第23話 二人きりの夜の続き

 翌朝、ヨンはミータに顎をかじられ、目を覚ました。

 目を開けるとミータがヨンの顔を覗き込んでいた。隣にレイはいなかった。


 「おはよう。そろそろ起きて」

 起こしに来たレイはデニムにパーカー姿だ。

 「レイ、会社行かないのか?」

 「私は今日有休」

 「いいな。俺も休むかな」

 「馬鹿言ってないで早く用意して」

 レイはシーツを引っ張った。


 一時間後、レイはヨンを送り出し四人分のシーツと枕カバーを屋上に干していた。



*******



 ニイとイチがいない一週間はあっという間に過ぎた。

 レイはヨンが帰るころには食事も入浴も終え寝るだけの状態のことが多かった。ヨンは「俺の部屋で一緒に寝よう」「俺の部屋で待ってて」とは下心が見えすぎていて、とても言えなかった。だから遅く帰って来ても必ずレイの部屋で一緒に寝た。

 ヨンは寝る時にレイのベッドに潜り込み、レイはヨンが隣で寝ることにを受け入れていた。二人はベッドの中で少し会話をするが睡魔には勝てなかった。



 金曜日、ヨンは仕事を早く終わらせ家路を急ぐ。

 家に帰ると風呂から出たばかりのレイが夕食の準備をしていた。

 「今日は早いね。先にご飯食べる?」

 「うん。そう思って急いで帰って来た」

 レイは味噌汁と冷蔵庫から豚肉を出し生姜焼きを作っていた。

 ヨンは大皿に作り置きのおかずの人参しりしり,ピーマンと茄子のみそ炒め、キャベツの酢漬けを盛り付けテーブルに運んで、ご飯をレンジで温めた。

 二人そろって食事をするのは月曜日以来だった。

 

 食事が終わりヨンが風呂から出ると、レイはダイニングでミータと猫じゃらしで遊んでいた。ミータが満足し遊び疲れキャットタワーで寝てしまうと、ヨンとレイの間に気まずい雰囲気が漂う。

 「そんなに緊張しないでくれ。緊張が移る」ヨンが冗談めかして言う。

 「今日はヨンの部屋で寝ようか」レイは勇気をだしてみた。

 「どうした?」レイの言葉にヨンは耳を疑い、思わず呟く。

 「そうしたそうだったから。嫌ならいいけど」

 「嫌じゃない」

 ヨンは急いでレイの手を握り自分の部屋まで連れて行った。二階までの短い距離で心変わりをされないように、しっかりと握って。

 

  

 真っ暗な部屋に入ると電気をつけようとするレイを制してヨンはレイを長い間強く抱きしめる。そして今回も押し付けるような力任せのキスをした。ヨンの腰のあたりのTシャツを掴んでいるレイの手が震えていた。

 ヨンは力を抜き深呼吸をして、手でレイの頬を包みこみ、もう一度キスをした。激しいキスとは違いヨンの手は優しかった。

 レイはヨンの腰に手をまわし思わず吐息を漏らす。

 「そんな声を出されると、抑えられなくなる」

 「抑える気あった?」レイの声はかすれていた。

 

 レイはヨンに強く抱きしめられた時、その必死さに切ない感情を感じ取り泣きそうになってしまった。ヨンは抱きしめる時もキスする時も全力でぶつけてくる。だけど荒々しさはない。私を大切に思ってくれていることが痛いほどわかった。

 でもレイは好きな人に愛されている喜びに浸る余裕はなかった。あまりにも官能的で。

 ヨンは180センチの長身で今でも泳いだりトレーニングをしているため筋肉質でがっちりした体形だ。だから手もゴツゴツとした硬いものだと勝手に思っていた。それが、大きいがぷっくりとした手なのだ。

 その手で頬を撫でられると、脳まで鳥肌が立つようだった。


 ヨンはレイを抱きしめた時レイの身体が少し震えたので一瞬泣くのではないかと思った。レイの顔を見ると潤んだ大きな瞳で真っ直ぐ見つめ返され、気持ちが一気に高ぶってしまった。抱きしめた時もキスした時もレイの反応が愛おしく、欲情を抑えきれなかった。


 ヨンはレイをベッドに座らせそのまま押し倒し、正面からレイの顔を見た。

 「いくぞ」

 「うん」

 レイの返事を聞いて、ヨンは着ていたTシャツを脱ぎ捨て、レイのパジャマのボタンに手をかけた。

 

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