叶うはずのない恋に溺れる少女 恋日可恋の物語

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 私は先生が好き。

 私が通っている中学校の、先生が。

 先生はいつでも優しくて、気遣いに満ち溢れていた。

 地味で目立たない。名前だけ存在感のある私の事も、気にかけてくれた。

 恋に落ちるのに、そう時間はかからなかった。


 最初は見てるだけ良かった。

 先生と一言二言お喋りするだけで幸せだった。

 でも、だんだんそれじゃあ満足できなくなった。


 先生と一緒になりたい。

 いつまでも一緒にいたい。


 自然とそう思うようになった。


 ある日、先生が私を頼ってくれた。

 それが嬉しかった。


 外出先で偶然先生と出会った時、先生は万引きを疑われて、店員に詰め寄られていた。

 だから私は先生が捕まってしまわないように、って。

 私が先生にいたずらをした事にしたのだ。


 店員さんには怒られてしまったけれど、先生がかばってくれたから嬉しい。

 翌日から、先生がよく話しかけてくれるようになった。

 もっと嬉しい。


 数日後、先生は学校のルールを破った。

 校内でタバコを吸うのは禁止って決められているのに、校舎裏でタバコを吸っているのを見かけてしまった。

 でも、私は先生の味方だから黙ってた。


 学校の先生って大変だもんね。

 先生みためがかっこいいから、気がない女子生徒に言い寄られていつも迷惑しているし。


 それなのに、他の生徒が先生がいるその場所に行こうとしていたから、先生に「人が近づいてきますよ」って知らせてあげたのだ。

 すると、先生は「また助けられたな」って頭をなでて褒めてくれた。

 とても嬉しい。


 先生は次の日、私にプレゼントをしてくれた。

 おもちゃの指輪だけど、これってそういう事なのかな?

 好きな人からもらったプレゼント、一生大切にしなくちゃ。


 その頃から、休日に先生とデートする事が増えた。


 嬉しい。嬉しい。嬉しい。

 今だったら、死んでもいいかもしれない。

 そう思っていたら罰が当たったのかも。


 先生が人をひいてしまった。

 大変。

 先生を守らなくちゃ。

 私が先生を守るんだ。

 私だけが先生を守れるんだ。


 だから、やらなくちゃ。


 私は、すぐに先生から車の鍵をもらった。


 はい、私は人の車を勝手に運転した悪い子です。その車で人を引きました。


 私はこれで先生に会えなくなるけど、それでいいの。


 先生にはたくさんの幸せをもらったから。


 でもちょっぴり不安。


 先生に会えない時間が続くのは我慢できなくなりそう。


 私、我慢できる子かな。大丈夫かな。







「ねぇ、あなた。そういえば最近、あなたの周りをうろちょろしていたストーカーみたいなの、見ないわね」

「ん? ああ、捕まったからな」

「えっ? どういう事? ……ふーん。なるほど。うまくやったじゃない」

「馬鹿な奴だよな。体よく追い払われたってこと知らないで。でも便利な奴だったからいなくなったのは少しおしいな」

「まったく利用されてるとも知らないで、本当に馬鹿な、きゃぁぁぁ!」

「どうした。今、窓の外に血まみれの女の子が」

「何っ!」


 我慢できなかったよ。


 えへへ、先生?

 先生に会いたかったから、がんばって出てきちゃった


 それより、さっきの話本当じゃないですよね。


 その女の人につきまとわれて、怖いから話を合わせていただけですよね。


 もう大丈夫です。


 今度も私が先生を助けてあげますから。



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叶うはずのない恋に溺れる少女 恋日可恋の物語 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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