第11話 調理実習



冬美は家庭科、特に調理実習の授業が大好きだ。


美味しい物が食べられるし、家では出てこない料理も作れる。


今回の料理は「茶碗蒸し」である。


ちょっとがっかりした。

父、秋彦が好きなので家でよく作るのだ。


とは言え材料は豪華だ。

家のは、鶏肉、椎茸、蒲鉾のみとシンプルだ。


学校のは、鶏肉、椎茸、エビ、銀杏、飾りに三つ葉、であった。


早速、慣れた手つきで作り始めた。一緒のグループの子も「冬美ちゃんすごいね」などと言ってくれて、嬉しかった。


途中で『あれ?家の作り方と少し違うぞ』と思い始めた。


出し汁?そんなのいれないぞ。お酒と水少々を、溶き卵と混ぜ合わせ具材を入れる。


これが我が家の「茶碗蒸し」だ。


学校で作ったのはプリンみたいにぷるぷるしている。


冬美はすぐさま先生の所へ行き「これは家のとは違います。もっとしっかりしています。

やわらかすぎませんか?」などと失礼なことを言ってしまった。


『私は間違っていない』と変な自信があったのだ。


先生はにっこり笑って「お家の人に聞いて見てね。」と何事もなかったように皆で食べた。


母春子が帰ってきてからすぐに聞いた。


「あ~うちはねお父さんがやわらかいのが嫌いなのよ。だから出し汁入れないのよ。」


冬美は料理を教えるなら、正しい作り方を最初に教えろと強く思った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る