372話 とりあえず安静に

メイが魔法を使えないという事は辺境伯達にも伝わったが、計画に支障は無いという事で一旦休養させるという事になった。

「お父様達がすぐに休ませてくれて良かったわね。」

「疲れているわけではないんですが。」

「ダメよ。魔法が使えなくなるなんて聞いた事ないもの。どこが悪いのかも分からないのに出歩いたりしたらダメなんだから。ちゃんと休んでおくこと。いいわね。」

「分かりました。」

「それじゃあ私は行ってくるから、安静にね。」

「いってらっしゃい」

「うん、いってきます。」

カレンがカイトに付き添われて学園へと出掛けて行った後、手持ち無沙汰になったメイは目を閉じた。



「よく来るようになったの。」

「私では解決できないことばかり起こるので、仕方ないですよ。」

「そうじゃな。単刀直入に言うが、ソナタは疲れておる。じゃからそんな簡単な呪いに掛かるのじゃ。」

「呪いに掛かってるのですか?」

「そうじゃ。ソナタの護りの魔法が弱まっておる。そのせいで呪いを防ぐことができておらんのじゃ。」

「この程度で疲れているなんて」

「ソナタは前世の感覚を引き継ぎすぎておるのじゃ。前世のソナタは何十年も鍛え上げた強靭な肉体を持っていたが、この世界では成人したての未熟な身体じゃ。ソナタは疲れを感じていなくても身体は疲労を蓄積させておるはずじゃ。」

「なるほど?」

「ソナタは何年もまともに寝ておらんじゃろう。魔法を使っているとしても一日中神経を張り巡らすような事を何年も続けておるのじゃ、どれだけ強靭な肉体を持っていたとしてもすぐに倒れてしまうじゃろう。」

「そのせいで抵抗力が落ちているという事ですか?」

「うむ。自身や他人に掛けている魔法をすべて解き、数日休めば抵抗力が戻り呪いを弾けるようになるじゃろう。」

「数日ですか。それはできません。カレンは学園にいる今ですら暗殺者に狙われているような存在です。今までは私の魔法があったから賊が近づく前に対処できていましたが、それを無くしてしまえばどうなるか。」

「まったく、ソナタに倒れられてはワシが困るのじゃ。じゃが、どれだけ言ってもソナタは聞かんのじゃろうな。」

「はい。新たに魔法を発動できないだけで、今の状態でも魔法の維持はできますから。」

「あの娘にはこのペンダントを渡すのじゃ。これはワシの加護を込めている。余程の怪物でない限りこの加護を突破できない。これで安心じゃろ。」

「ありがとうございます。ちなみに具体的に言うとどれくらい耐えられるんですか?」

「具体的にか…勇者のような運命に守られたような存在やソナタのような神に匹敵する存在でなければ大丈夫じゃ。」

「そうですか。本当にありがとうございます。」

「ソナタが休んでいる間あの娘も学園を休ませておいた方がいいじゃろう。その方が安心できるじゃろ?」

「そうですね。これを渡すついでに話してみます。」

「うむ。もう時間じゃな。次こそは一緒に茶でも飲もうではないか。じゃあの。」

「はい。次こそはご一緒しますよ。」

聖神から解決策をもらったメイが目を覚ますと枕元にペンダントが置いてあったのだった。

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