第84話 女子旅の続き
レイたち女三人は露天風呂を満喫して夕食までの時間を旅館内の散策で時間を潰し、食事処に向かった。
部屋ごとに個室での本格的な和食懐石に三人もとテンションが上がっている。食後にもう一回温泉に入るために三人ともお酒は一杯だけにして食事を楽しむ。
「レイさんの旦那様にお礼言わないと」
レイは一瞬、葵が誰のことを言っているのか理解できなかった。
「あぁ。ヨンね。晩御飯の後だったら帰ってきていると思うから電話する」
「結婚した実感が湧かない?新婚生活はどうしてるの?」
舞子が笑う。
「私も興味ある。新一とカズくんがいる中で、どうしているのかなと思ってた」
「えっ?普通の新婚生活だよ。今までと変わらないけど」
レイの答えに二人は目を見開く。
「新婚生活が今までと変わらないのが普通じゃないから」
「レイさんのは普通の新婚カップルの生活とは違うから」
舞子と葵は同時に突っ込んだ。
「ごめん。二人とも最後のからしか、わからなかった。でも異議ありってことはわかったから」
レイが笑うと葵と舞子は呆れて何も言えないようだった。
「葵さん、後で詰問しましょう」
舞子がニイと同じような、いたずらっ子ぽい笑顔を見せた。
食事を終え部屋に戻ると、布団が引いてあった。
「最高だね」
布団に寝転んだレイと舞子を葵が「若いわね」と言って笑った。
レイは横になったままスマホを見る。20時だった。
ヨンが帰ってきているか時間的に微妙なところだが、迷わず電話をした。ヨンは家にいてワンコールで電話に出た。
ヨンが話している後ろからイチが「楽しんで!」と叫んでいた。
ヨンの声を聞いたレイは自分が安心していることに気が付いた。
女性だけの温泉は楽しい。だけどヨンと会いたいと思った。
気の合う女友達との美味しい料理に温泉だ。楽しくないはずはない。
銭湯に行っても男三人は楽しそうなのに、当然レイは一人だ。湯舟に入りながらお喋りをする。夢が一つかなった。
でも、やっぱり寝る時はヨンの隣で寝たいと思う。
ヨンは「イチもミータも大丈夫だから、思い切り楽しんでこい。旅行の話は明日帰ったらゆっくり聞いてやるから」と言って早々に電話を切ってしまった。
レイの嬉しそうな顔を見た葵が呟いた。
「レイさんが言うように普通の新婚カップルなのかもね」
「でも電話の感じだと、友達の時と変わらないじゃん」
「私たちはラブラブなんだって。毎日おはようとおやすみのキスもしてるし」
舞子にレイは真面目に言った。
「えっ。冗談でも怖い。ラブラブって言葉で身震いしそうになった」
舞子に冗談だと思われてると、レイは苦笑した。
確かに付き合う前の友達関係との違いは他人にはわからないかもしれない。でも結婚によってレイは精神的にとても安定した。
イチが大人になって自立する時は本当に一人になるのだと、覚悟をしていた。覚悟はしても実際は怖かった。
でも、今はヨンがいて、大人になっていくイチを一緒に見守ってくれている。
ヨンはずっと私の側にいてくれる。そう思えるだけで気持ちが落ち着くのだ。
これは態度では示せない。
舞子がわざとらしく咳払いをして葵を見て頷いた。
「詰問タイムです」
葵はそう言った後、レイを見た。
「うん、何?」
「レイさん、新婚夫婦としての。その……生活はどうですか?」
「楽しいよ」
レイは布団の上で大きく伸びをした。
「葵さん、レイにはストレートに言わないと。エッチ、セックス、まぐわる。夜の営みはどうしてんの?まさかプラトニック?」
「こう見えても新婚だよ。たいてい夜じゃなくて朝だけど」
舞子の言葉に恥ずかしがる様子もなくレイは親指を立てた。
「本当か冗談か判断できない」
「寝る前にもう一度温泉入りましょう」
舞子と葵は詰問を諦め、温泉に行く用意を始めた。
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