりあえず今日はここまで。
ここまで読んでくださった方、気持ちの整理にお付き合いありがとうございます。
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