校長せんせーのありがたくて長い話がツッコミどころ満載なのに、全部現実だった話

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 俺の学校、朝礼が長いんだ。


 朝礼を長くしている原因は、校長のありがたーいお話だ。


 うちの校長先生、頑張ってる良い先生をアピールしたいのか、毎回毎回張り切って色々な話をしてくれるんだよな。


 俺達は、そういうの求めてないんだけど。


 ありがたーいお話が続いている間の俺達は、大抵居眠りしてるし。


 だってそれもそうなる。


 内容が内容、現実味のない話ばっかなんだから。





 異世界に行ってお姫様を助けるために、魔王と戦った話とか。


 この世界に誰も知らない裏組織があって、人を化け物に変えてしまう秘密組織ナイトメアなんちゃらと戦っているとか。


 はたまた未来の世界に行って、ディストピアになった世界を変えるために、レジスタンスと一緒に神威帝国うんぬんと戦ったとか。


 真面目な顔して話す事がそれかよ、校長先生ふざけてね?


 で、今日も元気な校長せんせーが、ありがたーい話をしていたら。


 なんか角がはえたあやしげな集団が学校にやってきた。


「ふははははっ、勇者よ! やっと見つけたぞ。あの時の仕返しだ、魔王城ではよくも我をこけにしてくれたな! 食らうがいい」


 そいつは校長先生に用があるらしい。


 それで、その怪しげな集団が杖みたいなものを出して、何かの呪文を唱え始める。


 いきなり何の茶番が始まったんだって思ってたら、生徒達が次々に石にされていってびっくりした。


 やべぇ、本物だ。どうしようって、俺達がパニックになっていたら、また別の集団がやってきたのだ。


「グォォォォン」


 ツバサを生やした悪魔みたいな生物と、試験管を持った白衣の女性が建物の壁をぶちやぶって乗り込んできた。


「はははっ、よくも私の野望を打ち砕いてくれたわね。お返しにウイルスをばらまいてやるわ!」


 そいつの用事も、校長先生にあるようだ。


 極めつけは、銀ピカロボットが屋根を壊して入ってくる点。


「ワレワレ、神威帝国に逆らったものは、どこへ行っても、けっしてミノガシハシナイ」


 うん、それも校長先生を見てた。


 けど、校長先生も何もせずに突っ立っていったわけじゃない。

 なんか、怪しく光る薬を地面にぶちまけて長い呪文を唱えて、「いでよ!」とかやっている。


 そしたら校長先生の周囲に突然人が現れた。


「勇者様! あの時助けて下さった恩を返します」


 とか言って、お姫様みたいな可愛い女性が、杖を振って、石化した生徒を元に戻した。


 しかも。


「日の当たらぬ道を歩んでいた我らを、ウイルスとの長き戦いから解放してくれた恩、返す時だ」


 白い制服を来た、きりっとした集団が、あやしげな集団におそいかかっていったり。


 後は。


「せっかく取り戻した未来をこんなところでつぶさせやしない。レジスタンスの底力みせてやる」


 古びたジャンクパーツを継ぎ合わせて武装したような集団も、銀ピカ相手に向けて戦いに加わっていったりしていた。


 で、極めつけに校長先生は、どこから取り出したのかなぜか大きな大剣を持っていて、体になんかキラキラしたオーラをまとわせていた。


「お前達、よく来てくれたな! また共に戦えて嬉しいぞ。よし、力を合わせて立ち向かおう!」


 それからなんやかんや、大騒乱が起きたので学校は休校になった。


 朝礼に集まった体育館はボロボロになってたけど、次の日にはすっかり元通りになっていたので、夢でも見たのかと思った。


 けど、カレンダーみて、「あっ、これ現実だ」って悟ったな。


 で、次の朝礼の校長せんせーのありがたーいお話は、滅んだ世界から脱出したお姫様と冒険した話だった。


 あ、修理し忘れ発見。

 時計がこげてる。


 うちの校長せんせー、なにもんなんだ?


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