地上の星空
勝利だギューちゃん
第1話
夜の10時ごろ
夜景が売りの高級レストランに来ている。
本来なら、俺には場違いな場所だ。
俺の名は、本原俊哉。
一応、社会人だ。
独身である。
俺はこんな高級レストランで、夜景を見ながら高級料理に舌つつみ。
そして、カクテルやワインで、乾杯をする。
性に合わない。
鍋を囲んでの、差しつ差されつの方がいい。
でも、そんなムードの無いシチュエーションを、相手が認めるはずもなく・・・
その相手が、この場所を指定してきた。
「お待たせしました」
相手の女性が、現れる。
「いえ、構いません」
「本来なら、あなたの性に合わないんだけどね」
「覚えていてくれたんですね」
「そりゃ、一度は恋仲になったりましたからね」
そう・・・
やってきた女性は、学生時代に付き合っていた彼女。
速見優香(はやみ ゆうか)
数年関係は続いたが、いろいろな面の不一致で、破局した。
食事もそのひとつなのだが・・・
今、こうして再会したのは、お互いの仕事の関係。
いわゆる、接待のひとつ。
「俊くんも、スーツ姿が板についているね」
「優香ちゃんも、キャリアウーマンだね。しかも、実業家だし」
「小さいけどね」
「俺は、ペーペー」
「謙遜しちゃって・・・かなり稼いでいるじゃない」
優香ちゃんは今、フラワーアレンジトの仕事をしている。
俺と別れてから、イギリスに留学して学んだようだ。
そして、事務所を立ち上げた。
今日はその仕事の打ち合わせで会う事になった。
優香ちゃんが、ワイングラスを手に持つ。
俺も、持つ。
「じゃあ、再会に乾杯」
「乾杯」
グラスをかさね、音がする。
「ねえ、敏くん」
「何?」
「今、夜景が広がってるよね?」
「ああ」
「夜空の星と、夜景はどっちが多いかな」
「星じゃないかな・・・銀河系だけで2000億はあるから・・・」
「でも、そのほとんどは見えないね」
「たしかに・・・」
都会では、ビルの灯り凄くて、満点の星空は見られない。
「でも、輝いているね」
「うん」
「夜景も、それぞれに一生懸命に生きている人がいるから、綺麗に感じるんだね」
夜景・・・
そのひとつひとつに、一生懸命に生きている人がいる。
夜空の星も、それぞれが一生懸命に輝いているので、美しく見える。
「ねえ、俊くん」
「何?」
「君が・・・いや、仕事の話だから、あなたがいいですよね」
「いいですよ。いいやすいほうで・・・」
「敬語はやめない?」
優香ちゃんが、声をかけてくる。
「知らない仲じゃないんだし」
「でも、けじめはつけないと・・・」
「今更だよね」
「確かに・・・」
にこやかに微笑む。
「で、仕事なんだけど、秋まで待つてくれる?」
「それはいいけど・・・。じゃあ、引き受けてくれんだね」
「もちろん。一生懸命やるね」
僕はIT関係の仕事をしている。
先ごろ、独立して自分で事務所を立ち上げた。
内装を考えた結果、花を飾ろうという結果となる。
その花は、僕が一番好きで、そして、秋を代表する花。
コスモス。
コスモスには、宇宙という意味がある。
小さくても、それぞれが輝くことにより、大きな美しさを保つ。
これからも・・・いつまでも・・・
地上の星空 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます