第22話 大荷物と強敵
「そんなもんだな、乾燥は自分でやってくれ」
もう制御不能で焦がしてしまうことはないのだ。
魔物の血は魔物以外の生き物にとっては毒なんだそうな、
失明したり衰弱したりするため、返り血を浴びることはよくないんだそう。
そういえば猿から負った傷も毒に侵されていると言われたな。
これからはなるべく魔法を使っていきたい。
洞窟内部は補強もしてあって人工的に掘られたということがわかる。
トータル2時間くらい使ってしまったが、あまり分岐もなくほぼ1本道で階段に着き、一休みすることもなく階段を下りて2階に降りる。
2階は景色は変わらないが通路の分岐があるようで降りてすぐに二手に分かれていた。
「さて、マッピングはどうしようか」
というとロペスはキザったらしくやれやれというように肩をすくめてから言った。
「そんなのはこんなダンジョンではいらないさ、やりたいなら止めないけどね」
私の意見を聞く前に一人で左手に向かって歩き出した。
マッピング用のメモ帳と言っても小さく作ってあるだけで方眼紙があるわけじゃなかった。
距離の感覚なんてわからないので大体でメモをしながら歩いていく。
今度だれかにやり方を教えてもらいたい。
勝手に戦って勝手に進んでもらうロペスの後ろをついていきながら通路をメモする。
イレーネには脇道がないか見てもらうのでおそらく見落としはないだろう。
私が最大光量で
欠点としては
しかしここでは役に立つので積極的に使っていく。
おかげでガチガチに力が入っていたイレーネも、段々と力まずに動けるようになってきた。
2階は分岐はあってもそこまで意地悪な作りになっていない様だった。
しばらくすすむとロペスが立ち止まり剣に手をかけた。
「カオル、イレーネ、こいつは光は効かない、剣で切ってもすぐに再生するから魔法でやるんだ」
どうして剣を抜いたと思ったが、それは曲がり角から現れた魔物の姿を見てわかった。
これがローパーだろう。
円筒形の本体から出る多数の触手がうねうねと動き、身をよじるようにして現れた。
恐らく食事中なのだろう。
触手に掴まれたらどうなるのだろうか、興味はあるが試してみるわけにはいかない。
「
出してから気づいたが洞窟の中で使っても大丈夫だろうか。
だめだったらごめん、と心の中で謝りながら出現させた6本の
ローパーはよく燃えるようでじゅうじゅうと音を立てひどい臭いをまき散らしながら苦し気にうねり始める。
なんだか大丈夫そうなのでさっきより魔力を込めて
さっきの物より白く光る炎の矢を6本出現させ1本ずつ使って威力を確かめることにした。
「まず1発!」
気合と共に1本飛ばすとまっすぐ飛んで行った
炭化された断面は元に戻ることなくそのまま触手が生えてきて、リンゴマークのロゴの噛み跡から芋虫が生えてきたようだと思うとちょっと面白かった。
残りの
「剣は初心者だが魔法は素晴らしいな、なに、すぐに追い越して見せるさ」
ロペスが爽やかに言った。
ちなみに、ローパーの回収部位は触手だそうだ。
初心者が行くようなダンジョンにしかいない割に、難易度が高いのでそこそこ高く売れるらしい。
今回は焼き尽くしてしまったので何一つ回収できないが。
次にローパーと遭遇した時は3人で囲んで触手だけを狙い、ある程度量が取れた所で焼き殺した。
回収するときも触手には触れないので、汚いものを扱うように剣先で掃くように袋に放り込んだ。
そこでふと思ったのだが、土くれの悪魔は1階にしかでないようで2階には一切出現しなかった。
チュートリアルダンジョンならこんなもんなのだろう。
2階からの下りの階段を見つけた時にはゴブリンの持っていたナイフ4本、大振りのナイフ3本、鉈2本、棍棒5本回収し、その重さに辟易した。
しかもその上、水分たっぷりなローパーの触手を持っているのだ。
3人で分担してもギリギリだった。
ロペスは実家からの支援があまりないと言っていたが、イレーネや私ほど無補給ではないようなので気合で全部持って帰ろうとした私とイレーネに呆れていた。
イレーネも貴族だったはずだが、私と変わらないレベルなのはどうしてなのだろうか、いつか理由が聞けたらいいが。
相談した結果、棍棒は木なのでいらないだろうという結論に至った。
次捨てるのは金属の量的にナイフ、大振りのナイフとなるだろう。
安いものから捨てていく。
3階に降りる前に荷物を降ろし、ひとまず休憩してから降りることにした。
イレーネの消耗も見た目よりありそうだし、私も元の体の感覚で動いてしまうので思ったより疲労してそうな気がする。
2階の滞在時間はもうわからない。
あっという間に1時間くらいでたどり着いた気もするし、3時間くらいかかってたどり着いた気もする。
このペースは今日中に終われるペースなのか判断がつかないのが気を焦らせた。
あの重い荷物を持って3階に降りてきた。
この荷物があるとマッピングなんて言っていられないというのは誤算だった。
2階も後半はほとんどマッピングできておらず、ロペスのいう通りになってしまったのが悔しい。
3階は広めの通路が直線に伸び、行き止まりに両開きの金属製の扉があり、チュートリアルの最後はボス戦か。と思い扉の前に荷物を置いて扉を開けて抜剣し、恐る恐る中に入り中にいる物の姿を確認する。
大人の男性サイズの大き目の
大人の大きさで小鬼とはどうなのか。
「カオル、剣だけで勝とうと思うなよ、あと
「イレーネ、肩に力を入れすぎるなよ」
ロペスが声をかけそれぞれの間隔を広くとった。
大きい
「
ギラギラと光る炎の矢を見た大きい
速攻をかけるために強めに発動したら集中攻撃を受けるとは思わなかった。
少し焦りながらロペスとイレーネには取り巻きを片付けた後で助けてもらえることを期待する。
最大出力で
頭を狙って放たれた炎の矢は取り巻きの頭を蒸発させ、大きい
「使う時は言えと言っただろう!」
非難の声を上げながらロペスが支援にきてくれた。
イレーネはまだ頑張っているらしい、助けには行けないががんばれイレーネ。
「もう盾になる
ロペスがいうので、確かに、と思い
とどめと思い気が抜けてしまったか本数も少ないし、赤く光る普通の炎の矢だった。
大きい
大きい
「カオル!気を抜くな!」
ロペスは金棒と打ち合うと剣が持たないため、カバーに入れず大きい
そのころイレーネが
下手に参加してそちらに気が向いてしまっては困るので今はおとなしくしてほしい。
「煩わしい虫の羽音!」
強めに発動したそれは、もうんもうんと唸りながら
その隙にロペスが後ろから心臓を狙って剣を突きさした。
刺されたことに気づいた
今度はこちらに背を向けたので
間髪入れずに10本の炎の矢を
あちこち焦がしたが普通の
危なかったな、と言ってロペスに親指を立てて見せる。
ロペスは剣を杖代わりにしてへたり込んでそれに答えてくれた。
「カオル、大丈夫?」
離れていたイレーネがやってきて肩を支えてくれた。
「イレーネこそ平気?」
「あたしは下がってみてただけだからね」
そう言って表情を曇らせた。
「これから一緒にがんばろう?」
大きい
イレーネと二人だったらどこにあるかわからなくて右往左往していただろう。
「こいつは
「おそらく変異個体か別な物が配置されたんだろう」
とロペスが言った。
大きい
階段を上って地下2階から1階の辺りに差し掛かった時に気づいたが、身体強化を使えば重い荷物も楽に運べるということだった。
驚くほど体が軽く、重い荷物があっても1段飛ばしで走っていけるくらい楽だった。
地上に出た私達は思ったより早く攻略できたようで、宵の口だった。
戦利品を換金するためにハンター協会へ向かう。
学校の中に支店があってもよさそうなのにと思いながら、軽い足取りで街の入り口側に向かう。
そんなに前のことではないはずなのに、街の入り口側は臭いということを忘れていた。
3人で顔をしかめて小走りでハンター協会に向かった。
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