243話 殺戮

ピーター視点

「結局、スレイバーは帰って来なかったなのか?森の封鎖はそのままなんだろうな。」

「はい。封鎖は解いておりません。指名依頼です。スレイバーの捜索を依頼します。」

「分かった。必ず見つけてくる。」

「お願い致します。」



???視点

「ギギギギ」

森の中でその影は何かを呟く、それが意味のある言葉なのかただの呻き声なのかは誰も判断できなかった。


その影は殺戮を求めた。

同胞が殺されていく中で生き残るにはそれ以外の選択肢は無かったから。

自身の姿を殺戮者に似せることで、その生物を凌駕する。

種の繁栄のためにはその殺戮者を殺し尽くさなければならない。

さらなる殺戮を求め、人間に引き寄せられていく。


森を出ると、森を監視していた冒険者に遭遇した。

その影は殺すべき敵を発見し歓喜した。

次の瞬間にはその冒険者は細切りにされ、のどかな風景が血に染っていた。



より多くの人間を殺すため、街に向かって移動を開始する。

その時、ピーター達と入れ違いになってしまったことは悲劇というしかないだろう。



カイト視点


「それでは、私は少しの間地下室に籠るので何かあれば呼んでくださいね。」

「分かった。どれくらい籠るつもりなんだ?」

「今回は1日程度にしておこうかと思っています。」

「前回は1週間も籠ってたからな。ホントにバカなんじゃないかと思ったぞ。」

「寝食を忘れるとはまさにこの事ですね。」

「1週間飲まず食わずって人間の身体じゃあ無理なはずなんだが…」

「私の身体は魔力でエネルギー補給ができるので。」

「嬢ちゃんはホムンクルスかなんかか?」

「失礼ですね。れっきとした人間ですよ。」

「そうは思えないから言ってるんだが…嬢ちゃんのぶっ壊れ具合は今に始まったことじゃないか。まあ、1日経って出てこなかったら、呼びに来るからな。ちゃんと出てこいよ。」

「分かってますよ。それでは」

「ああ、じゃあな」



メイが地下室に籠って数時間したころ、

「それじゃあ、買い物行ってくるぜ。」

「お願いしますね。あ、それとこのメモに書いてある物も買ってきてもらっていいですか?」

「ん?分かった。じゃあ、行ってきます。」

「はい、いってらっしゃい」




カイトが市場まで来ると、

「きゃあああ!」

「うわあああ!」

悲鳴が聞こえてきた。

「なんだ?この臭いは、血か?」

すぐさまその場に向かうと、逃げ遅れた人々が惨殺されていた。

「お前…!なにやってる!!」

「ギギ…」

「虫の顔をした人間?いや、人型の魔物だな。」

「……シネ」

カイトを視認した瞬間、常人には反応できないスピードでカイトに斬りかかって来る魔物。

カイトは即座に反応し、辺りに血の臭いと鉄どうしがぶつかり合う音が周囲に漂っていた。

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