96話 戦車

『封印の場所はここだ。』

「ここは?」

『我の住処のすぐ近くでな、無理矢理封印を破ろうとしている不埒者がいないか監視しておるのだ。』

「なるほど。」

『ここの枠に魔宝石と宝石を入れろ。そうすれば封印が解かれる。』

「これですね。」

宝石を設置すると、地響きと共に崖が崩れ洞窟が現れた。

「また罠があるパターンですか。」

『今回は無いぞ。無いから我が見張っておったのだ。』

「それならいいんですけど。」

洞窟に入ると、戦車のような物体が鎮座していた。

「一度外に出しましょう。」

『何故だ?』

「分解して重要な部分を徹底的に破壊するためです。」

『確かに分解するならここでは狭いか。』

「これまだ動くんですかね?」

『どうだろうな。数百年間放置されておるからな。』

「まぁ、持ち上げて行きましょう。」

『それが一番だな。動いたとしても、動かし方知らんし。』

「じゃあ、そっち持ってください。」


「ふー。なかなか重かったですね。」

『そうだな。大きさは我の半分くらいしかないのに我より重いのではないか?』

「さて、分解していきますよ。メイちゃん三分クッキング!まずは装甲を外していきます。」

『色々大丈夫か?』

「愛のあるパk…リスペクトはセーフです!」

『貴様、それは多分アウトだ。』

「それは置いといて、次に砲塔を外していきます。」

『それでいいのか…、随分と手際がいいな。』

「物を分解するのは好きなので。」


結局三分では分解することはできなかった。

「部品が多すぎて一時間くらいかかっちゃいました。」

『一時間でできる量ではない気がする。』

「あとはこの回路と基盤を炎魔法でドロドロに溶かしていきます。これで、この戦車をそのままコピーしても動かなくなりましたね。」

『これで契約が終わるのだな。ようやく終わった。我は契約に縛られ、この森の外に出ることが出来なかった。ただの一歩もだ。』

「…」

『安心しろ。契約が終わったからといって、この森の管理をしなくなったり、人間に危害を加えるようなことはしない。だがな、我は外を飛び回ることができるようになったのだ。これは喜ばしいことだと思わんか?』

「そうですね。それはいいことです。」

『守り人にも伝えてほしい。我との契約は終わったと。守り人の一族も契約のせいでこの地に縛られていたからな。』

「分かりました。ああ、そうだ。この装甲もらって行きますね。」

『何に使うのだ?』

「森の遺物があったけど、壊れていたと言うためですよ。これで狙われることは無くなりますから。」

『そうか、色々あったが。悪くはなかったぞ。』

「私もですよ。何かあれば私に助けを求めてください。可能な限りお手伝いしますよ。」

『それは心強いな。では、また会おう龍殺しの少女よ!』

「知ってたんですね。ではまた。」

別れの挨拶をかわした私は森を出た。

街に入ると戦車の装甲を背中に背負っているせいかたくさんの視線を感じた。

もう少し小さいのにすれば良かったかな?


バーチル商会に行くと、人の気配がなかった。

「ごめんください。アマルダさんはいらっしゃいますか?…誰もいないんですかね?」

「そこにいるのは誰?」

道の方から声をかけられた。

「アマルダさん。私です。」

「メイさん。大きな物を背負っているから分からなかったわ。これは?」

「依頼を終えたので報告に来ました。」

「そうですか。中で話しましょう。」

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