第33話 帰宅
「レイちゃんみたいな子にお嫁さんにきてほしいわ。アタックしたら?」
優斗の祖母が優斗の父親に言う。
「アタックって、母さん古い。それに、そんな事言ったら翔に殺されるよ。レイちゃんは翔の彼女だ」
「何で知ってるの?」
「見たらわかるだろう」
ヨンとレイに皆んなの視線が集まった。ちょうどヨンがレイにペットボトルの蓋を開けて水を渡したところだった。
皆んなの視線を受け、二人は何事かと見るが誰も答えない。
「なんだペットボトルの蓋を開けてあげることが付き合ってるんだったら、あの二人は出会った時から付き合ってることになるよ」
ヨンの弟が言った。
帰り道、レイが持っていた鞄をヨンが自然に受け取り歩く姿を後ろから見ていた面々は、やはり付き合っているのではないかと思っていた。
ヨンの祖母は九十六歳という長寿を全うした。そのためか、お通夜もお葬式も厳かとはほど遠く、賑やかなものになっていた。
レイはお葬式が終わると一人で東京の家に帰って行った。ヨンの両親はあと数日は豊橋に残る予定だが、ヨン達兄弟が東京に戻るのは今日の夜になるだろう。
夜遅くヨンが帰ってくるのをレイは寝ないで待っていた。ヨンはレイが一人でいるのを確かめ、ぎゅっと強く抱きしめた。
「ただいま」ヨンはレイに微笑んだ。
「おかえり」
やっと抱きしめることができて、レイの温もりを感じ安心した。
やっぱり家は落ち着く。つくづく実感する。
毎日会っているのに今夜は特に離れたくない。風呂からあがりレイの部屋を覗き込んだ。レイは既に眠りについている。どんな状況でもすぐに寝れるのは一種の才能だと思いながらレイを見つめる。レイにキスをして視線を感じたベッドの端を見るとミータと目があった。
「誰にも言うなよ」
ヨンはの言葉にミータが「ミャー」と鳴いて返事をした。
その週はレイもヨンも急に会社を休んだため残業の日々だった。
金曜日、会社を出た時は長い1週間がようやく終わったとホッとした。レイが家のキッチンのカレンダーを見るとヨンの字で「土曜日夜、打ち上げ。19時にリビング集合」の付箋が貼ってあり、ニイとイチの字でその空欄部分に「OK」と書き込んであった。
土曜の朝9時、レイは早々にバイトに行くイチを送り出した。ニイはそのすぐ後に起きて来て張り切って区民プールに行った。先日のレイにもかなり体力が劣っていたことが発覚して、それにショックを受け、また運動を始めたのだ。プールに行ってランチをして夕方頃にぷらっと帰って来るのがニイの土曜日の過ごし方になっている。
レイは洗濯物を干してキッチンに入る。リビングを覗くとヨンが眠そうな顔でソファーに座ってミータを撫でていた。俯いているので寝てるようにも見える。
「起きてる?」
「うん。おはよう。イチとニイは?」
「イチはバイトに行った。ニイは体力作り。プールに行った」
「そっか。ニイはあれから続いているな」
ニイは意外とコツコツやるタイプなんだよなと思っていると、レイがエプロンを外してリビングに入ってきた。
「おー格好いいね」
レイはヨンの前に立って薄っすらと無精ひげがあるヨンの顎を触った。
「こういうのが好みか?」
「私は男くさい男がタイプなの」
「ふーん。ニイに惚れないわけだ」
「もう少し寝たら?お昼ごろ起こしてあげるよ」
ヨンは大きく伸びをして立ち上がるとレイの手を握ってレイの部屋に連れて行く。
「二人きりのときは一緒にいよう」
部屋にはいるとヨンはレイを抱きしめた。相変わらず力強い。
「意外と元気あるんだ」
「今は茶化さないでくれ」
大きく深呼吸をするヨンをレイは見つめた。
「レイ、ずっと好きだった。今も好きだ」
レイは驚いてヨンを見つめたまま言葉が出ない。だから背伸びをして耳まで顔を赤くしているヨンの首に両手をまわし軽いキスをした。
しばらくレイにキスをされていたが、ヨンは我慢できずレイの腰に回した腕に力をこめて引き寄せ、相変わらず熱いキスをかえした。
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