290話 こんな所で使う魔法じゃない
メイとカレンの試合は今までのどの試合よりもハデで、勝敗の行方が分からない試合になった。
「熱よ、すべて燃やし尽くしなさい。根源魔法«
イフリートの放つ焔は1万度以上の熱をもつ青い焔だ。
カレンの周りの石畳は赤く熱されており、近づくことは不可能だった。
「根源魔法とは、成長しましたね。混沌魔法«カオススカル»」
メイが青焔を打ち消すために選択した魔法はカオススカルという魔法で、傷痕のような空間の裂け目から光と闇の反発した際に生じるエネルギーを放出する。
2つの力がぶつかり合う。
だが、魔力すら燃やし尽くす焔には分が悪く、徐々に押し込まれていく。
「本気を出さないと火傷しちゃうわよ。」
「いいでしょう。根源魔法«
「げ、2つも同時に使うのね…」
「黒き刃と光の翼よ。消し去りなさい。」
「私だってやってやるわよ!根源魔法«
「氷とは…炎とは反対の属性を使うとは、熱繋がりでしょうか。」
「そうよ!炎の温度を操れるなら、他の物の温度だって操れるんだから!」
「それは屁理屈な気がしますが、実際に出来ているなら信じるしかありませんね。」
焔と光、氷と闇がぶつかり合う。
すべてを燃やし尽くす焔をさらに上から包み込むことで無力化する光。
すべてを凍りつかせる氷を侵食していく闇。
「嘘!同じ根源魔法なのに…」
「光と闇は世界が創られた時からありましたが、その他の要素はそこから派生していったモノ。どちらがより根源に近いかは明白です。」
「ぐぬぬ…」
その時、バキバキと空間が軋み、ヒビが入っていった。
「空間が耐えられなくなっていますね。そろそろ終わらせましょう。ハッ!」
「キャア!」
メイは魔法の威力を上げる事でカレンを弾き飛ばした。
「魔法で私に勝とうなんて、100年早かったですね。私は剣よりも魔法の方が得意なんですよ。」
「剣が無いなら勝てると思ったのに!」
その後、大将を瞬殺したメイは優勝に貢献したという証に表彰された。
「いやー、変に縛りを入れたせいで危なかったですね。クレソンには負けてしまいましたし。」
「というか、カレンちゃん氷魔法使えるんだね。私の存在意義が無くなっていく…」
「私水は使えないわよ?アリュールの契約してる精霊は水の精霊なんだから、存在意義が無くなることはないわよ。」
「根源魔法ってなんだよ。俺はてっきり、世界の終わりかと思ったな。」
「簡単に言うと、神話に出てくる存在の名前を冠した強力な魔法ですよ。」
「めっちゃ分かりやすいな。少なくともこんな大会で使うような魔法じゃないってことはよく分かった。」
「すっごく強力なんだけど、消費魔力の多さとか魔法の操作とか、色々大変なのよ?結構ギリギリだったんだから。」
「で、師匠はそれを2つも使って平然としていると?」
「カレンだって2つ使ってたじゃないですか。」
「カレンちゃんはすごく顔色悪いし、動けなくなってるじゃん。でも、メイちゃんはいつも通りだよね?」
「疲れを見抜かれる兵士は未熟ですから。私も疲れているんですよ。」
「嘘だな」「嘘だね」「嘘ね」
「口々に言わなくて良いんですよ。」
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