黒色の郵便屋さん

もち もちる

プロローグ

第1話 「一体君は、なぜ殺されるんだい?」

 不慮の事故や、無慈悲な殺人。人は、病気や老衰以外でも死に至る。死んでしまえば手の施しようがない。そして、死を事前に察知することは難しい。

 しかし死を回避する方法が一つだけある。あなたは、死神という存在をご存知だろうか。人間を死の世界に誘うはずの死神が、人間を死から救ってくれるのである。


 ただし、そこは死神だ。ただで助けてくれる訳ではない。

 死神は死に至るまでの未来を見せてくれる。その未来には、謎が残されている。自分はなぜ殺されたのか?誰に殺されたのか?どうやって殺されたのか?

 その謎を解き明かすことが出来た時、初めて死神は人間を死から救い出してくれるのだ。


 人間にとって救世主であるその死神は、郵便屋さんと呼ばれているらしい。見た目は幼く、中学生くらいの子どもにしか見えない。黒い学生帽に詰め襟の学生服、ぱんぱんに膨れ上がったショルダーバッグを肩から下げている。ショルダーバッグの中には、回収した魂がぎっしりと詰め込まれているらしい。そう、謎を解き明かすことが出来なかった人間たちの魂がその鞄の中にみっしりと詰まっているのだ。


 初めて郵便屋さんの話を聞いた時、そんなものが実在するなんて思ってもいなかった。けれど、まさか、自分がその死神と出会うことになるなんて。


「おい、謎は解けたのか」


 薄暗い部屋の中で、どこかから声が聞こえてくる。早く謎を解かなければ、予定通り魂が回収されてしまう。死神は、焦る自分を見て笑っていた。黒い学生帽の影になっていて、目元は見えない。けれどその唇の端は、これ以上ないほどに持ち上げられている。


「一体君は、なぜ殺されるんだい?」


 そうだ。自分は、なぜ殺されなければならないんだ?

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