第66話 女子会

 連休も終わり、ニイとヨンはまた仕事に追われる日々が戻ってきた。イチも帰って来るのが遅くレイはミータと二人で過ごす日が増えていた。


 ニイは葵と晴れて恋人として付き合うようになり精神的に安定しているようだ。以前のようにスマホを片手にウロウロすることはなくなった。

 イチは舞子のことを誰にも相談できず秘めた恋心に一喜一憂している。

 ヨンとレイは毎日一緒の部屋で寝ている。ヨンの予想通り、ニイもイチもそのことを全く気にすることなく受け入れた。ヨンの願い通り、レイは「おはよう」と「おやすみ」のキスをするようになった。



*******

 


 金曜日15時。

 レイは仕事が一区切りついたところでコーヒーを飲もうかとパソコンから目をあげ身体を伸ばした。

 「お疲れ様です」

 また仕事の依頼だ。レイは直ぐによそ行きの顔で振り向いた。少し驚いたがすぐに笑顔になった。


 「葵さん。お久しぶりです」

 「レイさんの真面目な顔を初めて見ました」

 葵とは同じ会社だがフロアが違うためまず会うことがない。葵はこのフロアの会議室で打ち合わせから出てきたところのようだ。


 レイと葵が会うのは久しぶりだ。レイは葵と雑談をしていてひらめいた。

 「猫かぶってますから。それより今日、空いてます?」

 「ええ。レイさんに誘われる時はいつもナンパみたい」

 葵は笑った。レイは葵の雰囲気が変わったと思った。前より気さくな感じがした。

 「うちの男ども最近帰りが遅いから、うちで飲みませんか?会わせたい人もいるし」

 

 レイと葵の会話が耳に入ってしまった後輩は驚きつい聞いてしまった。

 「レイさん、会社にお友達がいたんですね」

 「兄の婚約者」

 葵はびっくりしてレイの顔を見た。

 「知っていたんですか?」

 「ニイの態度で。ゴールデンウイークからですよね」

 葵は顔を真っ赤にして「じゃ、仕事が終わったら連絡します」と逃げるように去っていった。その後、レイは直ぐにメールをした。

 


 退社後、レイと葵は高級スーパーで総菜を買い込み家に戻った。

 先日、レイアウトを変えたリビングに食事をセットしていった。レイがグラスを三つテーブルに置く。

 「レイさん。三人ですか?」

 レイは「サプライズです」と笑った。

 

 しばらくして玄関のチャイムが鳴り「遅くなった」と舞子が入ってきた。

 「葵さん、ニイの妹です」レイが舞子を紹介した。

 「舞子です。兄がお世話になっております」

 呆気にとられた葵に舞子はにこやかに挨拶をした。



 週始めに、レイは舞子から連絡をもらっていた。

 舞子が大阪から戻ってきてから、二人は定期的に食事に行くようになっていて、この金曜の夜に二人で飲む約束をしていた。

 レイが会社で葵と会ったあとすぐ舞子に連絡したのだ。



 舞子が持ってきた白ワインで乾杯した後、雑談しているうちに敬語ではなくなって三人とも打ち解けたていた。ミータは三人の周りをウロウロしていたが、レイの膝の上で丸くなった。

 葵が舞子からニイとのことで質問責めにあっていた。出会いからはじまりやっとプロポーズの話まできたところだ。

 「ニイにいつプロポーズされたの?」

 「ゴールデンウイークに」

 葵は顔が真っ赤だ。

 「そのころから毎朝ニイの鼻歌を聞かされてる」

 レイの暴露に舞子は爆笑した。

 

 「ちょうど半分。ニイが私と暮らしていた年数とレイと暮らしていた年数が同じじゃない?」舞子はレイを見た。

 「そんなに経つんだ。ニイと舞は仲いいから、そんな長い感じがしない」

 「ニイとは喧嘩ばかりしてたから仲良くなったのは離れて暮らすようになってからだよ。たまに会うとお互い我慢するからね」

 「新一は妹が二人いるんだ」

 レイと舞子の様子に葵はつぶやいていた。


 「あと弟もいるの」レイが言った時、イチが帰ってきた。

 イチは「舞ちゃんだ。来てたんだ」と嬉しそうに笑った。

 葵にイチを紹介する。イチに「ニイの好きな人だ」と言われた葵はまた顔を赤くした。




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