第41話 正月2日目
レイ、イチ、ヨンは正月2日目の朝もゆったりと過ごしていた。食後、リビングに入るとヨンはすぐにテレビをつけた。箱根駅伝が始まっていた。
3人とも運動をするのも好きだが、見るのも好きだった。特にヨンはスポーツ全般的に何でも見る。
ヨンはテレビの真前のソファーに陣取りみかんを食べ、レイはその隣で本を読んでいた。
「東京から川崎まで一時間ちょっとで行けるんだね。俺もみかん、食べたい」
イチがミータと遊びながらヨンに話しかけた。
「勘違いするな。鍛えられた一部の人間だけだ」
ヨンはイチにみかんを投げた。
「ヨンは走るの好きなのにマラソンは挑戦しようと思わないの?」
「俺は気が短いから性格的に向いてない。運動不足解消に走るのも長くて7キロだ。イチの方が性格的に向いているんじゃないか?」
「キツそうなのに一人で走るなんて、そんな根性ない」
「確かに。寂しくて死ぬかもな」
「そんなに寂しがりじゃない」
「そうか?」ヨンはからかうのをやめない。
「ところでヨン、レイがソファーから落ちそうだけど」
レイを見るとうたた寝をして座ったまま身体が左右に揺れていた。ヨンはレイを自分に寄りかからせ、ひざ掛けを掛けてやった。
「お姫様抱っこしてベッドに連れて行かないの?」
今度はイチがからかってきた。
「重くてできない。背負ってなら運べるけどな」
ヨンはあえて普通に答える。
「一緒に運ぶ?」
「どうやって?」
「ヨンが両脇の下から手を入れて持ち上げたら俺が足を持つ」
「まるで死体を運ぶ共犯者みたいじゃないか」
「だって、ヨンの風貌が殺し屋ぽいもん」
笑いを堪えてたイチが吹き出し、ヨンも我慢出来ずに笑った。レイは笑い声ぐらいでは起きなかった。
14時頃、ニイが帰ってきた。
「明けましておめでとう!今年も恒例行事を始めるか」
ニイは長い休暇でストレス発散できたようで溌剌としていた。
ヨンとレイはニイに催促されダイニングのテーブル席についた。イチも四人分のコーヒーを淹れて遅れてテーブルについた。
毎年恒例行事の最初はこの家での収支報告だ。
社会人3人が毎月入れているお金は専用口座を作って管理している。そこから食費や光熱費などを支払っているのだ。カードを作ってポイントを利用したり、日用品や調味料などはネットを利用するなど節約できることはしている。
ニイが支払い項目別の年推移をグラフにしてパソコンで見せた。節約と家事負担軽減の対策とその効果がわかるようにグラフで示してある。ニイは職業を生かし、この家の財務経理を管理してくれている。
月々の支払後の余剰金は1年間貯めて、この収支報告の際に節約になるものや家事負担を軽減するためのものを購入している。
これまで、コーヒーメーカーを買い、シャワーヘッドを節水できるものに替え、ペットボトルの水の購入はやめて浄水器を付けた。昨年は一階の10年以上使っていたエアコンを買い換えた。ミータのために一年中使用しているため節電率の高くて掃除の楽なものにしたのだ。
「今年は食器洗い機かお掃除ロボットのどちらかを買おうと思うけど、問題がそれぞれある。食器洗い機は置く場所を確保できるか。お掃除ロボットはミータが怖がるかも知れん」
ニイが皆の意見を待った。
「食器洗い機がいいけど、大きさってどのくらい?」
レイの質問にニイがホームページを確認する。購入候補の製品のいくつかの大きさを読み上げるとイチが新聞紙で縦横の大きさを作ってキッチンに向かった。
「置き場がない。お掃除ロボットにしよう」
「ミータは慣れるだろう」
ヨンの発言にニイがお掃除ロボットをネットで注文した。
「ついでに髭剃りも買ってやろうか?」
ヨンの無精ひげに何も言わなかったニイがレイに言った。
「何で?めっちゃカッコイイじゃん」レイは何でもないように言った。
「あれを怖がらないなんて、目が悪いか変わってるかどちらかだ」イチが呟く。
「レイの趣味か」ニイはヨンを見て笑った。
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