第8話 十五夜 盗人に変身する 

小5の時、中秋の名月夕方5時半。

冬美、さゆりちゃん、森村君、林君の4人は公園に集合した。

それぞれ、空っぽのリュックと

懐中電灯を手にしていた。



クラスのグループ分けで、学級新聞を作った4人である。


何日か、それぞれの家に集まって新聞を作りあげていく中で、

少しずつ仲良くなっていった。


クラス1のやんちゃな森村君と、一緒になった時は心配したが

他の二人がいたので大丈夫だった。


そんな森村君が突然、「お前ら知っているか?十五夜の時ってお供え物盗ってもいいんだぜ。

今年、もうすぐだから一緒にやろうぜ。」と。 


この地域で昔から行われている風習で(子供のみ)春子も知っていた。

「さゆりちゃんも一緒なら、行ってきたら?」

絶大な信頼を得ている・・・。

盗っていいのは、どの家でも良い訳ではなくルールがあるらしい。


その1 出窓や縁側など家の外に供えてある物、果物やお菓子などである。お菓子は子ども達の為に用意しているらしい。


その2 家の中にいる人が、こっちを見て知らないふりをして、奥にすっといなくなる場合は大丈夫。

怪訝そうにこちらを見ている場合はダメである。

その3 

他のグループもいるので、早い者勝ち。

お供え物が無くなったら終了~。である。


冬美はドキドキしながら、3人の後をついていった。

梨、リンゴ、ブドウ等々たくさん供えてある。

4人で交互にリュックに入れていく。

奥をちらっと覗いてみたら、テレビを

見ているふりをして微笑みながらこちらの様子を気にしているようだった。


お菓子が、

たくさん供えてあった家を見つけた時は、嬉しくて興奮して4人で、笑いあった。

それぞれ重くなったリュックを背負って、家に帰った。

来年も、このメンバーでやろう。と誓いあった。もちろん、小6の十五夜も

盗人に変身した冬美達だった。 



しかしながら、

この風習は、小6で終わりなのだ。


冬美は次の年、たくさんの果物と、春子に頼んでお菓子をお供えしたが、


誰も来なかった。冬美の家は遠かった。学校近辺しか行われないのだ。


今までだって、誰もきたことが無かったじゃないか、そう気づいて

力を落とした冬美だった

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