第4話


気持ちのいい朝だ。すごく身体が軽くて、気分も爽快だ。


だけど、視界がはっきりして気づく。そこには、見慣れない光景が広がっていた。



「あ、あれ?」



そこは無機質な部屋だった。部屋というより、牢屋だろうか。


コンクリートブロックに、鉄格子のドア。四畳ほどの部屋に、ポツンと置いてあるベッド、そこに私は寝ていた。



「ここは…」



そう独り言をつぶやくと、鉄格子の向こう側から、スーツを着た男性が現れる。



「お目覚めですか」



小さい声でそう呟くと、鍵で施錠を解除し、扉を開ける。



「どうぞ」



そう言うので、とりあえず指示通りに部屋から出る。



「あの、ここは一体」



気になったので聞いてみる。


すると男性は、黙って歩き出し、数秒後にこう答える。



「これから大王のところへお招きします」



大王とは何のことだろうか。


もしかして、異世界にでも転生したのだろうか。


そう思うが、この男性、どこかで見たことがあるような顔をしていた。


だけど、思い出せない。あともう少しで思い出せるのに、その少しがなかなか思い出せない。



「五木ちゃんも、大きくなりましたね」


「なんで、私の名前を?」


「覚えていないのも無理はないでしょう。なんせ、まだ六歳でしたものね」



六歳…。



「もしかして」



思い出した。



「春人おじさん!?」


「思い出しましたか」



私が六歳の時に亡くなった、父のお兄さんだ。


でも、なんで亡くなったはずの春人おじさんが…でも、そういえば…。



「そ、そうか、わたし」


「まだ若かったのに、残念です」



そうだ、私は電車にはねられて…。



「さて、ここが大王様のお部屋です。健闘を祈ります」



豪勢でかつ威厳のある重厚感あふれる扉を前にして、春人おじさんはいつの間にか姿を消していた。


目をほんの少し逸らしたスキに…だ。


とりあえず、目の前にある重厚感あふれるドアを手で開けることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る