251話 黒歴史

「嬢ちゃん、話ってなんだ?」

「王太子殿下から頼み事があったという話なんですが、サキさんがいませんね。」

「この前からどこにもいなくてさ、嬢ちゃんなら知ってると思ってたんだが、その様子だと知らなそうだな。」

「辺境伯様が何か指示したなら私たちにもその内容は知らされるはずですし、裏切ったということでしょうか?」

「待てよ。まだそうと決まったわけじゃない。確定してない情報で動くのは危険だ。」

「はあ、まあいいでしょう。ちょっと、そこで何してるんですか、早くこっちに来なさい。」

「ピーターじゃないか!どうしてこんなところにいるんだ?」

「俺は嵌められたんだ!」

「いい手駒が入りましたね。」

「こいつやりやがった!」

「はて?何のことでしょう?彼は自分から私の役に立ちたいと言ってくれたのですよ。ね?」

「…………………はい」

「めちゃくちゃ納得いってなさそう。何をしたらそんな風になるんだ?」

「彼の黒歴史をちょちょいとつついてみました。」

「アンタ人間じゃねえ!」

「それはともかく、ピーターには色々手伝ってもらうことにしましょうか。」

「簡単に流すやん…」

「グスン、もっと颯爽とする予定だったんだけどな…」

「嬢ちゃんっていつもあんな感じだろ?諦めた方がいいぞ。」

「そうだな。うん、俺なんであんな幻想抱いてんたんだろう。」

「辛いことがあれば聞いてやるから、な?元気出せよ。」

「ありがとう、涙が出てくるよ。」

「男の友情が芽生えたところで、本題に入りましょうか。」

「感傷に浸る時間すらくれないんだもんな。」

「王太子殿下の話ではクーデターが起こるかもという話でした。」

「簡単に言ってるけど、かなりヤバイこと言ってんな。」

「私も聞き返したんですけど、クーデターが起こるらしいです。」

「それで、俺たちは何すればいいんだ?」

「私は万が一の護衛役で、2人には情報収集をやってもらいます。」

「今やってる事と変わらないな。」

「それなら俺が手伝う必要ってあるのか?」

「ピーターには冒険者ギルドの情報を集めて欲しいんです。ギルドを通さずに依頼する人は必ずいるでしょう。それを教えて欲しいんです。」

「うーん、ギルドを通してないやつなら、教えてもいいかな。」

「それはよかった。断られたらどうしようかと思っていたんです。」

「サキのことはどうする?」

「彼女が黙っていなくなったというのは問題が発生したからなのでしょう。いつも使っている通信機に何か連絡は無いんですよね?」

「ああ、ずっと連絡してるんだが、向こうが壊れてるのか返事はない。」

「そうなると、居場所の手がかりがありませんから、後回しにせざるを得ません。時間があるなら調査はしておいてください。私も調べてみます。」

「そうか、そうだな。ありがとな。」

「礼はいりません。結果で返せばいいだけです。」

「十分以上の働きをしてやるよ。ちなみにクーデターが起こるのはいつなんだ?」

「さあ?まだ分からないと言われました。」

「分からない?あの人にしては不確実な情報だな。」

「これから追い詰めていくと言われました。」

「クーデターは事前に潰さないのか?」

「膿を摘出するためには、誰が裏切っているのか知らないといけないからと、知らないフリをしてるみたいですね。」

「まったく、貴族って怖いねぇー。」

膿を出すための作戦を細かく練っていくメイ達であった。

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