2-02 冗句
教室に入って自分の席に着くと、見飽きた顔がやってきた。
「人の顔見るなり萎えるはヒデェもんだな? そいつぁお互い様だろうよ」
おっと、思わず口に出ていたらしい。ヤスだし仕方ないよな。
まぁせっかくだ、ヤスで少し遊んでみようか。
「たまには顔換えてこい。少しはモテるようになるぞ?」
「……んっ? ああ」
少し頭を傾けて合図すると、ヤスはその意図に気付いた様子。
「おいおい、オシャレするみたいに気軽に言わないで欲しいな? 手術にいくらかかると思ってんだよ」
悪くないレスポンスだが、そっちじゃないんだなぁ。
「予備用意しとけって、あれほど言ったのによ」
「整形じゃなくて交換っすか!? それすでに中身僕じゃないからね!?」
両手で空チョップを繰り出しながら抗議してくる。悪くないキレだ。
「だってほら、お前がモテるためには、中身換えるくらいしか手がないだろ?」
「お願いだから、僕の存在を全否定しないで!」
「じゃぁ整形で我慢してやるよ、ほんましゃーなしやで?」
「妥協して整形なのね……どう仕方ないのか僕にはさっぱりだよ。――あと何で突然関西弁?」
おっと、最後の反応は素だな。確かに唐突な関西弁はベタ臭い、減点。
「俺はな、心配なんだよ。そろそろ顔を変えないと足が付くんじゃないかと思ってな……」
「突然遠い目をして、当たり前のように僕がサツに追われてる事にするのはやめような?」
「あぁでも大丈夫か、お前着いてないし」
これはどう受ける?
「どゆこと? ツイてないなら捕まるだろう? あっ、いや待って待って、そもそも捕まる事してないけどさ!」
「いや、地に足がな」
「……………………あぁなるほど。僕は地に足が着いてないから、捜査の足も付かないってぇぇ、僕馬鹿にされてる!?」
その通りだよ天馬君。
「おおお、よく気付いたな、偉いぞ? でもお前の場合、ここで捕まっても足が着かないから、どのみち安心だ。
「何言ってんの? 捕まった時点で、すでに捜査の足は付いてるし、順序が逆だぞ?」
予想通りの反応だな。
「日本は絞首刑だ」
「え?」
「ほら、足は着かないだろ? 良かったな」
「僕、死刑確定っすか! いったい何やらかしたの、僕!? あとそれのどこが安心なんだよ!?」
「刑を執行して生存した場合は釈放って聞くぜ? ほら、お前天馬だし、飛べるから平気だろ?」
「飛べるかーい!」
「そうか、じゃぁ
む……名前ネタはちょっと苦しかったかな。イマイチ。
「くっ、しょうもないダジャレだが上手いこと締めやがって……はぁ、お前にゃ一生勝てる気がしないよ」
ヤスは両手を上げて降参のポーズであり、対戦者が満足しているならば良しとしよう。
「それじゃ逝った後は、是非とも来世で再チャレンジしてくれ。気長に待っててやるよ。来世はちょっとばかしヒトより脳容量が小さいけど、大差ないよな?」
「僕、来世は猿か何かなの!? いくら僕でも猿よりは賢い! 神様、後生ですから人間でリトライさせて下さい……――あっ、今の上手くね?」
うわぁ、突然の棚ボタネタでこのドヤ顔は腹立つなぁ。
「失格。人間的にも。そして家畜に神はいない」
「もはや現世の人間資格すら失った…………――あぁそうそう聞いたか?」
ヤスは首を軽く傾げて拙い言葉遊びを打ち切ると、次の話を切り出してきた。互いに遊びを心得ている。
「何だよ」
「今日転校生が来るみたいだよ」
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