第16話 魔力量と魔力操作

 午後の授業、といってもうまくいかない魔力操作をするだけだが、

 今日はなんだか班のみんなが優しかった。


 特にロペスが気色悪かった。


 なんだ、手を焼かれて泣いてしまったせいか。


 そういえば確かにそういうやつっぽかった、と思い出した。


 大地の女神を思わせる美しい髪がどうとか言いながら左手を取り

 やたらとエスコートしようとしてくる。


 ごつごつした自分より体温が高くて大きい手、というのは

 記憶にないな、と思いながら


「調子のんな」といいつつ重ねられた手をぴしゃり、と叩く。

 ははは、つれないじゃないかと言いながらロペスが離れていった。


 その後も魔力を出したりひっこめたり伸ばしたりしてみたが魔力は離れなかった。


 右手で伸ばして左手でちぎってみると左手に張り付いて離れない。

 熱風アレ・カエンテが手元しか効果がないのはこれができないからなのかな、と

 ぼーっと考えながら試行錯誤していると、みんなが私を見ていた。


 ん?と思って隣にいるペドロの顔を見てみると

「いやあ、ずいぶんの量の魔力だしてるなぁって」と、ペドロが引いていた。


「えぇ、そんな馬鹿な」と言って見回してみるとみんなそんなに出していなかった。


 夢中になりすぎた、としょんぼりすると

 釣られてか魔力も萎びているように感じた。


 気を取り直して揉んだり伸ばしたりしていると

 なんだか他のまだできていなかった人もなんとなくつかんだ様子で

 一緒に切り離す練習に入っていた。


 できるということを認識する、それが大事なのかもしれない。


 ではできないと思いながら試行錯誤したところで

 無駄な努力になりそうだ、と思った。


 なんとかできてる様を見られないものか、とできそうな人に目をやると

 今日もルイス教官は二日酔いで机に伏しているのだった。


「ルイス教官、起きてください、大事な用です。」


 座ったまま魔力を伸ばしてルイス教官の周りでうねうねさせた。


 1本でうねうねしたところ邪魔くさそうに振り払う、

 触れられた所が霧散してしまうのできっとうねうねに攻撃を

 しかけているのだろう。


 なので両手を使って両耳を狙ってうねうねさせてみる。


 片腕を枕にしているので片手で振り払おうとするが

 常にどちらかが耳をうねうねするのでついには根負けした。


「睡眠中だぞ!」


 ガバっと起き上がり机をたたいて叫んだ。


「その前に講義中です!」うねうねをぶつけて叫んだ。


「うざったいし気持ち悪い!なんだこれ!」

 うねうねを両手で弾き飛ばし霧散させられた。


「私の魔力です!」


 と、Vサインを出した。


「なんだそれ、まあ、いいや、なんだっけ?」


「魔力を体から切り離して浮かせるイメージがわかないので実演してください。」


 魔力を伸ばして動かして見せる。


「妙に器用なことしてんな、わかった、慣れれば簡単だからよく見てろ。」


 そう言って人差し指を立て魔力を伸ばし始めた。


 1メートルほど伸ばしたところで根本から切り離し棒状にした魔力が残った。


「さすがですね」感心してみていると


「まだまだ」というと棒状の魔力がぷつぷつと切り離され20ほどの玉状になった。


 そしてそれぞれの魔力の玉が燃え上がり円状に回転しながら小さくなって消えた。


「このくらいやってくれ」


 そういって寝なおした。


「無茶言わないでください。」


 さっきみたもののイメージが消えないうちに同じことをしようと試みる。


 ふむ、やはり見てからだとイメージが違うと実感する。


 切り離された魔力は数秒切り離したが維持ができなくて消えてしまった。


 しかし切り離しの最初は成功した。


 やっとできたうれしさでニッカニカになりながら

 隣にいたペドロに自慢しようとするがペドロもさっき見たイメージで

 実践しようとしていてだれも見ていなかった。


 肩透かしをくらった気分でがっかりしながら維持できるよう再び挑戦する。

 他の人も一瞬切り離せるようになったようだ、

 やってみせるのは大事なんだなぁと思いながら私は自分の魔力に集中する。

 イメージはあっても出力を集中することが難しい、

 それでも続けていると最初の頃よりはましになってきたと思い

 夢中になっているとガタン!と大きな音がした。


 驚いて音の方をみるとイレーネが倒れていた。


「待て、触るな」そう言っていつの間に起きて移動してきたのか

 ルイス教官がイレーネを介抱する。


「これは魔力切れだな、寝かせておけば回復するだろう、

 あ、ついでにそろそろ時間だが次もここだから」


 そう言ってイレーネを講義室の後ろへ寝かせた。


「魔力切れってはじめてみたけどあんなんなるんだな」

 とペドロが言った。


「なるなる、猿の時私もなったわ、

 徹夜したあと用事まで時間あるからちょっと目を休めようと思って

 目をつぶった時くらい意識保ってらんなかったよ」


「なんだそのわかるようなわからないような例え」


「あれはやばいね、戦闘中だろうが逃亡中だろうがいきなり来るよ、

 気を付けて残しておかないと意識失ってる間に死ぬことになるね。」


 と、感想を述べた。


 ペドロがへぇ、と感心していた。

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